病気になったら

私傷病の場合、法的には賃金の支払義務はない

病気等が労災によるものは別ですが、病気休職期間中の賃金については法律上の支払義務はありません。

ただし、就業規則労働協約などで、休業期間であっても一定の賃金を保障している場合は別です。

その傷病が業務に起因するか、それとも私傷病と扱われるかによって、結果は大きく異なります。

企業として労働者の健康状態に問題があると考える場合、以下のようなことを行うことになります。

  1. 就労に支障がない旨の診断書の提出を求め
  2. 労働者がこれに応じない場合には警告を発し
  3. 会社が就労を強制しているわけではないこと、健康状態に不安を感じているなら何時でも申し出ることができることを確認し
  4. 場合によっては会社から就労をただちに中止すべきことを通知し
  5. 最終的には就労を拒否する等の措置をとる

就業の制限

労働安全衛生規則61条では、次の労働者は就業を禁止されています。

(1) 病毒伝ぱのおそれのある伝染性の疾病にかかった者
(2) 心臓、腎臓、肺等の疾病で労働のため病勢が著しく憎悪するおそれがあるものにかかった者
(3) 前各号に準ずる疾病で厚生労働大臣が定めるものにかかった者(※現時点では、該当する疾病なし)

事業主は、上記(1)(2)により従業員の就業を禁止しようとするときは、あらかじめ産業医その他専門の医師の意見を聴かなければなりません。

エイズについては就業制限の必要はない

エイズについては、労働者が就業することによって、他者が感染することは考えられませんから、伝染予防のために特段の措置を講ずる必要がありません。

エイズにかかっているかどうかの調査は、少なくとも衛生管理上は必要ないことになります(※本人の健康管理面では状況確認が求められる)。

HIV感染症やB型肝炎等の職場において感染したり蔓延したりする可能性が低い感染症に関する情報や、色覚検査等の遺伝情報については、職業上の特別な必要性がある場合を除き、事業者は、労働者等から取得すべきではない。

(平成16.10.29 基発1029009)

関連事項:健康管理


指定医の診断

自律神経失調症などの心身の故障により休職した労働者については、休職期間満了時に労働者が検診に非協力的態度をとり、受診しない場合がみられます。

この点については、就業規則の規定が合理的なもので、検診の内容・方法が目的との関係で合理的である限り、指定医の診断を受ける義務があるとされています。

空港グランドサービス・日航事件 東京地裁 平成3.3.22

労働者が選択した医師の診断結果に疑問がある場合、その疑問に合理的理由が存在するなら、労働者に対する安全配慮義務を尽くす必要がある以上、使用者の指定医の診察を受けるよう指示することができる。

電電公社帯広局事件 最高裁 昭和61.3.13

使用者は労働者に指定医の検診を命じることができ、労働者は従う義務がある。

(同旨:京セラ事件 東京高裁 昭和61.11.13)

労働者が事業主の指定した医師の診断を希望しない場合は、他の医師の健康診断を受け、その結果を証明する書面を提出することができます(費用は労働者の負担になります)。

検診の結果、就労不可能として復職を拒否する場合、使用者はその理由を労働者に立証しなければなりません(エール・フランス事件 東京地裁 昭和59.1.27)。

関連事項:病気休職と解雇


休職命令の発令

会社が診察・治療を命じても、当該従業員がこれを無視して出社し続け、他の従業員の業務にも支障をきたす場合には、会社は、当該従業員に対し、休職命令を発令することがあります。

この場合、就業規則の休職事由に、「精神の疾患により職務に堪えないとき」や「業務上の必要性に基づいて休職を命じることがある」というような規定がある場合、たとえ当該社員の欠勤が継続していないような場合であっても、本人を就業させることにより業務運営に与える不都合が生じ、これが無視できないとすれば、休職を発令することは可能と考えられます。

この場合、配偶者や親族等の理解を求め、協力体制を築くことも大切です。


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