解雇権濫用法理の類推適用

短期労働契約の反復更新

短期労働契約が反復更新されて、期間の定めのない契約と実質的に異ならない状況となった場合には、更新の拒否には解雇の場合と同様、客観的で合理的な理由が必要とされます。

また、法改正により、平成25年4月1日以降に開始する有期労働契約が通算して5年を超えて繰り返し更新された場合、労働者の申し出により、無期労働契約へ転換されることとなりました。

関連事項:雇用契約を更新しない場合

更新の拒否に当たって、客観的で合理的な理由が認められない場合には、自動的に短期契約の更新が行われるとの判例理論が、最高裁の判例によって確立されています。(東芝柳町工場事件 最高裁 昭和49.7.22)

短期労働契約への解雇権濫用法理の類推適用の理論に関する裁判所の考え方は、以下などの事情を総合的に判断して、労働者の抱いた雇用継続の期待が強く、その期待が合理的なものであれば、解雇権濫用法理を類推適用するというものです。

(1) 期間雇用が臨時的なものであったのか、それとも常用的なものであったのか
(2) 更新の回数は多いかどうか
(3) 雇用の通算期間は長いかどうか
(4) 契約期間満了のつど直ちに契約締結の手続きをとるなど、契約期間管理の状況はどうだったのか
(5) 会社が採用時に長期継続雇用を期待させるような言動をしたことなど、雇用継続の期待を持たせたかどうか
(6) 期間満了で雇い止めされた事例が過去にあったのかどうか

1年もしくは2ヶ月の契約期間を9年10ヶ月雇用されたアルバイトの 雇い止め(日本電子計算機事件 東京地裁 昭和63.11.10)や1年契約が20回反復更新されて21年間雇用された大学非常勤講師の雇い止め(亜細亜大学事件 東京地裁 昭和63.11.25)などのケースです。

逆に、短期労働契約が反復更新された場合であっても、臨時性が明白で継続雇用の期待が社会的に合理的なものだと認められなかった場合には、解雇権濫用法理の類推適用が否定されています。

最初の更新拒否についても解雇権濫用法理の類推適用がある

労働者が期間満了後の継続雇用を合理的に期待させるような雇用であれば、短期労働契約の最初の更新拒否についても、更新拒否が相当と認められるような特段の事情が必要であるとする判決があります。

一つは、期限の定めなく雇われていた臨時従業員がその業務を引き継いだ別会社に期間1年の契約で引き続き雇用され、1年の期間満了の際に契約を打ち切られたケースです。

福岡大和倉庫事件 福岡地裁 平成2.12.12

雇用契約の締結に至る経過からすると、この期間の定めは一応のものであって、単に期間が満了しただけでは雇い止めになるものではない、契約当事者は特段の事情がない限り雇用契約が更新されることを前提としているのであって、そのような特段の事情のない限りは雇い止めを行うことは信義則上許されない。

もう一つが、正社員とは異なる臨時運転手が、完全歩合制で、勤務時間が自由で、期間1年の契約を結んで雇用され、一度も更新されないうちに、最初の満了時に雇い止めされたケースです。

龍神タクシー事件 大阪高裁 平成3.1.16

雇用契約は臨時雇いとして期間1年のものであったが、その実質は期間の定めのない労働契約に類似するものであって、雇用の継続を期待することが合理的な契約であるとして、その打切りについては信義則上特段の事情が必要であるとし、その特段の事情は認められない。


ページの先頭へ