過労死への企業の対応

労災発生時の使用者としての責任

予想される会社側のリスクとしては、次の4つがあります。

  1. 刑事責任・・・労災発生に対する禁固、罰金などの刑罰
  2. 民事責任・・・損害賠償義務
  3. 行政責任・・・業務停止など
  4. 社会的責任・・・マスコミなどへの公表など

できる協力は淡々と行う

遺族の訴えをマスコミ等が取り上げ、会社の名誉に傷が付くこともあります。

しかし、現に1人の従業員が亡くなったわけですから、事実を淡々と開示し、労基署の判断を仰ぐのが適当だといえます。

無理な「労災隠し」を行うとすれば、かえって会社を傷つけることになりかねません。

また、労災が認定されれば、会社としては民事損害倍賞額が減額となるというメリットもあります。

具体的な協力内容は、資料の提出や上司や同僚の事情聴取です。

特に、労働時間を把握できるタイムカードや当該労働者の業務内容を示す資料等が求められます。そのような資料が一人歩きして労基署長に誤った判断をさせないようにすべきです。

また、一部関係者が遺族に同情して感情的な発言をさせないように、あくまで事実を伝えるように気をつけるべきでしょう。

また、「1人の自殺は5人のうつ病をもたらす」ともいわれており、仲間の命が失われることは、周囲にとってもきわめて大きなストレスとなります。

夜寝られなくなる、食欲がなくなる、気分が沈んで自責の念にかられる、などはうつ病のサインですから、メンタルヘルスの担当者と相談するか、受診をするよう勧めるなどの対応が必要です。


箝口令は困難

箝口令を敷いて自殺の事実を隠そうとしても、人の口に戸は立てられません。

危機管理の一環として、事実そのものを感情や評価をまじえずに伝えることが適切な態度です。


民事損害倍賞請求

裁判により、会社の過失を請求されることがあります。

この場合は、予見可能性が争点となると思われます。

勤務時間が著しく長時間であった場合、予見可能性が認定されるおそれがあります。

また、上司や同僚が身体の不調を聞いていたとか、当該労働者の以上に気づいていたとかいう事実によっても、予見可能性が認定される場合があります。


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