無断欠勤による懲戒解雇について

会社側の指導状況がポイント

単に無断欠勤したからといって、解雇が有効と認められるわけではありません。

無断欠勤を理由とする解雇の場合、次の点が問題となります。

(1) 就業規則または労働協約上の解雇事由に該当していること
(2) 無断欠勤をしたことについて正当な理由がないこと
(3) 欠勤日数、過去の勤務成績、欠勤に至った経緯などからみても、情状酌量の余地がないこと
(4) 会社が再三に渡り本人に注意をしてもなお改めなかったこと
(5) 出勤の督促に応じなかったこと
(6) 他の従業員の出勤成績と比較して著しく劣ること

無断欠勤で懲戒解雇が有効とされた判例

国の判断基準(昭和23.11.11 基発1637号、昭和31.31.1 基発111号)は、「原則として2週間以上正当な理由なく無断欠勤し、出勤の督促に応じない場合」、「出勤不良または出欠常ならず、数回にわたって注意を受けても改めない場合」を挙げています。

開隆堂出版事件 東京地裁 平成12.10.27

事前の届をせず、欠勤の理由や期間、居所を具体的に明確にしないままの2週間にわたる欠勤は、正当な理由のある欠勤であるとは認められないとして、就業規則の懲戒解雇規程に基づく懲戒解雇を有効と判断した。

安威川コンクリート事件 大阪地裁 昭和63.9.26

以前も無断欠勤により出勤停止処分を受けた労働者が再び無断欠勤をし、会社の再三にわたる指示にも応ぜずに欠勤したケースで、解雇は有効だとされた。

中央実業チェーン事件 大阪地裁 昭和59.1.31

会社からの再三にわたる出勤の督促を受けながら1ヶ月以上も納得し得る欠勤理由を示さずに欠勤したケースで、解雇は有効だと判断された。

八戸鋼業事件 最高裁 昭和42.3.2

同僚の出勤表にタイムレコーダーで退出時刻を不正に打刻した。懲戒解雇が認められた。


無断欠勤で懲戒解雇が無効とされた判例

栴檀学園事件 仙台地裁 平成2.9.21

正当な理由のない1ヶ月の無断欠勤を理由とする懲戒解雇について、業務に大きな支障がなかったこと、それまで使用者が特に注意をしなかったことから、解雇無効と判断した。

ローヤルカラー事件 東京地裁 昭和49.3.28

出勤状態は悪いが、従業員中最悪ではないこと、それによって業務に顕著な遅滞や支障があったとは認められないことから、解雇は無効とされた。


遅刻で解雇はできるか

遅刻・欠勤が解雇にあたるかの判断は、多種多様です。

判例は、解雇権濫用の法理の現れとして、使用者はまず労働者の努力や改善を促すべきであって、それでもなお労働者の勤務態度が改善されない場合などは>解雇しうる、という傾向がありますから、遅刻や早退を黙認するなどルーズな勤怠管理を行っている会社で、突然、厳格な対応をとり、遅刻や早退を理由に解雇する場合は、解雇無効とされることにもなるでしょう。

訴訟などの場合を考慮すると、書面による注意が必要で、譴責などの懲戒処分を積み重ねていきます。

繰り返し注意や警告を行うことが、重要です。


遅刻や早退等で懲戒解雇が有効とされた判例

茨木市消防長事件 大阪地裁 平成15.3.12

指令係長が通信司令室で勤務中、無断で離席してトイレに行き、司令室が無人となった際に緊急通報があり、これに対応できなかった。懲戒免職処分が適法とされた。

社会福祉法人相模福祉会事件 東京高裁 平成5.5.31

再三の出勤督促に対して独自の口実を述べて欠勤を続けた社会福祉法人の経理課長に対する懲戒解雇につき、「正当な事由なくしばしば無断欠勤し、業務に不熱心なとき」との懲戒解雇事由などに該当するとして、当該懲戒解雇を有効とした。

東京プレス工業事件 横浜地裁 昭和57.2.25

6ヶ月間に24回の遅刻と14回の欠勤をし、しかもそのほとんどが無断欠勤であり、上司の注意・警告を受けても改まらなかったプレス工場の従業員につき、「正当な理由なく遅刻・早退又は欠勤が重なったとき」、との条項に該当するとしてなされた懲戒解雇を有効とした。

愛知機械工業事件 名古屋高裁 昭和51.9.30

試用期間を延長して雇用されている夜間大学生が、時間外労働に当たる早出勤務に再三遅刻したことなどを理由に解雇された。解雇が有効とされた。


遅刻や早退等で懲戒解雇が無効とされた判例

ヤマイチテクノス事件 大阪地裁 平成15.9.12

約3年間にわたり遅刻が恒常的になっていたにもかかわらず、何らの処分もしなかったこと等からすると、会社は、原告が通勤時間に3時間を要すること、そのために定時に出勤することができないことを認識したうえで、これを了承していたといわざるを得ない。著しい就業規則違反であるとはいえず、懲戒解雇の理由とはならない。

高知放送事件 最高裁判決 昭和52.1.31

アナウンサーが2度にわたり寝過ごし、早朝6時からのニュースを放送できなかったことを理由に解雇された。

最高裁は、(1)本件は寝過ごしという過失により発生したもので、悪意・故意によるものではない、(2)アナウンサーを起こす担当者も寝過ごしていた、(3)寝過ごしによる放送の空白時間はさほど長時間とはいえない、(4)これまで放送事故歴はなく平素の勤務成績も別段悪くない、(5)本人が謝罪の意を表している、(6)寝過ごした担当者は譴責処分とされたにすぎない、という理由で、当該具体的事情のもとにおいて、解雇に処することが著しく不合理であり社会通念上相当なものとして是認することができないときには、当該解雇の意思表示は解雇権の濫用として無効になるとした。

神田運送事件 東京地裁 昭和50.9.11

会社が勤務状況の問題に対し、何らかの制裁措置により警告することなく、即解雇した案件につき、解雇無効とした。

共栄印刷紙器懲戒解雇事件 名古屋地裁 昭和53.9.29

従業員が入社後1年5ヶ月の間に180回に及ぶ無届遅刻を繰り返したことを理由とされた懲戒解雇について、同人は入社以来それまで無届遅刻について懲戒処分に付されたことはなかったのであるから、段階を踏むことなくいきなり懲戒解雇に付することは権利の濫用として無効。


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