個人情報の種類

雇用管理指針解説(案)にみる個人情報(法第2条1項)

「雇用管理に関する個人情報」に該当する事例

(1) 労働者の氏名
(2) 生年月日、連絡先(住所、居所、電話番号、メールアドレス等)、会社における職位または所属に関する情報について、それらと労働者等の氏名を組み合わせた情報
(3) ビデオ等に記録された映像・音声情報のうち特定の労働者等が識別できるもの
(4) 特定の労働者が識別できるメールアドレス情報(氏名および所属する組織があわせて識別できるメールアドレス等)
(5) 特定の労働者等を識別できる情報が記述されていなくても、周知の情報を補って認識することにより特定の労働者等を識別できる情報
(6) 人事考課情報等の雇用管理に関する情報のうち、特定の労働者等を識別できる情報
(7) 職員録等で公にされている情報(労働者等の氏名等)
(8) 労働者等の家族関係に関する情報およびその家族についての個人情報

「雇用管理に関する個人情報」に該当しない事例

(1) 株主情報、顧客情報
(2) 法人等の団体そのものに関する情報(団体情報)
(3) 特定の労働者を識別できないメールアドレス情報(氏名および所属する組織等が特定できないメールアドレス等。ただし、他の情報と容易に照合することによって特定の労働者等を識別できる場合を除く。)
(4) 特定の労働者等を識別することができない統計情報

社員の情報も個人情報

個人情報は外部のものばかりではなく、社員情報も該当します。

したがって企業は、社員数にかかわらず、社員情報のみでも個人情報取扱事業者になります。

個人であっても、社員の個人情報を持っていれば該当します。

社員情報の中には、病歴、収入、家族関係など機微な個人情報も含まれることがあるため、企業では「当社社員の個人情報の取扱同意書」等により、社員の同意を改めて取得することが必要です。

採用時の提出書類

会社は、所得税の徴収や、社会保険の加入のために、社員の氏名・住所などの基本的な情報が必要となります。

この場合も、プライバシー保護の観点から、会社側は提出書類を目的外の利用に供してはならない、といえます。ましてや、入社時に「戸籍謄本」などの提出を求めるのは問題です。

住民票記載事項証明書の提出を求めるのが適当と考えられます。


法施行により雇用管理面で問題が生じるケース

出向・転籍

事前に出向先等に従業員のデータを提示し、受け入れの可否についてすりあわせをするのが一般的ですが、本人の承諾がなければ、この話し合いに入れなくなります。

希望退職者の再就職あっせんの際にも、同じ問題が生じます。

経済団体等は、この条項について「業務実態を無視している」と問題提起しています。

派遣労働

派遣労働者を受け入れ、会社の業務を行わせる際に、企業が保有する個人情報に接触する可能性があります(ダイレクトメール作成にあたっての顧客情報など)。

この際、経済産業省のガイドラインは、個人情報保護のため雇用締結時及び委託契約時に「非開示契約の締結」を結ぶことを提言していますが、直接派遣労働者とこのような契約を結んで派遣契約終了後も派遣労働者を縛ることが偽装請負と疑われないか、という問題を内在しています。

採用記録

不採用者の履歴書などについても、その時点で、返却・破棄または削除などの適切かつ確実に処理することが求められています。

会社合併

会社の合併や分社化、営業譲渡などによる事業継承のために個人データが移転される場合は、第三者への提供には該当しないとされています。

ただし、事業継承のための契約締結前の交渉段階で、自社の個人データを相手会社に提供する場合は、第三者提供となり、注意を要します。


個人情報に当たらないもの

個人を特定できない情報は個人情報には当たりません。

例えば「東京都在住、会社員、30歳」なら「どこの誰」とはわからないので、この法律にいう個人情報には該当しません。

また、会社名と住所などは、個人情報ではありません。

逆に、「○○株式会社 取締役社長(平成○年○月○日現在)」といったように、特定の会社名、特定の役職、特定の日時の3点がそろえば、名前がなくとも個人を特定することができるので、個人情報となります。


個人情報とされないもの

電話帳のように、情報が他人の制作によるもので、新たな加工を加えていないものは、個人情報ではありますが、保有する個人情報にはなりません。

一時的に顧客から預かっている情報も含まれないものと考えられます(手を加えていない場合に限ります)。

個人情報保護法が「直撃」 社内報作り「困った」

4月から完全施行された個人情報保護法が企業の社内報に変化を及ぼしている。

従業員の結婚や子女の誕生を知らせる欄や、新人紹介コーナーなどに個人情報があふれているためだ。

多くの企業は本人の同意を得て掲載したが、中には企画自体を取りやめたり、本人の同意を得られず編集が困難になったりする例もある。

「個人情報がないと味気ない」という声との兼ね合いは、なかなか難しい。

ある大手自動車メーカーの関連会社。

社内報の担当者は4月号恒例の新入社員紹介企画で、入社予定者約150人に生年月日や出身校、出身地や趣味などについてアンケートした。ただ今回は、こんな一文を加えた。

「個人情報につき、回答は任意です」

ほぼ全員が全項目に記入したが、1人だけ、個人情報について回答しなかった。

担当者は「やむを得ない」と考えたが、この社員の配属先は違った。「我々の現場はチームワークが基本。1人のわがままを最初から許すと、今後もチームワークが保てなくなる」。

重労働で常に危険と隣り合わせの部署。「家族状況や趣味など、お互いを知り合ってこそ、信頼関係が生まれる」と、これまで誰もが信じていたという。

思わぬ反響に、社内報担当者が再考を促すと、この新入社員は「深く考えずに書かなかっただけ。載せるのは問題ないです」。結局、例年通りの体裁で配られた。

石油元売り大手のコスモ石油は、今年の新年号から、12年ごとに各社員の近況を紹介する「年男・年女」と称したコーナーを中止した。

人事部が所有する従業員データをもとに、生年月日などを公開していた。社内だけでなくOBや取引先などにも社内報を配っていた。

これが、法が規制する「本人の同意なしに第三者に個人情報を提供する」行為にあたると判断したためだ。

結婚記念日や、女性の旧姓が個人情報にあたるとして、結婚した社員を祝福するコーナーもやめた。

(asahi.com 2005.5.13)

従業員に誓約書要求相次ぐ 企業情報漏えい防止理由に

企業が個人情報保護法の施行を理由に、企業情報の漏えいを防止するとして、個人情報を扱っていない従業員からも誓約書や同意書を取るケースが相次いでいることが19日、連合に寄せられた相談で分かった。

連合は、労働組合などに注意を呼び掛ける。

同意書の項目には、個人情報と関係がない企業の財務情報などが含まれているほか、漏えいした場合、従業員に損害賠償を求める記述もあり、労働基準法の「あらかじめ損害賠償を決めた契約は無効とする」との条文に違反する可能性も高い。

経済産業省は「目的や情報内容があいまい。保護法に便乗しているのではないか」とし、厚生労働省は「法律に反する項目もあり、関係省庁と連携し指摘していきたい」としている。

(共同通信 2005.5.19)


ページの先頭へ