支払督促の留意点

相手が争うと通常の訴訟事件になる

相手が異議を申し立てなければ、証拠調べも審理も無く、判決と同様の効果のある命令が出るという簡便さがありますが、一旦異議が出ると審理が始まります。

債務者が所定の期間内に「督促異議の申し立て」をすると、通常の訴訟手続に移行し、その手続の中で、裁判官が改めて債権者の請求が認められるかどうかを審理することになります。(民事訴訟第395条)

民事訴訟法第395条(督促異議の申立てによる訴訟への移行)

適法な督促異議の申立てがあったときは、督促異議に係る請求については、その目的の価額に従い、支払督促の申立ての時に、支払督促を発した裁判所書記官の所属する簡易裁判所又はその所在地を管轄する地方裁判所に訴えの提起があったものとみなす。この場合においては、督促手続の費用は、訴訟費用の一部とする。

従って、一番大切なのは相手の性格を読むということでしょう。

いくら請求してものらりくらり、だらしない性格で、不払いの理由もこれとしてなく、逃げの姿勢に入っている相手方には効果があります。

ですから、本裁判をやろうとまでは考えていないとすれば、相手が異議申し立てをしてくるかどうかは、見通しを立てておくべきです。

もう1点、異議申し立てで注意すべきは、事実関係を争う気はないが、支払方法(命令書は一括払いとなっているが、分割で支払いたいなど)についてでも異議申し立てができるということです。

あらかじめ、分割払いを主張している場合で、異議を申し立てられる可能性がある場合は、調停か本訴の方がなじむ場合があるでしょうし、何より話し合いの余地があるということですから、よく考えましょう。


その他の支払督促のデメリット

相手方を管轄する簡易裁判所

支払督促は、相手方を管轄する簡易裁判所に申し立てる制度ですから、相手が遠方だと面倒です。

申立人が裁判所に出頭するのも大変だとわかれば、相手は負ける争いでも異議を申し立てる可能性があります。

公示送達ができない

支払督促は、相手方に届かなければいけませんし、効力は、確かに届いたときに発生します。(民事訴訟法第388条第1、第2項)

公示送達ができないので、債務者の住所が不明の場合にはこの制度は使えません。


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