雇用契約を結ぶまで

雇用契約を結ぶまでの流れ

  1. 仕事の内容を選ぶ

  2. 派遣元を選ぶ

  3. 派遣元に登録する

  4. 面接・スキルチェック

  5. 仕事の照会

  6. 派遣元社と雇用契約を結ぶ(派遣元は書面で就業条件を明示する)

  7. 派遣先で仕事を始める


事前面接は違法

事前面接をするくらいなら、派遣先企業は労働者を直接雇用すればいいことになり、労働者派遣制度事態が単なるトンネル行為として、意味のないことになります。これは、職業安定法44条違反となります。

職業安定法第44条(労働者供給事業の禁止)

何人も、次条(※労働者供給事業の許可)に規定する場合を除くほか、労働者供給事業を行い、又はその労働者供給事業を行う者から供給される労働者を自らの指揮命令の下に労働させてはならない。

派遣先は、紹介予定派遣でない限り、労働者が派遣先で働き始める前に面接を行ったり、派遣元から履歴書を送付させてはなりません。

派遣法26条第7項は、派遣元と労働者派遣契約を結ぶ際に、派遣労働者を特定することを目的とする行為をしないようにすることを努力義務として定めています(罰則はありませんが・・・)。

派遣先指針

「派遣労働者を特定するための行為」とは、労働者が派遣で働き始める前に派遣先が労働者の面接を行ったり、派遣元から派遣先に労働者の履歴書を送付させることなど、労働者を派遣先で選別するための行為だけでなく、例えば、「若い女性に限る」など、派遣労働者のスキルとは関係のない特定の条件で絞ることも「派遣労働者を特定する行為」にあたる。

派遣元指針

派遣元事業主は、紹介予定派遣の場合を除き、派遣先による派遣労働者を特定することを目的とする行為に協力してはならないこと。なお、派遣労働者又は派遣労働者となろうとする者が、自らの判断の下に派遣就業開始前の事業所訪問若しくは履歴書の送付又は派遣就業期間中の履歴書の送付を行うことは、派遣先によって派遣労働者を特定することを目的とする行為が行われたことには該当せず、実施可能であるが、派遣元事業主は、派遣労働者又は派遣労働者となろうとする者に対してこれらの行為を求めないこととする等、派遣労働者を特定することを目的とする行為への協力の禁止に触れないよう十分留意すること。

派遣元は、派遣先が派遣労働者を特定するための行為に協力してはなりません。(派遣元指針第2の11)

労働者派遣契約を結ぶ際に、派遣元が派遣先に通知する情報は、労働者の氏名、性別、年齢、社会保険への加入状況、スキルに関する情報などごく限られています。

ですから、派遣労働者の履歴書を派遣先へ送付するなど、労働者の個人情報を安易に開示することがないようにしなければなりません。

※紹介予定派遣の場合、労働者自らの判断による場合は許されます。

事前面接の例外

紹介予定派遣の場合、直接雇用が本来の目的であるため、例外的に面接等が許されます。

また、派遣スタッフの希望による職場見学や、派遣スタッフの氏名などの通知(派遣法35条)後に業務打合せのために派遣スタッフが派遣先を訪れることは認められています。

本人の意思による事前の打ち合わせを理由とした事前接触が行われることが多いようですが、これが違法な「事前面接」か合法な「業務打合せ」かを判断することは現実には容易ではありません。

リクルートスタッフィング事件 東京地裁 平成17.7.20

登録者が派遣先で面談(1回・販売目標等の確認)を行った後、派遣元は登録者を派遣予定先に派遣しないこととした。

登録者には販売員としての適正が欠けていたとの派遣元判断があり(電話連絡が取れない、受け答えが適切にできない、など)、派遣先が面談の結果、派遣を断ったとする証拠はなかった。

登録者は派遣労働契約が成立していたとして、2ヶ月分の賃金と面接のための交通費を請求した。

裁判所は、この面談が単なる打合せに留まるかどうかは疑問がないではないとしつつも、本件面談1回では、派遣労働契約が成立していたと認めるには足りず、賃金等の請求は認められないとした。

仮に面談が違法な「特定行為」に当たるとしても、努力規定に過ぎず、労働者が事前面接に協力することで直ちに不法行為が成立するわけではない、賃金等の損害賠償を負うべき違法行為ではない、とされた。


年齢や性別を理由に対象外とすることは禁止

派遣先は、年齢や性別、障害者であることを理由として、派遣スタッフに差別的な取り扱いを行ってはなりません。(派遣先指針第2の4、職安法3条)

ただし、以下の場合例外的に年齢の限定が認められます。

  1. 行政機関の施策を踏まえて中高年齢者に限定して募集・採用する。
    (例)中高年齢者の雇用促進を目的とする助成金の対象となる年齢層の労働者を募集・採用する場合など。
  2. 特定の年齢層の就業などが制限されている業務について、禁止または制限されている年齢層の労働者を除いて募集・採用する。
    (例)危険物の取扱いなどを行う業務に就く者として18歳以上の者を募集・採用する場合など。

関連事項:募集の年齢制限


誓約書の提出

派遣先が金融機関であるため「暴力団員でない」旨の誓約書を求められた、企業機密を漏洩しない旨の覚書を求められた、など、派遣時に誓約書を求められることがあります。

しかし派遣労働者は、労働者派遣法24条により秘密保持の義務を負っています。したがって、このような誓約書は不要だと考えられます。

しかしながら一方で、派遣労働者による企業秘密の漏洩事件があることも事実ですから、派遣元・派遣先・派遣労働者の三者で、事前に同意のうえ、誓約等を取り付けておくことも可能だといえるでしょう。

基本的には、派遣労働者と派遣「先」との関係は雇用契約ではありませんので、こうした誓約書等の提出義務は不自然だともいえます。

このような誓約書を求めるとすれば、雇用主である派遣「元」の側であるべきです。

本人の了解がないまま、派遣先が多岐にわたる誓約書等を要求した場合は、むしろ、派遣先の直接雇用が疑われることになりますので、注意が必要です。


派遣契約の内容は重要

問題が生じたとき、派遣元との契約書でどのような取り決めがなされているかが、結果を左右します。

契約解除時や派遣元都合による休業時の補償の取り決めがないなど、契約内容にはしっかり記載しておくように注意しましょう。

派遣労働者は、就業条件明示書で示された業務内容以外の仕事を命じられても、これに従う義務はありません。

労働契約の締結にあたり、雇用主は、賃金、労働時間などの労働条件については、書面で明示しなければなりません。(労働基準法15条

さらに派遣法では、派遣元は、派遣労働者が派遣就業を始める前に、派遣先での就業条件を書面で明示しなければならないと定めています。(派遣法34条)


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