使用者からの解雇の撤回

解雇の意思表示の撤回は認められるか

使用者側から解雇の意思表示を撤回することが認められるかについては、次の通りです。

  1. 解雇の効力は使用者の一方的な意思表示により発生し、労働者の同意がない限り撤回はできない。
  2. 解雇予告手続を欠いた解雇に対しては、労働者は解雇無効の主張と解雇有効を前提としての予告手当支払いのどちらかを選択できる。

労働者に即時解雇を通告した後、労働者から解雇予告手当を請求されると解雇を撤回し、その後、解雇予告を通知するといった使用者もしばしば見受けられます。

たとえば、解雇予告手当の支払いを知った使用者が、「確かに30日間の予告期間をおかずに解雇を通告したが、あれは即時解雇の意味ではなく、解雇予告をしたつもりである。予告をしてから30日経ったので、解雇の効力は生じてる。」と主張してくる場合です。

また、最近では、国からの助成金のカットを聞き及んで、いったん提示した「解雇」を白紙に戻したいと申し出るケースも増えています。

しかし、使用者の一方的解約としての解雇の意思表示は、労働者に到達した時点で効力が発生しますので、原則として労働者の同意がない限り、撤回することはできません。

こうした予告の取消ができないのは、使用者の単独行為である予告を一方的に取り消しうるものとすれば、通知を受けた労働者の法律的地位を極めて不安定な状態におくことになるからであるとされ、したがって労働者の同意を得て取り消すことは差し支えないとされています。

民法第540条第2項は「前項の意思表示は、撤回することができない。」と定めており、この場合には、労働者が承諾したときだけ撤回できます。

労働者が具体的事情の下に自由な判断によって同意を与えた場合には、取消すことができるものと解すべきである。

(昭和25.39.22 基収第2824号、昭和33.2.13 基準発第90号)

理由のない解雇は無効ですが、相談者が解雇を争わない限り、解雇を一応有効なものとして、解雇予告手当を請求することができるだろうと考えられます。

なお厚生労働省も、解雇の予告については、それが当事者の行う一方的な意思表示であり、これを取り消すことはできないとしています。

厚生労働省の考え方では、使用者は30日間の休業手当の支払いを負うことになります。


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