身元保証に関する法律

身元保証に関する法律

身元保証に関する法律によると、身元保証人の責任の概略は以下の通りです。

1 身元保証契約

身元保証契約とは、「引受、保証そのた名称の如何を問わず・・・被用者の行為により使用者の受けた損害を賠償することを約する」契約をいいます。(法1条)

2 存続期間

1) 保証期間は特約がなければ、契約成立時から3年間、商工見習い者については5年間とする。(法1条)

2) 特約を定めたときでも、5年を超えることはできない。これより長い期間を定めたときには、5年間に短縮される。(法2条1項)

3) 以上いずれの場合にも更新することができるが、その期間は5年を超えることができない。(法2条2項)

4) 労働契約に期間があれば、保証の期間も原則としてそれによるが、労働契約が更新されても当然には保証契約は更新されない。

3 身元保証人の解除権

1) 使用者は、次の場合には遅滞なく身元保証人に通知しなければならない。

  1. 被用者に業務上不適任又は不誠実な事跡があって、このため身元保証人の責任を惹起するおそれがあることを知ったとき。
  2. 被用者の任務又は任地を変更し、このために身元保証人の責任を加重し、又はその監督を困難ならしめたとき。身元保証人は上の通知を受けたときは、将来に向かって契約を解除しうる。(法4条前段)

2) 使用者が通知義務を遅滞し、身元保証人が解約できなかった場合でも、身元保証人は当然にその責任を免れるわけではない。ただ、身元保証人の損害賠償責任及びその金額を斟酌しうる。逆に身元保証人が通知を受けたにもかかわらず、解除しなかったとしても、保証責任の限度を定める上で、不利益に斟酌すべきではない。

3) 身元保証人は、1.・2.の事実を知りえたときには、保証契約を解除できる。(法4条後段)

4) 身元保証人の解約権は、4条前段の場合に限定されない。身元保証人の責任を限定しようという法の趣旨からいえば、次のようなものが考えられる。

  1. 被用者本人の資産状態の著しい悪化
  2. 身元保証人の資産状態の著しい悪化
  3. 身元保証人の住所の変更
  4. 被用者本人と身元保証人との間の身分関係・情誼関係の変化、など

4 保証責任の限度

裁判所が、身元保証人の責任及びその金額を、一切の事情を考慮して合理的な額を決定すべきものとしている。(法5条)
法律が掲げるのは次の4つである。

  1. 被用者の監督に関する使用者の過失の有無
  2. 身元保証人が身元保証をなすに至った事由
  3. 身元保証をなすにあたり用いた注意の程度
  4. 被用者の任務又は身上の変化
  5. 損害が被用者の故意に基づかないこと
  6. 損害が特殊なものであること
  7. 被用者が信用保険に加入していること
  8. 使用者の通知義務違反

5 身元保証契約の相続性

身元保証人の責任が、被用者の不正行為などによりすでに発生しているときは、債務は相続される。

これに反し、身元保証債務が具体的に発生する以前は、保証人の責任は一身専属的なものであり、相続されない。

6 本法の強行性

身元保証に関する法律に反する契約で、身元保証人に不利益なものは、すべて無効とされる。(法6条)


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