締結形式

名称

労働協約はどのような名称を使用してもよく、一般に「労働協約書」「労使協定」「覚書」「確認書」「メモ」などとすることが多いようですが、タイトルがなくても労使間の合意により結ばれたものであれば労働協約となります。


体裁

労働協約は必ずしも包括労働協約として1本にする必要はなく、特別の事情のない限り、その都度できるところから個別的労働協約として結んでおいてかまいません。

もとより個別労働協約といっても、包括労働協約との間に効力の違いがあるわけではありません。

なお、内容は一般組合員にもわかりやすくする必要があります。


形式

(1) 書面に作成し、
(2) 労使の代表者が署名又は記名押印すること。

労働組合法上、労働協約が有効に成立するためには、団体交渉で合意に達した事項を書面に作成し、両当事者が署名又は記名押印しなければなりません。(労働組合法第14条

この場合、労働組合側や執行委員長、使用者側は事業主あるいは社長、代表取締役が当事者となります。

書面にしなかったものや、署名などがないものについては、効力がないというわけではなく、文書によらなくてもうまくいくような労使慣行は望ましいことですが、後でトラブルが生じないようにするためには、はっきりと書面にし、記名押印しておきます。

形式が整わないと、労働協約としての効力が認められないこともあります。

A福祉会事件 大阪地裁 平成16.2.18

法人側から組合に対し、労働協約に基づく特別手当支給の一時停止が提案され、労働組合はこれに合意した。その直後、超過勤務手当、賞与などの一時停止などが織り込まれた覚書が提示されたため、労組はこの調印に応じなかった。

裁判所は、書面に作成され、かつ、両当事者が署名または押印しない限り、労働協約としての規範的効力を付与することはできないとした。

都南自動車教習所(上告)事件 最高裁 平成13.3.13

会社は、賃上交渉を行ったが協定書の記名押印を拒否し続けた組合構成員に対し、ベースアップ分を支給しなかった。拒否の理由は、協定書に盛り込まれた初任給規程等のため。

他の従業員には支給されたため、組合側は、(1)協定作成を拒否したことを理由にベアが支給されないことは不当、(2)別組合との関係で不当労働行為に該当、などの理由から損害賠償請求を行った。

第一審、第二審は、双方の「合意」を協約の「成立」と見なした。

最高裁の判断――破棄、原審に差し戻し

労働協約は複雑な交渉過程を経て団体交渉が最終的に妥結した事項につき締結されるものであることから、口頭による合意又は必要な様式を備えない書面による合意のままでは後日合意の有無及びその内容につき紛争が生じやすいので、団体交渉が最終的に妥結し労働協約として結実したものであることを、その存在形式自体において明示する義務がある。

書面に作成され、かつ、両当事者がこれに署名し又は記名押印しない限り、仮に、労働組合と使用者との間に労働条件その他に関する合意が成立したとしても、これに労働協約としての規範的効力を付与することはできない。

なお、交渉で合意が成立したにもかかわらず、理由なく、書面にすることや記名押印を拒むといったことはできません。

合理的、かつ具体的な理由がないにもかかわらず、そのようなことをしますとトラブルが生じますし、組合の団結権を侵害することにもなりかねません。


適用

労働協約を締結した労働組合の組合員(非組合員にも適用される場合あり)


効力

(1)就業規則は労働協約に反してはならない

(2)労働協約に違反する労働契約の部分は無効とし、無効となった部分は労働協約の定めによる(労働契約に定めがない部分も同様)。


解約

有効期間を定めない場合は、当事者の一方が解約しようとする日の90日以上前に文書で予告して解約できます。


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