雇用申入義務(一般業務の場合)

直接雇用促進のため義務づけられた

平成16年3月1日施行の派遣法改正により、派遣労働者に対する雇用契約の申し込みが義務づけられました。

内容は、受入期間の定めのある派遣と、そうでない派遣とによって異なります。


一般的派遣業務の場合(原則1年、最大3年までの派遣)

1年を超える場合、まず、在職者から受け入れて良いか意見を聴く

派遣先が1年を超える派遣期間を定める場合、あらかじめ派遣先の事業所の労働者の過半数で組織する労働組合または労働者の過半数代表者に対し、(1)派遣を受ける業務と、(2)派遣期間を、書面により通知し、その意見を聴く手続きが必要です。

この意見は尊重するよう努めなければなりません。

なお、この意見聴取を記した書面については、3年間保存することが義務づけられています。

保存事項

  1. 意見を聴いた組合の名称または代表者氏名
  2. 通知した事項
  3. 意見聴取日
  4. 聴取した意見の内容
  5. 意見により内容を変更したときは、その変更後の期間

1年を超えると、雇用努力義務が生じる

1年を超えて同一スタッフが同一業務に従事していた場合は、雇用の努力義務が生じます。

派遣労働法第40条の3(派遣労働者の雇用)

派遣先は、当該派遣先の事業所その他派遣就業の場所ごとの同一の業務(前条第1項各号に掲げる業務を除く。

※注:26業務・プロジェクト型などを指す)について派遣元事業主から継続して1年以上前条第1項の派遣可能期間以内の期間 労働者派遣の役務の提供を受けた場合において、引き続き当該同一の業務に労働者を従事させるため、当該労働者派遣の役務の提供を受けた場合において、引き続き当該同一の業務に労働者を従事させるため、当該労働者派遣の役務の提供を受けた期間(以下この条において「派遣実施期間」という。)が経過した日以降労働者を雇い入れようとするときは、当該同一の業務に派遣実施期間継続して従事した派遣労働者であって次の各号に適合するものを、遅滞なく、雇い入れるよう努めなければならない。

1. 派遣実施期間が経過した日までに、当該派遣先に雇用されて当該同一の業務に従事することを希望する旨を当該派遣先に申し出たこと。

2.派遣実施期間が経過した日から起算して7日以内に派遣元事業主との雇用関係が終了したこと。

雇用のための努力義務が生じるのは、次の(1)および(2)の要件を満たす場合です。

(1) 派遣終了日までに、派遣先に雇用されて同一の業務に希望する旨を申し出たこと。
=雇用されたいが、別の仕事に就きたいという場合は該当しない。
(2) 派遣終了日から7日以内に派遣元との雇用関係が終了したこと
=次の派遣先が決まっているような場合は、該当しない。
また、雇用関係が終了していない状態で派遣先が雇うということは、二重雇用となり違法

派遣元は抵触日を通知する

派遣元事業主は、派遣先が派遣期間の制限に「抵触する日の前日の1ヶ月前から前日までの間」に、抵触日以降継続して労働者派遣を行わないとする通知を、派遣先と派遣労働者に送ります。

派遣可能期間(最大3年)は超えられない

原則1年・最大3年までの派遣が認められるようになった通常の派遣業務の場合、その派遣期間を超えて派遣先が派遣労働者を同一場所の同一業務に継続して使用する場合、派遣先は派遣労働者に対して雇用契約の申し入れをしなければならない、とされています。(派遣法40条の4)

申し込みは、そのポストに新たに正規の労働者を雇い入れようとするときに行います。この場合の正規の労働者は、常用労働者だけでなく、有期契約社員、パート社員なども含まれます。

違反は、30万円以下の罰金 となっています。(派遣法61条)

労働者派遣法第40条の4

派遣先は、第35条の2第2項の規定(※注:派遣元→派遣先に送付される派遣期間限度の通知)による通知を受けた場合において、当該労働者派遣の役務の提供を受けたならば第40条の2第1項(※注:限度期間)の規定に抵触することとなる最初の日以降継続して第35条の2第2項の規定による通知を受けた派遣労働者を使用しようとするときは、当該抵触することとなる最初の日の前日までに、当該派遣労働者であって当該派遣先に雇用されることを希望するものに対し、雇用契約の申込みをしなければならない。

同一業務とは、組織の最小単位で行われる業務とされています。派遣スタッフを指揮命令する者がカバーする範囲(係・班など)と理解するのが適当だといえます。

同一の場所・同一の業務ですから、同じ業務でも勤務地が変わる場合や、同じ勤務先でも業務内容が変更される場合は対象となりません。

ただし、後者の場合、後日のトラブルを回避するため、何が担当業務内容なのか契約に具体的に明示しておくことが望ましいと考えられます。

この申し込みは義務規定です。ただし、あくまでも申し込みですから、社員として雇用した場合の賃金など労働条件で折り合わなければ、雇用契約は成立しないこともあることになります。

