受動喫煙

職場内禁煙が社会的趨勢

労働省からは、次の告示が出されています。

屋内作業場では、空気環境における浮遊粉じんや臭気等について、労働者が不快と感ずることのないよう維持管理されるよう必要な措置を講ずることとし、必要に応じ作業場内に喫煙場所を指定する等の喫煙対策を講ずること。

(平成4年 労働省告示第59号)

※喫煙対策については、「職場における喫煙対策のためのガイドライン」を参照してください。

江戸川区(受動喫煙損害賠償)事件 東京地裁 平成16.7.12

目やのどの痛みを感じたため、上司に分煙措置を要望したが、聞き入れられなかった。

配属が変わり、席も喫煙場所からもっとも遠いところへ指定されたが、簡便な分煙には至らなかった。被告は、特別区人事委員会に禁煙・分煙の措置要求を行った(却下)。

原告は安全配慮義務違反を訴え、予備的に国家賠償法に基づく医療費7,650万円と慰謝料等の内金31万余円を請求した。

裁判所は受動喫煙のによる肺ガンリスク等を肯定する一方で、それなりの分煙は図られていたと判断、初期段階での未措置を鑑みて、区管理者に精神的・肉体的苦痛に対する慰謝料5万円の支払を命じた。

JR西日本(受動喫煙)事件 大阪地裁 平成16.12.22

従業員らが、会社の分煙対策が不十分なため、受動喫煙によってストレスを感じ、癌などの重篤な疾患等に罹患する危険性にさらされているとして、人格権に基づく妨害排除・予防請求権又は安全配慮義務履行請求権に基づき、会社構内の各施設内を禁煙室とすること、及び不法行為又は債務不履行による損害賠償を求めた。

裁判所は以下のように判断した。

受動喫煙の健康に対する影響を踏まえた日本の喫煙対策においては、被告は法令等により直ちに事業場内の全ての箇所において禁煙措置を講じることを義務付けられているわけではなく、安全配慮義務の内容としていかなる受動喫煙対策を講じるべきかは、業務中に受動喫煙を余儀なくされる場所に滞留することが義務付けられているか否か、受動喫煙に曝露される程度、それによって生じた健康上の影響等を踏まえて判断されるべきである。

本件において、受動喫煙により何らかの疾患に罹患するなど現実的な健康被害が認められないこと、本件各施設は乗務員等が常時そこで業務を処理することが義務付けられている場所ではないこと、本件各施設に滞留する時間が短いこと、日本の現時点の喫煙対策において、事業場内の全ての施設を禁煙または完全分煙にすることまでが義務付けられているわけではないことなどの諸事情を考慮すると、会社は分煙措置を講じるべき作為義務を負っているとはいえず、また、損害賠償請求も認められない。

京都簡易保険事務センター(嫌煙権)事件 京都地裁 平成15.1.21

受動喫煙によって健康上の被害を被っているとの訴え(安全配慮義務違反)。

全面的禁煙を求める趣旨のビラ配布を管理職らに妨害された精神的苦痛についても訴えられた。

職場は、禁煙タイムの設定や、喫煙室の設置、禁煙の自粛を呼びかけるなどの措置をとっていた。

裁判所は、損害賠償請求を棄却。

センター内を全面的に禁煙しないことが安全配慮義務に違反し、違法であるとまではいえない。

ビラ配布阻止行為についても、暴力を行使するなどの証拠が認められない。


ページの先頭へ