偽装請負の見分け方
企業の中には、実態が従業員の「派遣」労働でありながら、相手先企業と表面上「請負」契約を結び、自らの従業員を相手先の業務に従事させるケースがあります。
請負契約の目的は仕事の完成であって、労務の提供そのものが目的ではありません。
個人と請負と称する契約を結んだとしても、会社がその者を指揮命令して労務に服させているなど使用従属労働を行わせている場合には、労働契約とみなされます。
「賃金・給与・賞与」「解雇・懲戒」などの発言があれば、雇用関係にある可能性が高いといえるでしょう。
受託業務がお茶だしや電話番というのなら、業務委託契約とは考えられません。
項目 | 労働契約(雇用契約) | 請負契約・業務委託契約 |
---|---|---|
当事者 | 使用者・労働者 | 注文者・請負人 |
労働提供の特徴 | 使用従属関係(指揮命令下の労働) | 独立・対等・非専属 |
代替性の有無 | なし。下請(代替)禁止 | あり、下請(代替)可能 |
適用法規 | 労働法規全般 契約よりも法律優先が原則(強行法規性) |
民法 契約優先が原則(任意法規性) |
賃金・報酬 | 労働の対償 労働基準法24条 |
仕事の完成等に対する報酬 下請代金支払い遅延防止 |
契約解除 | 解雇制限規定、解雇予告 解雇権濫用法理 |
契約による |
労働条件明示 | 労働基準法15条、労働基準法89条 | ・・・ |
労働組合法 | 労働基本権の保障 | ・・・ |
監督行政 | 労働基準監督署 | ・・・ |
罰則 | 労基法、職安法等 | ・・・ |
請負には派遣法の適用はありませんが、請負として契約書を交わしていても、実態として請負の要件を満たしていないとか、故意に偽装していると見なされる場合は、人材派遣を行っていると判断されます。
厚生労働省では、次の事項に該当しないと請負とは認められず、その事業主は労働者派遣事業を営むという定義を定めています。(労働者派遣事業と請負により行われる事業との区分に関する基準 昭和61年労働省告示第37条 昭和61.7.1)
以下に該当しなければ「請負」とはいえません
次のイ・ロ・ハすべてに該当し、業務遂行に関する指示等を自らが行うこと
イ 次のいずれにも該当
(1)(請負企業が)労働者に対する業務の遂行方法に関する指示その他の管理を自ら行う。
(2)(請負企業が)、労働者の業務の遂行に関する評価等に係る指示を自ら行う。
※わかりやすく表現するならば、仕事の段取りを指示するのも請負企業だし、その出来不出来を判断するのも請負企業だということです。
委託元の企業は、仕事のやり方を請負企業の従業員に全面的に任せることになります。委託元は、「何日までにここまで終了させろ」などという工程管理を行うことはできません。
ロ 次のいずれにも該当
(1)(請負企業が)、労働者の始業及び終業の時刻、休憩時間、休日、休暇等に関する指示その他の管理(これらの単なる把握を除く)を自ら行う。
(2)(請負企業が)、労働者の労働時間を延長する場合又は労働者を休日に労働させる場合における指示その他の管理(単なる把握を除く)を自ら行う。
※わかりやすく表現するならば、労働者が仕事を始める時間や終わりの時間、休みなどは、請負企業側がコントロールするということです。
ハ 次のいずれにも該当
(1)(請負企業が)、労働者の服務上の規律に関する事項について、指示その他管理を自ら行う。
(2)(請負企業が)、労働者の配置等の決定及び変更を自ら行う。
※わかりやすく表現するならば、労働者の業務分担を決めるのも請負企業だし、きちんと仕事をしているかかを把握し、監督するのも請負企業だということです。
委託元は、「(特定の)誰それさんに担当させるように」といった指示は出せません。
次のイ・ロ・ハのすべてに該当し、請け負った業務を、請負企業の業務として、契約の相手方企業とは独立して処理すること
イ 業務に要する資金は、すべて自らの責任の下に調達し、かつ支弁すること。
ロ 業務の処理について、民法、商法その他の法律に規定された事業主としてのすべての責任を負うこと。
ハ 次のいずれにも該当し、単に肉体的な労働力を提供するものではないこと。
(1)(請負企業)自らの責任と負担で準備し、調達する機械、設備、機材、材料、資材等は、自ら管理する。
(2)(請負企業)自ら行う企画又は自己の有する専門的な技術若しくは経験に基づいて、業務を処理する。
※わかりやすく表現するならば、機材を調達するのは請負企業が行い、請負企業の得意とする技術を使って仕事をこなすということ。
請負企業がソフトウエアハウスで、仕事の内容が受付だというようなことは許されません。
上記の内容すべてに該当していたとしても、それが法の規定に違反することを免れるため故意に偽装されたものであって、その事業の真の目的が労働者派遣を業として行うことにあるときは、労働者派遣事業を行う事業主であることを免れることができません。