健康診断の費用負担

診断費用は会社が負担する

これについて、労働安全衛生法には、会社・従業員のどちらがその費用を負担すべきかまでは明記されていません。

そこで、労働省通達「労働安全衛生法および同法施行令の施行について」(昭和47.9.1 基発第602号)が出され、ここでは法律で実施を義務づけている健康診断費用については「当然、事業主が負担」と明記されています(常時使用する労働者に限る)。

労働安全衛生法

第66条(健康診断) 第1項

事業者は、労働者に対し、厚生労働省令で定めるところにより、医師による健康診断を行わなければならない。

※厚生労働省令で定めるところとは、労働安全衛生規則によると、次の項目にあたります。

第43条 雇入時の健康診断
第44条 定期健康診断
第45条 特定業務(坑内労働・深夜業等の有害業務)従事者の健康診断
第45条の2 海外派遣労働者の健康診断
第47条 給食従事者の検便

第1項から第4項(※労働安全衛生法第66条)までの規定により実施される健康診断の費用については、法で事業者に健康診断の実施の義務を課している以上、当然、事業者が負担すべきものであること。(昭和47.9.1 基発第602号)

これは、労働者自身が費用負担を強いると、事実上、健康診断を受けないことが発生し、結果として、使用者が健康診断の実施義務を怠っていることになってしまうからです。

しかし、現実には、労働者側に費用負担を求める企業が少なからずあります。

なお、会社が実施する健康診断を本人の都合で受診しない場合には、従業員が各自で受けることも認められていますが、その場合の費用については、本人負担としてもよいとされます。

また、再検査の費用負担について 再検査や精密検査の必要性が指摘された場合、再検査等に必要な費用を誰が負担するかについては、法律に特別な定めがありません。従って、労使の協議や就業規則などの定めによります。

労働者が負担する場合、健康保険に加入していれば、医師の診断による再検査や精密検査については健康保険が利用可能です。


賃金の支払い

健康診断の受診に要した時間の賃金支払いについては、労使の取り決めによるものとされています。

しかし、目的から見て、賃金保障が必要と考えるのが自然です。

いわゆる一般健康診断は、一般的な健康の確保を図ることを目的として事業者にその実施義務を課したものであり、業務遂行との関連において行われるものでないので、その受診のために要した時間について当然には事業者の負担すべきものではなく労使協議して定めるべきものであるが、労働者の健康の確保は、事業の円滑な運営の不可欠な条件であることと考えると、その受診に要した時間の賃金を事業者が支払うことが望ましい。

(昭和47.9.18 基発第602号)

特殊健康診断は、事業の遂行にからんで当然実施しなければならない性格のものであり、それは所定労働時間内に行われるのを原則とすること。また、実施に要する時間は労働時間と解されるので、時間外に行われた場合には、当然割増賃金を支払わなければならないものであること。

(昭和47.9.18 基発第602号)


二次健康診断の受診に要した時間についての賃金支払い

同様に二次検診の場合も、賃金支払は義務ではないものの、脳や心臓疾患が発症した場合の負担を考えると、事業主が賃金負担しても、健診させることが望ましいと考えられます。


ページの先頭へ