採用に関する行政解釈

労働条件の明示

採用内定を労働契約の成立とすると、労基法上の労働条件明示義務(労基法第15条)は採用内定の段階で履行しなければなりません(労働条件の明示義務)。


採用内定取り消しに関する行政解釈

採用内定の法律的性質

採用内定によって労働契約が成立しているか否かは、「具体的な個々の事情、特に採用通知の文言、当該会社の労働協約、就業規則等の採用手続に関する定め及び従来の取扱い慣例による採用通知の意味等について総合的に判断して決定すべきもの」(昭和27.5.27 基監発第15号)ですが、「新規学卒者のいわゆる採用内定については、遅くとも企業が採用内定通知を発し、学生から入社誓約書またはこれに類するものを受領した時点において、過去の慣例上、定期採用の新規学卒者の入社時期が一定の時期に固定していない場合等の例外的場合を除いて、一般的には、当該企業の入社時期(4月1日である場合が多いであろう)を就労の始期とし、一定の事由による解約権を留保した労働契約が成立したとみられる場合が多い」(昭和50.3.24 監督課長・企画課長内翰)。


採用内定取り消しの規制

「新規学校卒業者の採用内定取消等に係る事前通知制度」(職業安定法施行規則35条1~4項)

新規学卒者に対し卒業後労働させ、賃金を支払うことを約束した者が就業開始までの 期間(「内定期間」)にこれを取り消したり、内定期間を延長しようとするときは、予め所轄の公共職業安定所長または関係の施設(学校)の長にその旨を通知するものとする。

公共職業安定所長は、この通知を受けて速やかにその回避について指導を行う。

『新規学校卒業者の採用に関する指針』(平成5.6.24 発職第134号)

「4 採用内定取消し等の防止」

新規学校卒業者に対しての事業主の一方的な都合による採用内定取消し及び入職時期の繰下げは、その円滑な就職を妨げるものであり、特に、採用内定取消しについては対象となった学生及び生徒本人並びに家族に計り知れないほどの打撃と失望を与えるとともに、社会全体に対しても大きな不安を与えるものであり、決してあってはならない重大な問題です。

このため、事業主は、次の事項について十分考慮すべきです。

  1. 事業主は、採用内定を取り消さないものとする。
  2. 事業主は、採用内定取消しを防止するため、最大限の経営努力を行う等あらゆる手段を講ずるものとする。
    なお、採用内定の時点で労働契約が成立したと見られる場合には、採用内定取消しは労働契約の解除に相当し、解除の場合と同様、合理的理由がない場合には取消しが無効とされることについて、事業主は十分に留意するものとする。
  3. 事業主は、やむを得ない事情により、どうしても採用内定取消し及び入職時期繰下げを検討しなければならない場合には、あらかじめ公共職業安定所に通知するとともに、公共職業安定所の指導を尊重するものとする。
    この場合、解雇予告について定めた労働基準法第20条及び休業手当について定めた同法第26条等関係法令に抵触することがないよう十分留意するものとする。

なお、事業主は、採用内定取消しの対象となった学生・生徒の就職先の確保について最大限の努力を行うとともに、採用内定取消し及び入職時期繰下げを受けた学生・生徒からの補償等の要求には誠意を持って対応するものとする。

新規学校卒業者の採用内定取消し、入職時期繰下げ等の防止に向けて

新規学校卒業者の採用にあたって考慮すべき事項

  • 採用内定の取消について
  • 入職時期の繰下げについて
  • 一方的な労働条件の変更について
  • 内定辞退の強要について
  • 事業主への支援策について

職業安定法施行規則の改正(企業名公表制度の施行等)について(平成21.1.19)

採用内定取消しの防止のための取組を強化するため、職業安定法施行規則の改正等を行い、ハローワークによる内定取消し事案の一元的把握、事業主がハローワークに通知すべき事項の明確化を図ることにより、企業に対する指導など内定取消し事案への迅速な対応を図るとともに、採用内定取消しの内容が厚生労働大臣の定める場合に該当するときは、学生生徒等の適切な職業選択に資するため、その内容を公表することができることとしました。

1. ハローワークによる内定取消事案の一元的把握

新規学校卒業者の採用内定取消を行おうとする事業主は、あらかじめハローワーク及び施設の長(注)に通知することが必要となります。(職業安定法施行規則第35条第2項)

(注) 職業安定法第27条に基づきハローワークの業務の一部を分担する学校の長又は同法第33条の2に基づき無料の職業紹介事業を行う学校等の長

2. 事業主がハローワーク等に通知すべき事項の明確化

新規学校卒業者の採用内定取消しを行おうとする事業主は、職業安定局長が定める様式(注)により、ハローワーク及び施設の長に通知することが必要となります。(職業安定法施行規則第35条第2項)

(注) 所定の様式には、内定取消し者数、内定取消しを行わなければならない理由、内定取消しの回避のために検討された事項、対象学生等への説明状況、対象学生等に対する支援の内容等を記載する必要があります。

3. 採用内定取消を行った企業名の公表

厚生労働大臣は、採用内定取消しの内容が、厚生労働大臣が定める場合に該当するときは、学生生徒等の適切な職業選択に資するよう学生生徒等に情報提供するため、その内容を公表することができることとなります。(職業安定法施行規則第17条の4)

【厚生労働大臣が定める場合】

(職業安定法施行規則第17条の4第1項の規定に基づき厚生労働大臣が定める場合(平成21年厚生労働省告示第5号))

採用内定取消しの内容が、次のいずれかに該当する場合。(ただし、倒産により翌年度の新規学校卒業者の募集・採用が行われないことが確実な場合を除く。)

  1. 2年度以上連続して行われたもの
  2. 同一年度内において10名以上の者に対して行われたもの
    (内定取消の対象となった新規学校卒業者の安定した雇用を確保するための措置を講じ、これらの者の安定した雇用を速やかに確保した場合を除く。)
  3. 生産量その他事業活動を示す最近の指標、雇用者数その他雇用量を示す最近の指標等にかんがみ、事業活動の縮小を余儀なくされているものとは明らかに認められないときに、行われたもの
  4. 次のいずれかに該当する事実が確認されたもの
    • 内定取消の対象となった新規学校卒業者に対して、内定取消を行わざるを得ない理由について十分な説明を行わなかったとき
    • 内定取消の対象となった新規学校卒業者の就職先の確保に向けた支援を行わなかったとき

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