ケースごとの取り扱い

管理職(管理監督者)や上級管理職と判断される場合

長時間の時間外労働や休日労働に対し、明らかにそれではまかなえない程度の定額の管理手当しか払っていない

管理職(管理監督者)であれば、時間外や休日労働の規定が適用されませんので、これにどう対応するかは使用者に任されます。

よって、直ちに許されないとは言い切れません。

時間の運用が自身に任されている管理職(管理監督者)は、運用方法によっては時間外や休日労働の時間を少なくすることも可能だからです。

ただし、前記基準によれば、管理職(管理監督者)にはそれに相応しい待遇が求められますので、基本給や管理職手当がカットされることにより、一般従業員より給料額が低くなってしまうような場合は、管理職(管理監督者)としての要件を満たしていないといえます。

なお、深夜業にかかる割増手当については管理職(管理監督者)であっても適用になりますので、労働した時間分の支払いを求められることは当然です。

経営不振を理由に基本給や管理職手当がカットしたとき

不利益変更ですから、相当の理由が必要であり、一方的なカットは許されないと解すべきです。

経営状況を示し、やむを得ない措置であることを説明して各人の了解を得ることが重要です。

労働組合に加入して支援を受けたい場合

労組法上の上級管理職でない場合は、管理職(管理監督者)であっても、労働組合に加入しても労組法上の問題は生じません。

ただ、その組合が組合員資格を管理職(管理監督者)に認めているかの問題は残ります。

繰り返しますが、上級管理職であっても同時に労働者であることは、これまでに示したとおりです。

法律は、管理される側(一般労働者)と管理する側(管理職)とが、同時に加入するとそれぞれの利害が対立することになるので、両者の混在している団体を法律上の労働組合として認めていないにすぎません。

組合が組合員資格を上級管理職に認めていないのならば、上級管理職だけの組合に加入することになるでしょう。


管理職(管理監督者)や上級管理者とは判断されない場合

時間外、休日、深夜労働の分の支払いの請求

この場合は、請求されます。既労働分で、管理職として支給されていた分に不足する額は、遡及して支払を求められることもあります。

ただし、賃金の請求権の時効は2年です。

企業内の労働組合への加入

上級管理職でなければ、法律上一般従業員と同一の労働組合に加入することは可能ですが、どこまでを組合員とするか、つまり組合員の範囲ですが、それはその労働組合の意思に任されます。

法律上非管理職と判断されたとしても、労働組合の規約や会社との労働協約で非組合員とされていれば、当然の権利として当該組合に加入することはできません。

法律上は上級管理職でないと判断されても会社が管理職だと言い張る場合

実際にも問題になっている問題で、非常に対応の難しい例だと思われます。

就業規則上の根拠、権限や賃金条件などによって判断は異なってきます。

管理監督者に当たるとされた例

徳州会時間 大阪地裁 昭和62.3.31

人事第2課長(本部)の時間外・休日・割増賃金の支払い義務の存否について争われた事案。

医療法人の人事第2課長について、看護婦の採否の決定、配置等労務管理等について経営者と一体的な立場にあり、タイムカードの打刻義務はあるもののせいぜい拘束時間の長さを示す程度のものであり、実際の労働時間は自由裁量に任され厳格な制限を受けておらず、責任手当、特別調整手当が支給されていること等からすると管理監督者に該当し、したがって、割増賃金の支払義務はないとした。

バルシングオー事件 東京地裁 平成9.1.28

社長の下に取締役を配置し、その下に経営企画室を置き、その下に各事業部門があった条件下で、経営企画室の構成員として経営意思決定をするMD(マネージメント・ディシジョン)及びその支援をするMDSS(マネージメント・ディシジョン・サポート・スタッフ)が置かれ、各事業部門の最高責任者としてマネージャーが置かれていた場合に、MDSS及びマネージャーの職にあった者は基本給以外に管理職に支払われる特別の手当が支払われ、労務管理上の指揮監督権を有し、経営者と一体的立場にあると認められるので、出退勤管理がなされていたとしても、労基法41条2号の管理監督者である。


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