改正育児介護休業法解説レポート

令和4年4月1日、同10月1日、令和5年4月1日に改正育児介護休業法が段階的に施行されます。
法改正による新制度の導入方法について、詳しく解説したマニュアルを無料提供しています。
サンプル条文や改訂例を参考に、就業規則の改訂を行ってください。

出産手当金

産前産後の98日(多胎妊娠だと154日)分の給料の3分の2を保障

正確には、出産日(遅れた場合は出産予定日)以前42日(多胎妊娠の場合は98日)前を起点とした日から、出産後56日までの内、会社を休んだ期間が対象となります。

受給条件

出産時、在職中であることです。

そのため、退職者や任意継続被保険者は対象外です(ただし、退職前に出産手当金を受給していた場合には、資格喪失後の継続給付を受けることは可能です)。

妊娠85日(12週)以上経過していて、出産のために会社を休み、その間給料が出ない場合、直近1年間の標準報酬月額の平均から算出した標準報酬日額の3分の2が出産手当金として支給されます。

給料が出る場合は、給料の額を控除した額が支給されます。

ただし、既述の通り、会社を休んでいることが前提のため、1日の一部でも出勤し、給料が出る場合は、その日については支給の対象とはなりません。


国民健康保険出は任意給付

この制度は、出産のために仕事を休み、給料がもらえないときに休業中の生活を保障するという目的で健康保険から支給されるものなので、妊婦さん自身が健康保険の被保険者でないと、貰うことができません。

つまり、被扶養者に出産手当金は支給されません。

また、国民健康保険では、出産手当金は任意給付のため、制度があるかどうかは、市区町村や国民健康保険組合等により異なります。


会社から給料が出る場合

給付額は、支給開始日以前の継続した12ヶ月間の各月の標準報酬月額÷30(日)×3分の2ですが、会社から給料が一部支給されている場合は、この支給開始日以前の継続した12ヶ月間の各月の標準報酬月額÷30(日)×3分の2の額から支給された額を控除した金額になります。

また、有給休暇の取得日は給料が100%支給されている場合には、支給対象となりません。


出産が予定日より遅れたとき

出産手当金は、出産の"予定日"を基準として42日前を開始日とし、"出産日"を基準として後ろ56日までが支給対象です。

実際に出産した日が予定日より遅れた場合、出産予定日から実際の出産日までの期間は、この範囲に含まれるので、その分も出産手当金が出ることになります。


時効

出産手当金の時効は2年です。(健康保険法第193条)

起算日は労務不能であった日の翌日からです。


継続加入かどうかに要注意

資格喪失(退職)後の出産手当金の受給要件でもある、被保険者期間が継続して1年以上というのは、必ずしも同じ会社である必要はなく、転職した場合でも、退職した翌日に次の会社へ就職(社会保険加入)した場合等、複数の会社であっても、1日も空白期間がなければ通算可能です(もちろん、国民健康保険はだめです)。

1日でも空白があれば通算できないので、念のため、次のことにも十分注意して下さい。

会社によっては、たとえば、退職日が日曜日(公休日)だったりすると、土曜日を退職日と誤解釈して手続してしまうことがあります。

また、退職日が、月末だと、保険料が1ヶ月余分になると考えて、その前日を退職日にしてしまうことがあります。

また、入社してもすぐには保険に入れない会社があります。

これらはいずれも、誤った扱いですが、現実にはよくあるケースです。

このような場合は、空白期間ができてしまうため通算されません。

これに対し、在職中であれば、過去の加入期間には関係なく、在職している限り、一般と同様の給付が受けられます。

たとえ、1週間前に入社したばかりで出産しても、在職期間中は、何らの差別もありません。(現実には、出産直前に入社する人はいないでしょうが)

また、1年以上継続加入していた女性が、出産退職した場合は、退職後も引き続き、在職と同様に給付が受けられます。

逆に、1年以上継続して加入していなかった女性が、在職中に出産し、退職した場合は、在職中は給付を受けられますが、退職すると、即打ちきりになります。


問い合わせは加入していた健保へ

自分で手続きする場合は、加入していた協会けんぽや、健保組合へ問い合わせてみてください。

ただし、申請期間に退職日が含まれる場合には、会社の証明が必要となりますので、退職された会社に問い合わせいただいた方がよいです。

金額は、支給開始日以前の継続した12ヶ月間の標準報酬日額の3分の2を98日分支給されます。

式にすると、支給開始日以前の継続した12ヶ月間の標準報酬日額の3分の2× 98です。

たとえば、給料が支給開始日以前の継続した12ヶ月間の給料が24万円の人では・・・

240,000円/30日×2/3×98日=約523,000円

この98日分というは、産前6週(42日)と産後8週(56日)を足した日数で、分娩当日は産前の42日の方に含まれます。

分娩日が予定日よりも遅れた場合は、その日数も産前の日数として加算されていきます。

逆に、分娩日が予定日よりも早まった場合は、分娩日を基点として、それ以前の42日分が産前分として支給されます(給料をもらっていた日は除くので、有給休暇の日は原則含まれない) 。

仕事を辞めない人で、産休・育休中に給与保障がある場合はもらえません。

ただし、給与保障額が標準報酬日額の3分の2に満たない場合は、その差額を受け取ることができます。


家族出産一時金との競合

健康保険の扶養には、見込み年収130万円未満の要件があることから、資格喪失後の出産手当金を受け取ることが可能となった段階(産前6週)でその額が一定額(130万円/360日=3,611円/日)を超えると、夫の扶養には入れません。

上記のような場合には、資格喪失後の出産育児一時金をご検討ください。

資格喪失後の出産育児一時金支給要件は、被保険者期間が継続して1年以上であることに加え、資格喪失日から6ヶ月以内の出産であることです。

仮に夫の扶養に入れた場合には、夫の健保からの「家族出産育児一時金」か、自分の前職で加入していた健保の「資格喪失後の出産育児一時金」の どちらかを選択して受給することになり、二重に受給はできません。


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