身分変更に伴う試用期間
パートを正社員に身分切替したときなど
試用期間を設けるか否か、それ自体を律する法律規定はありませんから、試用期間の設定は、当事者に任されているともいえますが、試用期間は本採用よりも身分が不安定であることから、このことを理由として解雇などを行うと、権利濫用とされる可能性があります。
例えば長年勤続してきたパートを、その功績を評価して正社員に身分切替するような場合に最初に試用期間を設けたとすると、従業員としての適性を判断するという「試用期間」そのものの必要目的との間で矛盾が生じます。
ヒノヤタクシー(第二)事件 盛岡地裁 平成1.8.16
労働組合との協定に基づき、嘱託採用していたタクシー運転手を正社員に転換した際、同意の下に1ヶ月の試用期間を設けた。
裁判所は、雇用が継続中に試用期間を設けることは、試用という文言とそれ自体の趣旨から、原則として許されないものと解すべきである。このことは、労働者の合意があっても同様である、とした。
また、タクシー運転手として雇用されていたものが一般の事務員となり、あるいはその逆の場合のように、新たに雇用したと同視できるような例外的な場合に限り、雇用途中の試用期間の設定が許されるものというべきである、との判断も示している。