離職票をめぐるトラブルについて

事業主が離職票を交付しない場合

離職票の交付が遅延するのは、次の場合が考えられます。

  1. 事務処理体制の不備から処理が遅れている。
  2. 退職事由に労使双方で疑義があるため、作成が止まっている。
  3. 退職時のトラブルから使用者が感情的になり、嫌がらせ的に作成を遅らせている。

会社は、離職日翌日から10日以内に、雇用保険被保険者資格喪失届の届け出を行わなければなりません。

もし、届け出をしなかった場合、雇用保険法第7条違反となります(違反に対する罰則は、6ヶ月以下の懲役または30万円以下の罰金と雇用保険法第83条に規定 )。

また、離職票の交付を拒否した場合も、明らかに雇用保険法第76条第2項(報告等)違反となります(違反に対する罰則は、6ヶ月以下の懲役または30万円以下の罰金と雇用保険法第83条に規定)。

いずれにしても、余計なトラブルにならぬよう、さっさと処理してしまいましょう。


退職理由が「自己都合」と記載された場合

基本手当は、退職理由が以下の場合は、支給時期が3ヶ月遅れます(給付制限)。

  1. 自己の責めに帰すべき重大な理由による解雇
  2. 正当な理由がなく自己の都合によって退職した場合

ただし、自己都合であっても、退職理由が以下のような、自分に責任のない場合は、正当な理由とみなされ、給付制限は受けません。

  • 健康上の理由(病気・ケガ)
  • やむを得ない家庭の事情(親族の死亡など)
  • 配転により通勤困難になったとき
  • 事業所の移転・廃止・休業
  • 採用当初の条件と実際の労働条件が著しく違うとき
  • 上司・同僚などからの嫌がらせがあるようなとき
  • 新技術に能力的に適応できないとき

離職票の離職理由欄の「トその他」に○が付いており、「具体的な事情」欄に「自己都合」とのみ記載されている場合は、正当な理由がないものとみなされます。

関連事項:離職理由


離職票の「賃金額」について

離職票の「賃金額」の記載により、基本手当の日額の計算の基礎となる「賃金日額」が変わる可能性があるので、正確に記載します。

労働の対償であれば、食事・被服など現物支給や通勤手当も賃金(雇用保険法第4条第4項)です。

「被保険者期間算定対象期間」には、退職日から1ヶ月ずつさかのぼった期間を記載します。

「賃金支払対象期間」には、賃金締切日から1ヶ月ずつさかのぼった期間を記載します。

通勤費が3ヶ月ごとや6ヶ月ごとにまとめて支払われている場合は、支払った通勤費をその月数で割って各月の賃金総額に割り当てます(1円未満の端数は、最後の月に加算)。

「賃金支払基礎日数」は、欠勤控除のもとになる日数を記載します。

1日の欠勤によって20分の1を控除する場合は「20日」、25分の1なら「25日」、30分の1なら「30日」となり、ここから実際の欠勤日数を引きます。


病気などで賃金の支払いがない月があるとき

退職日以前1年間で、病気やけがによって会社を休み、賃金の支払いがない月がある場合には、「備考」欄に、「自○年○月○日から至○年○月○日の○日間 病気欠勤のため賃金支払いなし」と記載します。

雇用保険法では、退職日以前2年間に各月の賃金支払基礎日数が11日以上の被保険者期間が12ヶ月以上ないと被保険者期間と見なさないことになっていますが、特別に病気などで賃金支払いがない場合は、医師の証明等を添えることで、休んで賃金が支払われない期間が退職日以前2年に加算(最大4年間)される可能性があります。

なお、医師の証明については、健康保険の傷病手当金請求書の写しによって代えることもできます。


雇用保険被保険者のデータ

労働者が、再就職の際に雇用保険被保険者証を会社へ提出しなかった場合、あらたな被保険者番号で登録されることになります。

この状態を放置しておくと、前職での雇用保険期間が通算されない事態を招くおそれがあります。

ハローワークは被保険者記録を電子記録として、いつまでもデーターベース(DB)に残してはいません。

データは、徴収法第41条(時効)との均衡を図るという建前から、DBは閉鎖後2年間はもっていなくてはなりませんが、前被保険者番号の期間を考慮しない処理が行われた場合、これまでの被保険者番号は閉鎖(前会社の退職)のときから2年で削除されてしまうので、2年経過日以降に資格取得届等訂正願(重複統一)を提出することができなくなる可能性が生じます。


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