改正育児介護休業法解説レポート
令和4年4月1日、同10月1日、令和5年4月1日に改正育児介護休業法が段階的に施行されます。
法改正による新制度の導入方法について、詳しく解説したマニュアルを無料提供しています。
サンプル条文や改訂例を参考に、就業規則の改訂を行ってください。
介護休業とは
労働者が申し出たら使用者は拒めない
介護休業制度は、労働者が「その要介護状態にある対象家族を介護するために」とることができる休業で、平成11年4月1日から、全事業所を対象として義務化されました。
介護休業とは、要介護状態にある家族を介護するための休業です。要介護状態とは、2週間以上にわたり常時介護を必要とする状態をいいます。
事業所の規則の有無や事業主の許可を条件とすることなく、対象となる労働者が事業主に「休業申出書」を提出することによって取得することができます。
当然のことですが、男女性別にかかわらず、介護休業の取得は可能です。
ただし、有期雇用者も対象となりますが、雇用期間が1年以上であることなどの条件が必要です。
また、労使協定によって一定要件の者については除外することもできます。
有期雇用者の場合も一定の要件を充たせば取得できるようになりました(平成17.4.1施行)。
要介護家族1人につき通算93日取得できる
特別な事情がない限り対象家族1人につき通算(のべ)93日までが認められます(平成17.4.1~)。
この93日には、介護休業日に加え、勤務時間の短縮措置等を講じられた日数も合算されますから、注意が必要です。
休業は連続した期間を指定します。休業の申出は、休業を開始する2週間前までに、休業開始予定日と休業終了予定日などを示して行います。
「毎週○曜日」といった決め方は、できません(もちろん労使が法律を超えて有利な取り決めをすることは、許されます)。
対象者1人に対し再度取得できる場合
2回目の介護休業ができるのは常時介護を必要とした家族が、いったん回復したあと、再び常時介護を必要とする状態に至った場合です。3回目以降も同様です。
言い換えれば、要介護状態が続いているにもかかわらず、一度これを中断し、再度取得するということはできないことになります。
ただし、これにも例外があります。
- 例外1:
- 父親が要介護で93日間の介護休業を認められた。
その介護期間30日目に母親も要介護状態になり93日の介護休業を申請した。しかし、介護休業開始後70日後に母親が亡くなった。
当初の父親の介護休暇の申請期間は過ぎていたが、父親に限って見れば介護休業日数はまだ63日残っていた。
この場合は、父親に対する残りの介護休業ができる。介護休業日数は、対象家族ごとに計算されることになるので、父親の残日数分63日が付与される。 - 例外2:
- 父親が要介護で93日間の介護休業を認められた。その途中で産休に入り介護休業が終了した。しかし、死産等により産休の取得が必要なくなった。なおかつ、父親の介護休業期間が残っていた。
- 例外3:
- 父親が要介護で93日間の介護休業を認められた。その期間中に育児休業に入った。しかし、離婚等により、子供と同居しなくなった。なおかつ、父親の介護休業期間が残っていた。
要介護状態が回復した後、再び要介護状態になった場合に限定
例えば、家族と介護の負担を分担するため、介護休業を1ヶ月取得し、別の者がその後1ヶ月間介護し、さらに交代して1ヶ月間介護休業を取得するというやり方は、要介護状態がいったん回復したとはいえないので、できません。
介護休暇の新設
平成22年の改正により、労働者が申出ることにより、要介護状態にある家族の通院の付き添い等に対応するため、対象家族が1人であれば年5日、2人以上であれば年10日、介護休暇を取得できるようになりました。
会社が応じてくれない場合
介護休業は会社の規則が無くても取得できます。「介護休業申出書」を会社に提出してください。
会社は要件を満たした労働者の申出を拒否できませんが、休業中の勤務分担などについて会社や周囲と話し合うことも有益です。
また、会社に法律の内容を確認してもらうのがよいでしょう。
「パートは対象外だから」と会社から言われた場合は、労使協定で定められている取得対象外でないことを確認し、定められた手続きをしてください。
介護休業取得を理由とする解雇は無効
介護休業を申出たこと、または休業したことを理由に解雇その他不利益取扱をすることは法律で禁止されています(育児・介護休業法第16条)。
また、指針により、「介護休業後においては、原則として原職または原職相当職に復帰させることが多く行われているものであることに配慮すること」とあり、原職復帰が原則とされています。
不利益取扱の例
(1) | 解雇すること。 |
(2) | 期間を定めて雇用される者について、契約の更新をしないこと。 |
(3) | あらかじめ契約の更新回数の上限が明示されている場合に、当該回数を引き下げること。 |
(4) | 退職又は正社員をパートタイム労働者等の非正社員とするような労働契約内容の変更を強要すること。 |
(5) | 自宅待機を命ずること。 |
(6) | 降格させること。 |
(7) | 減給をし、又は賞与等において不利益な算定を行うこと。 |
(8) | 不利益な配置の変更を行うこと。 |
(9) | 就業環境を害すること。 |
有給か無給かは、会社の規則による
なお、休業期間中の賃金について法律上、有給・無給について特に定めがありません。
介護休業を取得した期間は、年次有給休暇付与のための出勤率計算では出勤したものとみなされます。
有給休暇等への影響
労働基準法に基づく年次有給休暇の権利発生に係る出勤率の算定に当たっては、介護休業は出勤したものと見なされなければなりません(労働基準法第39条第7項)