認定の条件

脳・心臓疾患の疾患名および発症時期について

疾患が、対象疾病であることが前提

臨床所見、解剖所見、発症前後の身体の状況等から、疾患名を特定し、対象疾病に該当することを確認します。

発症時期

発症日は、業務と発症の関連性を検討する際の起点となるものなので、臨床所見や症状の経過等から、症状が出た日を特定することが必要です。


過重負荷についての判断

異常な出来事とは

  1. [精神的負荷]
    極度の緊張、興奮、恐怖、驚がくなど、強度の精神的負荷を引き起こす事態
  2. [身体的負荷]
    急激で著しい身体的負荷を強いられる事態
  3. [作業環境の変化]
    急激で著しい作業環境の変化

過重負荷の有無の判断

異常な出来事と認められるか否かは、以下のような事項について検討し、その出来事によって心身にどれほど大きな負担がかかったかを基準に、客観的かつ総合的に判断されます。

(検討の視点)
出来事の異常性・突発性の程度、予測の困難性、事故や災害の場合にはその大きさ、被害・加害の程度、緊張、興奮、恐怖、驚がく等の精神的負荷の程度、作業強度等の身体的負荷の程度、気温の上昇又は低下等の作業環境の変化の程度等

労働時間以外の負荷要因

負荷要因 負荷の程度を評価する視点
拘束時間の長い勤務 拘束時間数、実労働時間数、労働密度(実作業時間と手待時間との割合等)、休憩・仮眠時間数及び回数、休憩・仮眠施設の状況(広さ、空調、騒音等)、業務内容等
休日のない連続勤務 連続労働日数、連続労働日と発症との近接性、休日の数、実労働時間数、労働密度(実作業時間と手待時間との割合等)、業務内容等
勤務間インターバルが短い勤務 勤務間インターバルが短い勤務の程度(時間数、頻度、連続性等)、業務内容等
※ 長期間の過重業務の判断に当たっては、勤務間インターバルがおおむね11時間未満の勤務の有無、時間数、頻度、連続性等について評価
不規則な勤務・交代制勤務・深夜勤務 予定された業務スケジュールの変更の頻度・程度・事前の通知状況、予定された業務スケジュールの変更の予測の度合、交替制勤務における予定された始業・終業時刻のばらつきの程度、勤務のため夜間に十分な睡眠が取れない程度(勤務の時間帯や深夜時間帯の勤務の頻度・連続性)、一勤務の長さ(引き続いて実施される連続勤務の長さ)、一勤務中の休憩の時間数及び回数、休憩や仮眠施設の状況(広さ、空調、騒音等)、業務内容及びその変更の程度等
拘束時間の長い勤務 拘束時間数、実労働時間数、労働密度(実作業時間と手待時間との割合等)、業務内容、休憩・仮眠時間する、休憩・仮眠施設の状況(広さ、空調、騒音等)等
出張の多い業務 出張(特に時差のある海外出張)の頻度、出張が連続する程度、出張期間、交通手段、移動時間及び移動時間中の状況、移動距離、出張先の多様性、宿泊の有無、宿泊施設の状況、出張中における睡眠を含む休憩・休息の状況、出張中の業務内容等 併せて出張による疲労の回復状況等も踏まえて評価 飛行による時差については、時差の程度(特に4時間以上の時差の程度)、時差を伴う移動の頻度、移動の方向等の観点から検討出張に伴う勤務時間の不規則性については「勤務時間の不規則性」により評価
その他事業場外における移動を伴う業務 移動(特に時差のある海外への移動)の頻度、交通手段、移動時間及び移動時間中の状況、移動距離、移動先の多様性、宿泊の有無、宿泊施設の状況、宿泊を伴う場合の睡眠を含む休憩・休息の状況、業務内容等 併せて移動による疲労の回復状況等も踏まえて評価 時差及び移動に伴う勤務時間の不規則性については「出張の多い業務」と同様に評価
心理的負荷を伴う業務 厚生労働省「脳・心臓疾患の労災認定過労死等の労災補償Ⅰ」の別表1(日常的に心理負荷を伴う業務)及び別表2(心理的負荷を伴う具体的出来事)に掲げられている日常的に心理的負荷を伴う業務又は心理的負荷を伴う具体的出来事等
身体的負荷を伴う業務 業務内容のうち重量物の運搬作業、人力での掘削作業などの身体的負荷が大きい作業の種類、作業強度、作業量、作業時間、歩行や立位を伴う状況等のほか、当該業務が日常業務と質的に著しく異なる場合にはその程度(事務職の労働者が激しい肉体労働を行うなど)
作業環境(温度環境) 寒冷・暑熱の程度、防寒・防暑衣類の着用の状況、一連続作業時間中の採暖・冷却の状況、寒冷と暑熱との交互のばく露の状況、激しい温度差がある場所への出入りの頻度、水分補給の状況等
※ 長期間の過重業務の判断に当たっては、付加的に評価
作業環境(騒音) おおむね80dBを超える騒音の程度、そのばく露時間・期間、防音保護具の着用の状況等
※ 長期間の過重業務の判断に当たっては、付加的に評価
作業環境(時差) 5時間を超える時差の程度、時差を伴う移動の頻度等
出典:厚生労働省「脳・心臓疾患の労災認定過労死等の労災補償Ⅰ」https://www.mhlw.go.jp/new-info/kobetu/roudou/gyousei/dl/2207252-1.pdf

