休職期間満了での退職

条件を満たせば当然失職となる

休職には、「就労免除措置」という側面と「解雇猶予措置」、「治療に専念させるための措置」という側面があります。

完全な労務提供ができないということは、雇用契約上の義務を果たせないのであるから、本来であれば普通解雇にも該当するところです。

こうしたことから、休職期間の満了のケースでは、次の条件を満たせば、定年と同じように当然退職となるとされています。(昭和27.7.25 基収1628号通達、同旨 電機学園事件 東京地裁 昭和30.9.23)

(1) 期間満了の翌日等一定の日に雇用契約が自動終了することを、明白に就業規則に定めて明示している。
(2) かつ、その取り扱いについて規則どおりに実施し、例外的な運用や裁量がなされていない。

しかし、使用者には、雇用維持のための配慮が求められることになります。「解雇」の場合と同じように、客観的な判断が必要です。

いずれにせよポイントは、休職期間満了時に当該事業場での具体的な仕事との関係で就労に耐えるほど回復しているか否かになります。

別の仕事なら雇用できるかどうかの検討も必要です。


配置転換などの可能性も考慮する

最終判断は、産業医等の判断を参考にして、あくまでも使用者が決定すべき事項ですが、他の業務に配置することができないかなど、あらゆる角度から総合的に検討される必要があるといえるでしょう。

少し待てば完全に回復するのなら、就業規則等を形式的に適用して自動的に退職扱いするのではなく、本人の意向、産業医の診断等を踏まえ、休職期間の延長や、一定期間業務負担を軽減した後に完全復職を行うなど、柔軟な対応が求められます。

独立行政法人N事件 東京地裁 平成16.3.26

就業規則の休職命令は、解雇猶予のために設けられた制度と解される。したがって、当該休職命令を受けた者の復職が認められるためには、休職の原因となった傷病が治癒したことが必要であり、治癒があったといえるためには、原則として、従前の職務を通常の程度に行える健康状態に回復したことを要するというべきであるが、そうでないとしても、当該従業員の職種に限定がなく、他の軽易な職務であれば従事することが現実的に可能であったり、当該軽易な職務に就かせれば、程なく従前の職務を通常に行うことが出来ると予測出来るといった場合には、復職を認めるのが相当である。

カントラ事件 大阪高裁 平成14.6.19

トラック運転手。2年半にわたり病気休職していたが、復職を申し出たところ拒否された。産業医は軽作業なら就労可能と判断したが、なおも会社は復職を認めなかった。

高裁は、原告が職種限定で採用されたことを重視し会社の判断は正当としながらも、会社の就業規則に職種変更の予定が認められ、産業医の診断でも軽度の運転業務ならば遂行できる状態であったことなどから賃金請求について認容した。

片山組事件 最高裁 平成10.4.9

原告は21年以上にわたり建設工事現場の監督業務に従事してきたが、私病のため現場監督ができなくなり、事務作業には従事できると申し出た。会社は自宅治療を命じ、4ヶ月間の賃金を支払わなかった。

最高裁は、以下の通り判断した。

労働者が職種や業務内容を特定せずに労働契約を締結した場合においては、現に就業を命じられた特定の業務について労務の提供が十全にはできないとしても、その能力、経験、地位、当該企業の規模、業種、当該企業における労働者の配置・異動の実情及び難易等に照らして当該労働者が配置される現実的可能性があると認められる他の業務について労務の提供をすることができ、かつ、その提供を申し出ているならば、なお債務の本旨に従った履行の提供があると解するのが相当である。

そのように解さないと、同一の企業における同様の労働契約を締結した労働者の提供し得る労務の範囲に同様の身体的原因による制約が生じた場合に、その能力、経験、地位等にかかわりなく、現に就業を命じられている業務によって、労務の提供が債務の本旨に従ったものになるか否か、また、その結果、賃金請求権を取得するか否かが左右されることになり、不合理である。


休職延長規定の設定

多くの事業所では、一定の期間が過ぎてなお復職ができない社員は、退職したものとして取り扱う規定をおいています。

しかし、実際には、復職の判断をくだすことは困難な場合が多いでしょう。

休職期間の延長制度もあわせて設定し、必要に応じて様子をみることもできます。


ページの先頭へ