育児休業後の賃金等


労働省指針は、休業取得者を不利益に取り扱ってはいけない、と定めています。

通達によれば、「不利益に取り扱う」とは、「賃金の大幅な減額、長期間の昇給停止、著しい精神的、経済的負担を伴うと考えられる配置転換等」と、列挙されています。

長期間の育児休業後、明らかに労働能力が低下したなどの特別な事情がない限り、労働条件の引き下げは認められません。

日本シェーリング事件  最高裁 平成1.12.14、平成元.12.24

産前産後休業、生理休暇、育児時間など労基法に定められた権利行使を不就労期間に含めて稼働率を算定し、稼働率80%以下の従業員には賃上げは行わないという労働協約の効力が争われた例。

「労基法又は労組法上の権利を行使することにより経済的利益を得られない」とすることによって権利の行使を抑制し、労働者の各権利を保障した各法の趣旨を実質的に失わせるものというべきであるから、公序に反し無効である(労働者勝訴)。

東朋学園事件  東京高裁 平成13.4.17

一時金は稼働率90%以上の者と対象とする制度で、産後休業、育児休業法上の勤務時間短縮が欠勤として扱われ一時金が不支給となった事案について、「産前産後休業の期間、勤務時間短縮措置による育児時間のように、法により権利、利益として保障されるものについては、・・・労働者の責めに帰すべき事由による場合と同視することはできない・・・本件90%条項を適用することにより、法が権利、利益として保障する趣旨を損なう場合には、これを損なう限度で本件90%条項の合理性を肯定することはできない」とし、産前産後休業の日数、短縮した勤務時間数を、一時金算定にあたり欠勤扱いすることは労基法65条、旧育児休業法10条、労基法67条の趣旨に反し、公序良俗違反で無効と判示した。

育休取ったら減給7万円余 派遣社員が支払い求め提訴へ

育児休業を取った後、本人の同意なく身分を変更され、月給も約7万7,000円減額されたのは違法だとして、派遣社員の女性(34)が12日、派遣元の会社を相手取り、地位の確認と差額賃金など約137万円の支払いを求めて、さいたま地裁に提訴する。

代理人弁護士によると、派遣社員が育休明けの賃金カットに異議を唱えて裁判で争うのは初めてという。

訴状などによると、この女性は6年前から埼玉県和光市の人材派遣会社に雇用され、「雇用契約に期間の定めのない」常用型派遣社員として製薬企業などに派遣された。

昨年夏まで出産・育児休業を取ったところ、就業先が見つからないという理由で3ヶ月間休職を命じられたうえ、同じ製薬企業の別部署に配属になり、約31万円あった賃金は約23万3,000円になった。また、契約期間の定められた労働契約書も送られてきた。

派遣会社の賃金規程に降給の定めはない。また、社内の育児介護休業制度の運用規則では育休後の給与が育休前の給与を下回らないことが定められているという。

育児・介護休業法も昨年から規制を強め、育休を理由にした減給、降格など不利益変更を禁止している。

提訴について同社は「賃金が減ったのは、配属先が変わり派遣料金が下がったことが理由だ」と話している。

同社は理化学研究所のOBらが経営し、公的研究所や製薬企業などに人材派遣や研究支援をしている。

(asahi.com 2002.7.11)


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