心の病気と労働災害

精神障害者の労災補償状況

区分 件数 平成29 平成30 令和元年 令和2 令和3 令和4 令和5
精神障害等 請求件数 1732 1820 2060 2051 2346 2683 3575
認定件数 506 465 509 608 629 710 883
うち自殺
(未遂を
含む)
請求件数 221 200 202 155 171 183 212
認定件数 98 76 88 81 79 67 79

「脳・心臓疾患と精神障害の労災補償状況」(令和5年度 厚生労働省)

過労で心の病、最多269人 08年度の労災認定

仕事のストレスでうつ病などの精神疾患を発症し昨年度に労災認定された人は、過去最多を更新する883人(前年度比173人増)だったことが厚生労働省のまとめでわかった。労災の認定基準として昨年度から追加された「カスタマーハラスメント」が原因だったのは52人だった。

労災認定された人の年齢別では、40歳代が239人と最多で、20歳代が206人、30歳代が203人で続き、39歳以下の若年層が約半数を占めた。原因別では多い順に、「上司らからのパワハラ」が157人、「悲惨な事故や災害の体験、目撃」が111人、「セクハラ」が103人だった。自殺や自殺未遂をした人は、前年度比12人増の79人に上った。

顧客らから理不尽な要求を突きつけられるカスハラは昨年9月、労災の認定基準に新たな類型として追加された。接客業や介護、看護などの職場で多く働いている女性が被害に遭いやすいとされ、認定された52人のうち45人が女性だった。

厚労省の担当者は、精神疾患の労災が増えている理由について「精神障害も労災認定されるとの周知が進んだほか、認定基準の改正で心理的評価の項目が出来事別に拡充され、労働者が自分に起きた出来事がどれにあたるか判断しやすくなったこともある」と話している。

一方、過重労働などによって脳や心臓疾患を発症して労災認定を受けた人は、前年度比20人増の214人(うち死亡者は56人)。職種別では、トラック運転手などの「自動車運転従事者」が64人で最多だった。

精神疾患で労災認定、過去最多883人…カスハラ原因は52人(読売新聞 2024.06.29)

心の病気の内訳(入院)

血管性及び詳細不明の認知症 22,800人
統合失調症,統合失調症型障害及び妄想性障害 126,400人
気分[感情]障害(躁うつ病を含む) 26,500人
総数 213,100人

(令和5年 患者調査 厚生労働省)


職務との関連性を認めた判例

土浦労働基準監督署長事件(総合病院土浦協同病院)事件 水戸地裁 平成17.2.22

外科医として勤務した本件病院からの転勤後まもなく自殺した医師に遺族が、労災保険法に基づき、自殺は本件病院における業務に起因するうつ病によるとして、遺族補償年金を請求した。

労基署は、自殺は業務上の事由によるものではないとして、不支給を決定した。

裁判所は、本件病院における業務の上で感じていた心理的負荷は、社会通念上、うつ病を発症させる危険性を内在させているといえる程度に強いものである。同人の個体的要因にはうつ病発症と強い関連性を持つ要因は認められない。うつ病発症及びそれによる自殺は、同人の本件病院における業務に起因すると認めるのが相当であるとして、請求を認容した。

豊田労働基準監督署長(トヨタ自動車)事件 名古屋高裁 平成15.7.18

恒常的な時間外労働や過密労働により疲労が蓄積される中で、業務による強い心身的負荷を受け、うつ病を発症し、発作的に自殺したとして、業務とうつ病発症との間の相当因果関係が肯定された。

日赤益田赤十字病院事件 広島地裁 平成15.3.25

患者に行った検査が原因で当該患者に急性膵炎を発症させた医師が、責任を感じて思い悩み、患者の様態が悪化するにつれ自責の念を強め、身体的にも精神的にも疲労困ぱいして自殺に至った事案。

裁判所は、自殺は業務に起因し業務と自殺との間に因果関係があることは明らかであるとした。

なお、病院側の注意義務違反はないとして、損害賠償責任は否定された。

みくまの農協事件 和歌山地裁 平成14.2.19

給油所の所長が、台風により給油所が浸水し、4日間通常業務ができずに休業となったことから、うつ病に罹患し、自殺した事案について、「T(被災者)の精神状態が不安定になったのが、台風後であり、・・・他に自殺を考えるような原因が一切窺われないことからすると、・・・Tは思い悩む性格の持ち主であったと考えられ・・・台風に対する対処のまずさなどを思い悩んで精神疾患に罹患した末に自殺したものと認めるのが相当であって、Tの自殺と業務遂行の間には因果関係が認められる。

三洋電機サービス事件 浦和地裁 平成13.2.2

課長に昇進後、痴呆の父親の介護や、それにより妻に負担を掛けていることへの後ろめたさ、本人の完全主義的性格、課長の職責を的確に果たせていないこと、上司や妻に悩みを理解してもらえず、仕事に追いつめられていったことへの不満、精神的な支えとなっていた同僚の転院などから、精神的疾患に罹患し自殺した事案。

裁判所は、職務に対する労働がが過剰とはいえなくても、因果関係が認められるとしている。


職務との関連性を否定した判例

JR西日本尼崎電車区事件 大阪地裁 平成17.2.21

運転士の自殺は、会社の日勤教育を受けさせられたためにうつ状態に陥ったことによるものであって、上司らに過失があり、会社には雇用契約上の安全配慮義務違反があるとして、損害賠償が請求された。

裁判所は、日勤教育の指定ないし実施と自殺との間に法律上の因果関係があると言うためには、上司ならびに会社において、日勤教育によって自殺したという結果について、予見可能であったことを要するところ、予見可能であったとは認められないと判断した。

三田労働基準監督署長(ローレルバンクマシン)事件 東京地裁 平成15.2.12

現金両替機に保守部門の担当課長が、百貨店でのトラブル対応、銀行の両替機で発生した現金詐取事件の捜査協力でのストレス、および仕事上のミスに関して上司から叱責されるなどしたことにより、うつ病を発症し、自殺した事案。

裁判所は、「相当因果関係の判断は、・・・平均的労働者・・・を基準として、労働時間、仕事の質及び責任の程度等が過重であるために当該精神障害が発病させられ得る程度に強度の心理的負荷が加えられたと認められるかを判断、・・・そのうえで、本事案では、時間外労働は恒常化していたが、「十分な休日が保障されていたから、客観的にみて、平均的労働者にとって、特に強度の心理的負担を与える程度に至ってい たとはみとめられない。


ページの先頭へ