経歴詐称の類型

学歴詐称

判例は、最終学歴を高く詐称する場合も低く詐称する場合も、労働力の評価、選択、位置づけに直接にかかわる重大な経歴として判断し、当然に懲戒解雇事由にあたるとしています。

なお、「学歴不問」の場合には、使用者に学歴如何についての関心がないので、原則として真実告知義務違反を問われることはありません。

日本精線事件 大阪地裁 昭和50.10.31

本人の本来の学歴・経歴が採用時に判明していたならば、従業員として採用しなかったであろうと認められる場合には、解雇が有効であるとされた。

同主旨、日本鋼管事件(横浜地裁 昭和52.6.14)

上記とは異なり、解雇を無効とした判例もあります。

三愛作業所事件 名古屋高裁 昭和55.12.4

会社の採用条件が明示されていなかったこと、学歴は二次的な位置づけとされていたこと、などから、経歴詐称自体は信義則に反するものであるが、それのみを理由に解雇することは解雇権の濫用に当たるので、解雇は無効であるとされた。


職歴詐称

職歴の詐称は、その一部を詐称・秘匿するものから、最終職歴やその全部または長期かつ最も重要な部分を秘匿するものまでさまざまなものがあります。

裁判所は、一般的には唯一または重要な部分を占める職歴詐称については厳しい判断をしています。


犯罪歴詐称

裁判所は、労働者は採用面接にあたり執行猶予期間経過後の刑罰歴については、申告すべき義務があるとしています。(丸住製紙事件 高松高裁 昭和46.2.25)

しかし、同期間満了後あるいは刑の執行後長期間経過している場合や、少年時の非行歴については、特に申告する義務はないものとしています。

マルヤタクシー事件 仙台地裁 昭和60.9.19

犯罪歴については、「履歴書の賞罰欄にいう罰とは一般に確定した有罪判決(いわゆる「前科」)を意味するから、使用者から格別の言及がない限り、履歴書の賞罰欄に起訴猶予事案等の犯罪歴(いわゆる「前歴」)まで記載すべき義務はない。

豊橋総合自動車学校事件 名古屋地裁 昭和56.7.10

自動車学校のスクールバス運転手が、同校に採用されるに際して、窃盗罪で懲役1年6月執行猶予3年の刑に処せられ、ついで窃盗罪で懲役8月の刑に処せられるとともに当該執行猶予を取り消され各刑に服した旨の刑罰暦を秘匿したことを理由とする懲戒解雇につき、当該犯罪歴は採用から18年前のものであり、かつ、秘匿についての作為性もないとして、これを理由に懲戒解雇処分とすることは著しく過酷に失し、社会観念上妥当とは言えないとした。


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