短期間の過重業務とは

・ 特に過重な業務

特に過重な業務とは、日常業務(通常の所定労働時間内の所定業務内容をいう)に比較して、特に過重な身体的、精神的負荷を生じさせたと客観的に認められる業務をいいます。

・ 評価期間

評価期間は、発症前おおむね1週間

・ 過重負荷の有無の判断

特に過重な業務に就労したと認められるか否かは、業務量、業務内容、作業環境等を考慮し、同種労働者にとっても、特に過重な身体的、精神的負荷と認められる業務であるか否かという観点から、客観的かつ総合的に判断します。
業務の過重性の具体的な評価をするには、労働時間のほか、労働時間以外の負荷要因(※上記表)について十分検討します。

長期間の過重業務とは

・ 疲労の蓄積

恒常的に長期間にわたる過重労働が続くと、「疲労の蓄積」が生じ、これが血管病変等をその自然経過を超えて著しく増悪させ、脳・心臓疾患を引き起こす場合があります。 そのため、発症との関連性について、業務の過重性を評価する際には、発症前の一定期間の勤務状況等を考察し、当時どの程度の疲労が蓄積していたかという観点から業務の過重性を評価することになります。

・ 評価期間

評価期間は、発症前おおむね6ヶ月間

・ 過重負荷の有無の判断

著しい疲労の蓄積をもたらす特に過重な業務に就労したと認められるか否かは、業務量、業務内容、作業環境等を考慮し、同種労働者※にとっても、特に過重な身体的、精神的負荷と認められる業務であるか否かという観点から、客観的かつ総合的に判断します。 業務の過重性の具体的な評価をするには、疲労の蓄積の観点から、労働時間のほか、労働時間以外の負荷要因(※上記表)について十分検討します。
※ 「同種労働者」とは、脳・心臓疾患を発症した労働者と職種、職場における立場や職責、年齢、経験等が類似する者をいい、基礎疾患を有していたとしても日常業務を支障なく遂行できる者を含みます。

労働時間の評価の目安

期間 時間外労働時間 判断
発症前1ヶ月間ないし6ヶ月間
(※1)
1ヶ月当たりおおむね45時間を超える 業務との関連性が強いと評価できる
発症前1ヶ月間 おおむね100時間を超える
発症前2ヶ月ないし6ヶ月間
(※2)
1ヶ月当たりおおむね80時間を超える

※1 「発症前1ヶ月間ないし6ヶ月間」は、発症前1ヶ月間、発症前2ヶ月間、発症前3ヶ月間、発症前4ヶ月間、発症前5ヶ月間、発症前6ヶ月間のすべての期間をいいます。

※2 「発症前2ヶ月間ないし6ヶ月間」は、発症前2ヶ月間、発症前3ヶ月間、発症前4ヶ月間、発症前5ヶ月間、発症前6ヶ月間のいずれかの期間をいいます。


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