労働関係の実態判断

名称によらず実態で判断

契約の形式が請負であるとか委託であるという一事をもって、労働契約ではないと即断しないことが大切です。

労働基準法9条に規定する「労働者」とは、契約の形式に関係なく、実態からみて「労働者」に該当するかどうかで判断されます。

そのため、労働契約の概念は広く、請負契約や業務委託契約の形式をとっていたとしても、相手方が実態として労働者だと認められる場合は、労働契約となり、労働基準法上の保護を受けることができます。

まず、労働関係の実態を業務の指示に対する許諾の自由があるか、業務遂行に当たり具体的な指揮命令があるか、勤務時間や勤務場所が指定されているか、報酬が賃金なのか、を中心に詳しく聞き取ることが必要です。

その上で、<労働者性の判断基準(下記)>に照らして、労働者として考えられるかどうかを判断します。

油研工業事件(下記)では、最高裁は親会社が、社外工との関係において、労働組合法7条の使用者にあたるとしています。

油研工業事件 最高裁 昭和51.5.6

(1)会社は油圧装置に関する設計図の製作を社外の業者(外注業者)に請け負わせ、外注業者の派遣を受け、会社の作業場内で設計図の制作に当たらせた。

(2)会社は、社外工を受入れるにあたっては外注者の実態については全く無関心で、社外工本人の履歴書、住民票の提出を求める等個人の技能、信用に着眼して人物本位に受入れを決定しており、また、社外工の勤務態度や技術程度が不良であるときは、外注業者にその者の派遣を中止させ、外注業者が独自に代わりの社外工を派遣することを認められていなかった。

(3)社外工は、会社従業員の勤務時間と同一時間事実上拘束され、会社従業員と同一の設計室で、会社の用具等を用い、会社職制の指揮監督の下で、会社従業員と同一の作業に従事しており、その間それぞれ所属の外注業者から作業や勤務等につき指示を受けることは全くなかった。しかし、社外工には就業規則の適用はなく、有給休暇や退職金を与えられることもなかった。

(4)社外工の作業に対し、会社は外注業者あてに請負代金名義で対価を支払っていたが、その金額は社外工の労働時間、出来高に応じて計算した額を合算したものであり、各社外工はこれを作業実績に比例して分配していた。

(5)当該社外工は、会社からの要請により、外注業者としての企業を設立し、3名のうち2名がその役員となったが、これは法人格を具えた外注業者から請負契約に基づき派遣された社外工であるという体裁を整えるための形式であったにすぎず、会社との労働関係の実態に変化はなかった。

以上の状況から、社外工は実質的使用者は親会社であるとされた。


ページの先頭へ