試用期間中の労働保険・社会保険

労働保険・社会保険の取り扱い

試用期間中といえども、社会保険の強制適用事業所に雇用されていれば当然に被保険者となります。

採用した労働者がすぐに退職するとか、試用期間中に労働者が退職・解雇した場合に手続きが煩雑だとかいった理由で、試用期間中の労働者の労働・社会保険への加入を認めない使用者も少なくありません。

しかし、試用期間中の労働契約は、本採用後の労働契約と同一ですので、採用したらすぐに労働・社会保険へ加入しなければなりません。

労働保険については、入社の時に遡って加入することもできます(一部除外規定あり)。

関係事項:失業給付→、労災保険

社会保険は、一般に遡及加入を認めていません(一部除外規定あり)。

もし労働・社会保険に加入しなかったことによって、労働者に損害が発生したときは、損害賠償の請求ができると考えられます。


年休などの取得起算は、試用期間開始から

また、試用期間中の法的関係は労働契約であることに変わりがなく、本採用後の労働契約と同一の契約であるとされています。

したがって、有給休暇退職金等の権利取得の要件である継続勤務や勤続年数の起算点について、それが試用期間中であるか否かを問わず、入社日や就労開始日が基準なります。

「研修医は労働者」 関西医大に賠償命令 大阪地裁支部

大学病院が研修医を労働者扱いせず、共済制度に加入させなかったり、最低賃金を下回る報酬しか支給しなかったりしたのは違法だとして、研修中に死亡した医師の両親が学校法人関西医科大学(大阪府守口市)に損害賠償などを求めた訴訟の判決が29日、大阪地裁堺支部であった。

中路義彦裁判長は「研修医は指導医の命令に従って診察や治療をしており、労働者にあたる」と述べ、大学側に遺族共済年金や未払い賃金に相当する総額約916万円の支払いを命じた。

あいまいな身分のまま安い手当で研修医を長時間働かせる医療現場の実態は、医療事故の背景としても問題視されている。厚生労働省によると、研修医は全国で約1万3,000人(99年度)おり、労働者と認めた司法判断は「おそらく初めて」といい、他の医療現場にも影響を与えそうだ。

訴えていたのは、98年8月半ばに自宅で急性心筋こうそくで倒れ、急死した関西医科大学付属病院の研修医・森大仁(ひろひと)さん(当時26)の両親。

判決によると、森さんは98年3月に同大学を卒業し、6月1日から付属病院の耳鼻咽喉科の臨床研修医になった。

亡くなるまでの2ヶ月半の間、平日は午前7時30分から午後7時まで指導医の診察の補助や点滴をし、病院を出るのは午後10時ごろだった。

土曜や日曜日も朝から出勤するなど終日休んだのは6日間だけだった。

この間、大学側は森さんに月額6万円の「奨学金」を支給し、私立学校教職員共済制度への加入手続きはとらなかった。

判決は、森さんが指導医の指示を拒む自由を事実上与えられておらず、平日だけでなく土曜や日曜も拘束されて入院患者の採血や点滴などをしていた事実を指摘。

「自発的な研修の部分もあるが、全体としては他人の指揮命令下に医療業務に従事する労働者だった」と認定。

「研修医は自分の意思で教育研修を受けており、労働者にはあたらない」とする大学側の主張を退けた。

そのうえで、森さんを労働者の重要な福祉制度である私学共済に加入させていれば受け取ることができたはずの遺族共済年金や、最低賃金との差額分に相当する金額の支払いを大学側に命じた。

(asahi.com 2001.8.29)


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