当の派遣労働者が雇用申込みを断った場合は、申し込みを断った時点から1ヶ月以内に、派遣先事業主は、同一条件で他の正規労働者を雇用することができます。

スタッフや会社を入れ替えても派遣期間の制限は変わらない

この場合は、派遣受入が継続されていることが条件であり、注意しなければならないのは、会社・派遣労働者が同一であるか否かが問われないことです。

例えば、派遣制限1年間の業務に18ヶ月Aさんを派遣で受け入れ、その後引き続いてBさんを12ヶ月受け入れ、会社も人も違うCさんを6ヶ月受け入れたならば、そのCさんに雇用申し入れをしなければならない、ということになっています。

採用予定社員が1名で、派遣社員で該当する者が複数いる場合は、全員に応募の機会を与えて、公平な方法によって、雇用の申し込みを行うといいでしょう。

受入可能期間の確認手順

派遣元は、初めて労働者を派遣する際に、この制限に抵触するかどうか、派遣先に確認しなければなりません。

派遣先は、派遣期間の制限が行われる業務について、あらかじめ派遣元に対し、派遣元事業主から労働者派遣の役務の提供を受けた場合に派遣期間の制限を超えることとなる最初の日を通知しておかなければならないことになっています。(派遣法40条の2)

派遣元も、派遣可能期間が終了する際(派遣期間の制限に抵触する1ヶ月前から派遣期間限度の前日まで)、派遣先に対し「派遣可能期間以降は(同一の派遣労働者を同一の業務に)労働者派遣を行わない」旨通知をすることになります。(派遣法35条の2第2項)

申込義務を避けるための意図的配置は脱法行為と見なされる

新規学卒者を本社で一括採用し、一定の期間研修した上で適性を判断し、異動させて派遣社員の在職する職場に配置するといったことが行われることがあります。

しかし、その異動が派遣社員の雇用申込義務を逃れるためのものと判断されたなら、脱法行為とみなされることになります。

また、同一業務でなければいいだろうということで、同じ係内の別業務として派遣継続することなども、期間制限に違反することとなります。

自働更新規定の留意点

契約書に自働更新規定を入れておけば、契約更新の手間を省くことができます。

ただし「特段の事情がない限り、派遣契約を自動的に更新する」といった定め方では、派遣期間が設定されているとはいえないため、派遣期間の定めがある業務などについては認められていません(プロジェクト型を除きます)。


申し入れに当たっての労働条件

法律は「直接雇用の申し入れ」を求めているにすぎません。

申し入れの内容が、当該企業の労働者と一致することは必須ではありませんし、身分が契約社員であったり、有期雇用であったりしても、法に違反しないことになります。

もちろん雇用にあたっての労働条件は、当該業務に従事している派遣先企業の労働者に労働条件を総合的に勘案しながら決める必要があるとはいえます。

派遣のままの方が労働条件がいいということも、ありえます。その場合、本人の了解尽くであれば、ずっと派遣で雇用することもできます。

雇用契約の申込みをした時に、当該派遣労働者が直接雇用ではなく、派遣労働者のまま働き続けたいと希望する場合は、派遣先はその労働者を引き続き派遣として雇用することが可能です

※後日トラブルを招かないように、書面による意思確認が好ましいです。

この申込義務に違反し、さらに都道府県労働局長の指導・助言に従わなかった場合は、厚生労働大臣が企業名を公表することが可能です。

派遣社員を長期雇用 労働局がキヤノンに行政指導

大手精密機器メーカーのキヤノンが、30歳代の女性の派遣労働者を労働者派遣法で定められた期間を超えて10年以上雇用したとして、東京、神奈川労働局から管理体制を見直すように行政指導を受けていたことが28日、わかった。

同社が行政指導を受けるのは今年2月に続き2度目。

両労働局は同社が制限違反を繰り返していたことを重視し、再発防止に向けて報告を求める。

違反があったのはキヤノンの川崎市の事業所。派遣法では、事務作業など「一般業務」で働く派遣労働者を最長3年を超えて受け入れる場合、派遣先の企業はその労働者に対して直接雇用する申し入れをしなければならない。

(asahi.com 2005.12.29)


雇用申入義務(26業務の場合)

専門26業務等の場合=3年を基準

派遣受入期間に定めのない場合は、いつまででも派遣労働者として雇用していることができますが、一定条件下では雇用申入義務が生じます。

旧26業務や産休代替派遣、介護休業代替派遣などの場合は、「同じ労働者」を「3年を超えて」受け入れているとき、その同一業務に「新たに労働者を雇い入れ」ようとした場合は、まずは、その派遣労働者に対し、雇用契約を結ばないかと申し入れなければなりません(努力義務ではない)。

「新たに労働者を雇い入れる」場合ですから、別の労働者の配置換えで充当する場合は、雇用申入れ義務は発生しないことになります。

労働者派遣法第40条の5

派遣先は、当該派遣先の事業所その他派遣就業の場所ごとの同一の業務(第40条の2第1項の業務に限る。)について、派遣元事業主から3年を超える期間継続して同一の労働者に係る労働者派遣の役務の提供を受けている場合において、当該同一の業務に労働者を従事させるため、当該3年が経過した日以降労働者を雇い入れようとするときは、当該統一の派遣労働者に対し、雇用契約の申込みをしなければならない。


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