試用期間の期限の取扱い

試用期間の長さは

試用期間は、通常3ヶ月から6ヶ月の間、基礎的な教育訓練を行うと共に従業員としての適格性を判断するために設けられる期間として設定されています。

労働者の立場から見れば不安定な期間であるため、試用期間には「必ず期間の定め」をする必要があります。

その長さについて、法律上の制限はないものの、あまり長期にわたる場合は、公序良俗(民法第90条)違反とされることがあります。

労基法上、労働契約は1年が限度と定めていることから考えて、1年を超える試用期間の設定は現実的ではありません。

ブラザー工業事件 名古屋地裁 昭和59.3.23

試用労働者は不安定な地位におかれているから、その労働能力や勤務態度等についての価値判断をおこなうのに必要な合理的範囲を超えた長期の試用期間は公序良俗に反し無効である。

大阪読売新聞社事件 大阪高裁 昭和45.7.10

就業規則に試用期間は原則として1年で、延長できる旨の定めがあった事案について、延長が許されるのは、試用期間満了時において、社員として不適格と認められるけれども、本人の今後の態度によっては登用してもよいとして試用の状態を続けていくとき、または、即時不適格と断定することはできないが適格性に疑問があり、本採用することがためらわれる相当な事由があるため、なお選考の期間を必要とするときである。

本事案は後者であると判断した。


試用期間の延長

試用期間の延長については、次のような条件が求められます。

(1) 試用期間の延長について明文の就業規則等がある
(2) 長年にわたって会社の慣行として試用期間の延長制度がある
(3) 本人の許諾がある
(4) 本人の適格等に疑問があり、その採否につき、なおしばらく、本人の勤務態度を観察する期間の必要性があるとの合理的な理由がある

ただし、期間延長の制度があったとしても、それを何回も繰り返すと、延長制度自体が無効だと見なされる可能性があります。

試用期間の延長は、契約の重要な要素の変更ですので、労働者の同意なしに一方的に行うことはできません。

また、就業規則等であらかじめ延長をなしうる旨定めている場合であっても、特段の事情のないかぎり、延長は一般的に合理性がないと考えられています。

国際タクシー事件 東京地裁 昭和39.10.31

就業規則に試用期間が定められている場合には、会社は従業員としての適格性を疑わせる事情ないし本人の許諾がない以上、一方的に期間を延長・更新することはできない。

日本新潟運輸事件 大阪地裁 昭和41.7.2

試用期間の更新・延長は、当初の試用期間中に適格性の判断のために十分な機会がなかった場合など特殊な事情のある場合のみ許される。


試用期間が過ぎてしまった場合

正規の従業員と同じ身分になる

労働者は、正規の従業員と同等の身分になります。

解雇(本採用拒否)は、当然の事ながら、より制限されることになります。

解雇権留保付労働契約では、試用期間が終了した場合、留保解約権が消滅し、解約権の付着しない通常の労働契約に移行したことになります。

また、期間の定めのない契約に試用期間を設定した場合、試用期間の終了によって、もはや使用者は、試用=実験・観察の対象となった職業的能力、適性を欠くことを理由とする解雇は許されなくなると考えられます。


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