腕に負担がかかる作業の場合

上肢等に負担がかかる作業の認定

上肢等に負担がかかる作業

(1) 上肢の反復動作の多い作業 パソコンやワープロ等のOA危機の操作をする作業、運搬・積込み・積卸し作業、製造業における機器等の組立て・仕上げ作業、給食等の調理作業など
(2) 上肢を上げた状態で行う作業 天井など上方を作業点とする作業、流れ作業による塗装・溶接作業など
(3) 頸部、肩の動きが少なく、姿勢が拘束される作業 顕微鏡や拡大鏡を使った検査作業など
(4) 上肢等の特定の部位に負担のかかる状態で行う作業 保育・看護・介護作業など

※同じ職種でも具体的な作業内容が異なる場合もあり、疾病の発症と業務との因果関係の検討においては、実際の作業内の把握が重要となります。

作業従事期間=「相当期間」とは、原則6ヶ月程度以上

1週間とか10日間という短期的なものではなく、原則として6ヶ月程度以上をいいます。

※腱鞘炎等については、作業従事期間が6ヶ月程度に満たない場合でも、短期間のうちに集中的に角の負担がかかった場合には発症することがあります。

「過重な業務」=10%以上の過重労働が3か月程度に渡る場合など

上肢等に負担のかかる作業を主とする業務において、医学経験則上、上肢障害の発症の有力な原因と認められる業務量を有するものであって、原則として次の(1)または(2)に該当するものをいいます。

(1) 同一事業場における同種の労働者と比較して、おおむね10%以上業務量が増加し、その状態が発症直前3か月程度に渡る場合
(2) 業務量が一定せず、例えば次のイ又はロに該当するような状態が発症直前3か月程度継続している場合

イ 1日の業務量が通常より20%以上多い日が、1か月に10日程度 あり、それが3か月程度続いた(1か月間の業務量の総量が通常と同じでもよい)

ロ 業務量が1日の平均では通常の範囲内であっても、1日の労働時間の3分の1程度にわたって業務量が通常の業務量のおおむね20%以上増加し、その状態が1か月のうち10日程度認められるもの

なお、業務量の面から過重な業務とは直ちに判断できない場合でも、通常業務による負荷を超える一定の負荷が認められ、次の1.から5.の要因が顕著に認められる場合には、これらの要因も総合して評価することになります。

  1. 長時間作業、連続作業
  2. 他律的かつ過度な作業ベース
  3. 過大な重量負荷、力の発揮
  4. 過度の緊張
  5. 不適切な作業環境

※「過重な業務」の検討は、可能な限り具体的で正確に行われる必要があります。「上司」は業務と日常生活の両方において使用され、また、その疾病の発症には多くの要因が複雑に関与していますから、障害の部位や内容を具体的に把握した上で、これを発症させると考えられる種類の動作や作業が業務にどの程度含まれていたかを確認し、これらに基づく医学的な見解を参考として判断することが必要です。

「療養の期間」

一般に上肢障害は、業務から離れた場合、あるいは業務から離れないまでも適切な作業の指導・改善等を行って就業すれば症状は軽快すると考えられます。

また、適切な療養を行うことによって、おおむね3ヶ月程度で症状が軽快し、手術を行った場合でも、一般的には、おおむね6ヶ月程度の療養が行われれば治ゆするものと考えられます。

質問:

ソフトプログラマーのEさん。

先週、右上肢の痛み、しびれ、めまい、吐き気などを訴え、整形外科を受診したところ、頸肩腕傷害と診断されました。

Eさんは、後述のようにこの4年ほどの間に、いくつもの会社を変わっていますが、実はA社をやめる直前の2001年2月頃から、右上肢の痛み、しびれなどの症状は感じ始めており、整骨院に通っていました。

Eさんの場合、どの事業所から証明をもらって請求すべきなのでしょうか?

2000年4月~2001年3月・・・A社
2001年4月~2001年12月・・・B企画
2002年1月~2003年3月・・・C社
2003年4月~現在・・・D社

回答:

労災は2年までさかのぼって請求できます。

Eさんの場合、2年前から症状がでていたようですが、整骨院では、頚腕の診断ができないため、労災請求ができません。

Eさんが初めて整形外科を受診し、診断を受けた先週が「発症」となり、現在のD社の証明をもらって労災請求を進めることになります。

横浜市立保育園保母事件
最高裁 平成9.11.28 東京高裁 平成5.1.27 横浜地裁 平成1.5.23

保育園の保母が肩こり、腕のだるさを感じ、立っているのがつらい、精神的疲れを感じるなどの自覚症状から診察を受けたところ、「頸肩腕症候群」と診断され、通院・マッサージ等の治療を続けた。

当事者は障害を業務に起因するものだとして、安全配慮義務違反として、慰謝料(1,000万円)を請求した。

一審の判断

市側は、職員の健康配慮義務があり、休憩時間の確保等の義務もある。こうした義務を怠ったと認められ、慰謝料(200万円)の支払いを認めた。

二審の判断

業務と症状の相当因果関係が認められない、とした。

最高裁の判断

原審差し戻し。

保母としての業務と頸肩腕症候群の発症・増悪との間に因果関係を是認しえる高度の蓋然性が認められる。


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