改正育児介護休業法解説レポート
令和4年4月1日、同10月1日、令和5年4月1日に改正育児介護休業法が段階的に施行されます。
法改正による新制度の導入方法について、詳しく解説したマニュアルを無料提供しています。
サンプル条文や改訂例を参考に、就業規則の改訂を行ってください。
出産後も働き続けるために
育児時間
生後1年未満の乳児を育てる女性労働者は、1日に2回それぞれ少なくとも30分の育児時間を請求できます(労働基準法第67条、男性は対象にはなりません)。
2回分の育児時間を分けずに、1回にまとめて1時間取得することも可能です。
使用者が一方的に育児時間の時間帯を指定たり、勤務時間の始めまたは終わりに請求した場合に、これを与えないことは、労基法違反となります。
なお、育児時間中の賃金支払いについても、法の定めはなく、労使の話し合いにまかせられています(ILOは103号条約で、報酬の支給を求めていて、有給となっている事業所も少なくありません)。
関連事項:育児休業→
勤務時間の短縮等
法律上、事業主は3歳未満の子を養育する労働者について、労働者が希望すれば取得できる短時間勤務制度(原則、所定労働時間を1日6時間とする)を設けなければなりません。
ただし、業務の性質上、短時間勤務制度の利用が困難な業務と認められる労働者については、代替措置として、次のいずれかの措置を講じる必要があります。
- 育児休業に関する制度に準ずる措置
- フレックスタイム制度
- 勤務時間の繰り上げ・繰り下げ(時差出勤)
- 所定外労働の制限
- 社内保育施設の利用等
これらの制度は、期間を定めて雇用されている人も対象となります。
事業主の講ずべき措置一覧
事業主は、その雇用する女性労働者が健康診査等に基づく指導事項を守ることができるようにするため、その女性労働者からの各申出に対して、次のような措置を講じなければなりません。(男女雇用機会均等法第12条、13条、平9.9.25 労働省告示第105号)
時期 | 女性労働者からの 申し出 |
事業主の講ずるべき 措置 |
その他 |
---|---|---|---|
妊娠中 | 妊娠中の女性労働者から、通勤に利用する交通機関の混雑の程度が母体又は胎児の健康保持に影響があるとして、医師等により通勤緩和の指導を受けた旨の申出があった場合 | ・時差通勤 ・勤務時間の短縮 ・交通手段・通勤経路の変更 ・その他必要な措置 |
医師等による具体的な指導がない場合においても、妊娠中の女性労働者から通勤緩和の申出があったときは、担当の医師等と連絡をとり、その判断を求める等適切な対応を図る必要がある。 |
妊娠中の女性労働者から、当該女性労働者の作業等が母胎又は胎児の健康保持に影響があるとして、医師等により休憩に関する措置についての指導を受けた旨の申出があった場合 | ・休憩時間の延長 ・休憩回数の増加 ・休憩時間帯の変更 ・その他必要な措置 |
医師等による具体的な指導がない場合においても、妊娠中の女性労働者から休憩に関する措置について申出があったときは、担当の医師等と連絡をとり、その判断を求める等適切な対応を図る必要がある。 | |
妊娠中・ 出産後 |
妊娠中又は出産後の女性労働者から、健康診査等に基づき、医師等により、つわり、妊娠中毒、回復不全等の症状等に関して指導を受けた旨の申出があった場合 | 医師等の指導に基づく措置 ・作業の制限 ・勤務時間の短縮 ・休業 ・作業環境の変更 ・その他必要な措置 |
医師等による具体的な指導が不明確な場合には、担当の医師等と連絡をとり、その判断を求める等により、作業の制限、勤務時間の短縮、休業等の必要な措置を講じなければならない。 |
その他の留意事項
- 事業主は母性健康管理指導事項連絡カードの利用に努めること
- 事業主は、妊娠中又は出産後の女性労働者のプライバシーの保護に特に留意すること
仕事と子育ての両立を図る 行動計画の策定・届出 企業の義務に
厚生労働省は、少子化対策の一環で平成17年4月より施行された「次世代育成対策推進法」に基づき、従業員100人を上回る企業に対し、育児休暇の取得を従業員に促すなど子育て支援の具体策や数値目標を盛り込んだ行動計画の策定及び届出を義務づけている。(100人以下の企業は努力義務)
あわせて、一般への公表や、労働者への周知も義務とされている。
なお、この法律は、令和7年3月31日までの時限立法となっている。
次世代育成対策推進法 一般事業主行動計画のイメージ
分野 | 具体策 | 目標 |
---|---|---|
取得率向上 | ・育児休業休暇制度の改善 ・制度の周知、好事例集の配布 ・推進委員会の設置 ・負担軽減(育児費用補助等) 他 |
取得率を○○% |
両立環境整備 | ・子の看護のための休暇制度 ・子育て期間の残業時間縮減 ・短時間勤務や隔日勤務 ・在宅ワーク制度 他 |
○年度までに創設 平均○時間以内 ○年度までに創設 ○年度までに創設 |
意識改革 | ・長期休暇の取得促進 ・管理者への研修実施 |
年間平均○人以上 全管理者に実施 |
その他 | ・バリアフリーの推進 (授乳コーナーの設置、トイレの改修他) |
○年度までに実施 |
・地域社会貢献活動 (地域協議会への参加、事業所内保育施設の一般開放) |
○年度までに実施 |
「優良」社名を公表
計画期間終了後に目標を達成できない企業への罰則は設けないが、子育て支援に成果を上げた優良企業に対し、その申請に基づき「子育てサポート企業」と認定する仕組みにより、企業が対策に積極的に取り組むよう促す。
この認定を受けた企業の証が、「くるみんマーク」です。
平成27年4月からは、「プラチナくるみん」の認定基準を設け、くるみん認定を受けている企業のうち、高い水準の取り組みを行っている企業がこの認定を受けられるようになりました。
さらに、令和4年4月からは、くるみん、及びプラチナくるみんの認定基準を引き上げられ、これに伴い、新たに「トライくるみん」が創設されました。
「トライくるみん」は、旧くるみんの認定基準をクリアすることで認定が受けられます。