過労死の認定基準

従前は発症直前の状況が重視されたが、疲労の蓄積も要素となりつつある

脳・心臓疾患の場合、労働省が「脳血管疾患及び虚血性心疾患等の認定基準(昭62.10.26基発620号、現在は改正された「新認定基準」(後述))」を出していて、それに基づいて労災保険を適用するか決定されます。

脳・心臓疾患については、従来は、業務上か否かの判断が厳格に行われ、なかなか労災保険適用がなされませんでした。

そのため、処分の取り消しを求める裁判が相次いで起こされ、次第に、不支給処分を取り消す判決が出されるようになりました。

そのような判例や新しい医学上の知見を踏えて、先の認定基準を緩和した「新認定基準」(平7.2.1 基発27号)が出されました。

主な特長は、業務の過重性判断につき、発症前1週間より前の業務をより考慮し総合的に判断することと労働者の年齢や経験を考慮することにあるといえるでしょう。

最近では、過労が原因の脳・心臓疾患に対する労災保険適用件数も増加しています。平成10年度では脳・心臓疾患の労災認定申請521件、認定件数90件だったのが、平成26年度においても依然として高水準で推移し、脳・心臓疾患に係る労災請求件数は763件、うち支給決定件数は、277件となっています。

過労自殺については、そもそも自殺について、労災保険の対象となる範囲が限られていたため、労災認定が難しい状況でした。

というのは、労災保険法では、労働者が故意に死亡した場合は保険給付を行わないと定められています。(労災保険法第12条の2の2)

そのため、自殺は、原則として労災保険が適用されません。

従来は、業務上のケガや病気が原因の精神障害で、心身喪失状態で自殺した場合のみ労災保険が適用されるという、限られた範囲でしか認められていませんでした。

過労や業務上のストレスにより発症する精神障害(うつ病など)およびその心因性の精神障害による自殺(「過労自殺」)についても、業務による脳・心臓疾患の労災認定の場合と同様に、社会的に大きな問題となり、労災認定の道が求められるようになりました。

そのような世論を背景にして、平成11年9月に「心理的負荷による精神障害等に係る業務上外の判断指針(平11.9.14 基発544、545号)」が出されました。

さらに最近の最高裁判例等を踏まえ、厚生労働省では、脳血管疾患及び虚血性心疾患等(負傷に起因するものを除く。)の認定基準を、下記のとおり改正しました(平成13年12月12日)。

これにより、過労や業務による著しいストレスが原因の精神障害全般に対する労災保険認定基準が明らかになることが期待されます。

ただし、過労や業務上のストレスによる自殺が直ちに労災認定されるようになったわけではないことに注意する必要があります。

関連事項:脳・心臓疾患の労災認定基準

和歌山労基署長(NTT和歌山設備建設センター)事件 和歌山地裁 平成15.7.22

脳内出血を発症し死亡した社員は、発症前1ヶ月の残業時間が厚生労働省の認定基準を上回る104時間であり、発症およびこれに起因する死亡と業務との間には、相当因果関係が認められるから、本件不支給処分は違法である。

同時に、社員は高血圧症であり、飲酒・喫煙といった嗜好や、不安神経症を有していたが、これらの私的な要因については、発症についての有力な原因ではないとされた。

遺族補償年金等不支給処分が取り消された。

過労で心の病、最多269人 08年度の労災認定

過労が原因でうつ病などの心の病になり、2008年度に労災認定された人が前年度より1人多い269人に達し、3年連続で過去最多を更新したことが8日、厚生労働省のまとめで分かった。うち66人は過労自殺(未遂含む)と認定され、前年度より15人減ったが過去2番目の高水準。過労死も158人と過去2番目に多かった。

同省は「景気悪化の影響で競争が激化するなどしており、労働者の職場環境は依然として厳しい」と分析。「過労自殺、過労死は高止まりの状態が続いており、企業などへの指導を徹底したい」としている。

