退職金と税金

退職金の税金は他の所得と分離して課税

退職金は所得税法上、分離課税されます。退職金にかかる所得税は、わずかです。

退職金の場合、所得税は退職金額から退職所得控除額を引いた額の1/2を退職所得金額と考えて課税します。

具体的には、次の計算式を用います。

(収入金額(源泉徴収される前の金額)-退職所得控除額) × 1/2 × 税率

退職所得控除額は、

勤続年数20年以下
勤続年数×40万円(80万円に満たない場合には、80万円)

勤続年数20年超
(勤続年数-20年)×70万円+800万円

として計算されます(平成20年度現在)。税額は以下の通りです。

課税退職所得金額
(A)
税率
(B)
控除額
(C)
税額
(A)×(B)-(C)
195万円未満 5% 0円 (A)×5%
195万円以上
330万円未満
10% 97,500円 (A)×10%-97,500円
330万円以上
695万円未満
20% 427,500円 (A)×20%-427,500円
695万円以上
900万円未満
23% 636,000円 (A)×23%-636,000円
900万円以上
1,800万円未満
33% 1,536,000円 (A)×33%-1,536,000円
1,800万円以上
4,000万円未満
40% 2,796,000円 (A)×40%-2,796,000円
4,000万円以上 45% 4,796,000円 (A)×45%-4,796,000円

退職金の計算例

退職金 1,200万円 勤続22年とすると課税所得金額は、

{1,200万円-(800万円+70万円×(22年-20年))}×1/2

{1,200万円-((22年-20年)×70万円+800万円)}×1/2
=130万円(※1000円未満切り捨て)

この税率は5%

1.200万円-(130万円×5%)=11,935,000円

結果として、1,193万5千円が退職金として残ります。

この退職所得控除を受けるためには、「退職所得の受給に関する申告書」を提出しなければなりません。

退職年金として受け取る場合は、雑所得となり、税率が高く(20.42%)なります。

障害退職の場合、所得控除額がアップします。

勤続年数は、会社に入社した日から退職の日まで引き続き勤務した期間で、1年未満の端数は切り上げて1年とします。

会社によっては「入社後一定期間は、退職金算定の基礎に含めない」などの取扱いをしている場合がありますが、税額の計算にあたっては、全期間を控除年数に加算します。

短期雇用者への退職金課税を強化・政府税調会長

政府税制調査会(首相の諮問機関)は給与収入より退職金が税制上、有利になっている現状を改める方針だ。

勤続年数が短い従業員が給与相当分を「退職金」としてまとめて受け取り、税負担を小さくするのを防ぐ。

一方で雇用の多様化に対応し、勤続年数が長いほど税負担が相対的に軽くなる現行制度も見直す。

政府税調は6月の報告書で問題点を指摘、早ければ2006年度の税制改正に盛り込む。

石弘光政府税調会長は13日の記者会見で「(退職金の課税が)悪用されている面もある」などと指摘、見直しの方針を表明した。

退職金は給与収入などとは分離して課税所得(退職所得)に対し最高50%(国と地方合計)の累進税率を適用するが、退職所得は支給額から退職所得控除を差し引いた金額を半分に減額して算出する。これを利用すると、外資系企業などに勤務する高所得層が雇用契約を3年や5年といった短期間にしたうえで、給与分をあえて退職金の形で受け取り、税負担を軽減できる場合がある。

(NIKKEI-NET 2005.5.14)


退職金と住民税

住民税は後払いシステムです。

退職する時期によって、住民税は一括徴収となりますので、それなりの額になります。

ただし、一括徴収された住民税は、その後支払う必要がなくなるので、結果的に負担する額は同じです。

また、退職した後収入がなくなったとしても、住民税は在職中の所得をもとに計算した額が徴収されます。

このため、収入が少ないにもかかわらず、税金の金額は最も多いという現象が生じます。

これは、住民税が、1月から12月までの収入に対し、翌年の6月から5月にかけて支払う仕組みになっているからです。

6~12月に退職した場合

住民税は、退職時に一括納入するか、分割払いにするか選択可能です。

たとえば退職日が8月給料日後の場合、9月~5月に支払い予定だった9ヶ月分の住民税を、区市町村から送られてくる納付書にしたがって、1~3回に分けて支払います。

1~5月に退職した場合

住民税は退職時に、給与若しくは退職金から一括して払います。

たとえば退職日が3月給料日の場合、3月~5月分の3ヶ月分の住民税が一括徴収されます。


退職給与とならないもの

退職時に支給されたものであっても、その実質が退職に基因するものでなく、退職前の勤務に対するものであるならば、退職給与以外の臨時的な給与として取り扱われることになります。

次のようなものは、退職時に支払われたとしても退職給与とはならないと考えられます。

  • 給与所得となるもの(例月の給与、退職時に支払われた賞与)
  • 福利厚生費等(遺族補償料および遺族手当、葬祭料および香典、結婚祝金、帰郷旅費)

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