派遣社員と有給休暇

全労働"日"の8割以上勤務すれば、取得権を得る

年次有給休暇労働基準法39条)については、派遣法44条には特例として規定されておらず、派遣会社に対し、年休の付与義務を負うのは、原則通り、雇用主である派遣元です。

まず年休取得を派遣元に請求します。

2ヶ月や3ヶ月契約といった短期契約の場合でも、更新して6ヶ月以上働いていれば、「6ヶ月以上継続して勤務」という有給休暇取得の要件を満たします。

派遣先が変わった場合も、派遣元での期間継続により有給休暇の取得権利が生じます。

また、取得要件の「8割以上出勤」は、勤務の割り振られた日の8割出勤ですから、所定の勤務時間が8時間の場合も、6時間の場合も、いずれも「1日勤務」として、勤務実績を計算します。

また、有給休暇が10日あるところを「3ヶ月で3日まで」というふうに取得制限することも、違法です。

また請求権は、年次有給休暇の発生から2年間です。(労働基準法115条


請求先は派遣元

派遣労働者は派遣元に年休を請求することになりますが、その時季変更が認められるか否かの判断として「事業の正常な運営を妨げる」かどうかは、派遣元の事業について判断され、派遣先の事業運営を妨げるかどうかとは関係がありません。

時季変更権を行使できるのは派遣元です。派遣先ではありません。

派遣先の事業に支障が生じる場合は、派遣元は代替者を派遣するなどして、対応することになります。

派遣元では、代替労働者の派遣の可能性など派遣元の派遣事業全体の関係で時季変更権を行使してくる(別の時季に年休を取るように言ってくる)こともありますが、本来、派遣元は派遣社員が年休を全部取ることを前提として、代替要員を確保し、派遣事業の運営に支障をきたさないようにしておく必要があります。

単に業務の繁忙や代替の派遣社員がいないというだけでは、時季変更権を行使することはできません。

派遣労働者が請求した時季に、年次有給休暇を与えなければなりませんが、事業の正常な運営が妨げられる場合に限って、年次有給休暇を他の日に振り替えることができます。(労働基準法39条4項)

この時季変更権の理由となる「事業」は派遣先の事業運営ではなくて、派遣元の事業の運営を妨げるかどうかについて、判断することになります。

したがって、国は、支障が生じる場合であっても、派遣元は代替労働者の派遣の可能性も含めて事業の正常な運営を妨げるか どうかを判断すること」との見解を示しています。

派遣中の労働者の年次有給休暇について、労働基準法第39条の事業の正常な運営が妨げられるかどうかの判断は、派遣元の事業についてなされる。

派遣中の労働者が派遣先の事業の正常な運営を妨げる場合であっても、派遣元の事業との関係においては事業の正常な運営を妨げる場合に当たらない場合もありうるので、代替労働者の派遣の可能性も含めて派遣元の事業の正常な運営を妨げるかどうかを判断することとなること。

(昭和61.6.6 基発333号)

派遣元に対し年休を要求するとともに、派遣先に対しては派遣契約にかかわることですから、派遣元から派遣先によく理解するよう話をつけてもらいます。

なお、登録型の労働者の場合に、年休の発生要件である「継続勤務」との関係で、登録しているだけでまだ労働契約関係が存在していない期間を「継続勤務」と認められるかが問題となります。

「継続勤務」とは、労働契約の存続期間、すなわち事業場における在籍期間を意味します。

登録型の場合には、登録しているだけの期間はまだ労働契約が締結されておらず、具体的に派遣先が決まった時点で労働契約が締結されることになりますが、その労働契約が締結されている期間を全体として判断して、実態として引き続き使用していると認められる場合には、「継続勤務」に該当するとされています。


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