08年度の精神障害の労災申請は927人。認定された269人を年代別にみると、30代が74人と最多。20代70人、40代69人で働き盛り世代が目立った。業種別では製造業、卸売・小売業、医療・福祉などが多かった。

(NIKKEI-NET 2009.6.8)

高裁判事の自殺「公務災害にあたらず」・最高裁

大阪高裁判事だった平沢雄二さん(当時53)の自殺をめぐり、「過労による精神的疲労が原因」などとして遺族が申し立てていた公務上災害申請について、最高裁は10日までに、「公務と死亡との間の因果関係はなく、公務上災害にはあたらない」と認定し、遺族側に通知した。

通知書などによると、平沢さんは2003年3月、自宅近くのマンションから飛び降り自殺した。

自殺の1年ほど前から出勤前や帰宅後に自宅で仕事をする時間が増えたほか、直前には刑事部から民事部への異動を内示され、精神状態が不安定になっていた。

(NIKKEI-NET 2005.6.11)

派遣労働者の過労自殺を認定、ニコンなどに賠償命令・東京地裁

業務請負の形で光学機器大手ニコンの熊谷工場(埼玉県)に派遣された男性がうつ病を発症して自殺したのは、長時間勤務と劣悪な勤務環境が原因として、母親がニコンと業務請負会社ネクスター(現アテスト、名古屋市)に計約1億4,400万円の損害賠償を求めた訴訟の判決で、東京地裁は31日、約2,480万円の支払いを命じた。

過労死弁護団全国連絡会議によると、実質的な派遣労働者の過労自殺を認め、賠償を命じた判決は初めて。

派遣労働者は雇用責任が分散しがちで権利の保護が難しいと指摘されており、企業側には一層の安全配慮が求められそうだ。

芝田俊文裁判長は判決理由で「不規則、長時間の勤務で、作業内容や閉鎖的な職場の環境にも精神障害の原因となる強い心理的負担があった。

自殺原因の重要部分は業務の過重によるうつ病にある」と指摘。

その上で「人材派遣、業務請負など契約形態の違いは別としても、両社は疲労や心理的負担が蓄積しすぎないよう注意すべきだった」と安全配慮義務違反を認定した。

(NIKKEI-NET 2005.3.31)

ニコンなどの賠償増額、7,000万円支払い命令 過労自殺訴訟

ニコンの工場に派遣された業務請負会社「アテスト」(名古屋市)の元社員、上段勇士さん(当時23)が自殺したのは過重労働によるうつ病が原因として、母親の上段のり子さん(60)が両社に計1億4,000万円の損害賠償を求めた訴訟の控訴審判決が28日、東京高裁であった。都築弘裁判長は、両社に計約2,488万円の支払いを命じた1審判決を変更。賠償額を約4569万円増額し、計約7,058万円の支払いを命じた。

判決は、上段さんの自殺前の勤務状況について(1)時間外や休日労働をしていた(2)担当外の重い業務との兼務で心理的負荷を蓄積させていた――などと指摘。「自殺の原因は業務に起因するうつ病と推認できる」と判断した。

「製造業への派遣を禁止していた当時の労働者派遣法に反していた」と言及。ニコンの従業員には指揮・監督権限があったのに、過重労働で心身の健康を損なうことがないよう注意する義務に違反したと結論付けた。

(NIKKEI-NET 2009.7.29)

リクルート過労死裁判で和解、遺族に1,200万円支払い

リクルート(東京都中央区)に勤務していた編集者の石井偉さん(当時29)が96年にくも膜下出血で死亡したのは過重労働が原因だったとして、北海道に住む両親が同社を相手取り、約8,900万円の損害賠償を求めた訴訟が22日、東京地裁(芝田俊文裁判長)で和解した。

同社の法的責任は前提とせず、原告に対し1,200万円の和解金を支払うことで合意した。

訴状などによると、男性は96年4月から、同社の新事業「デジタルB-ing」の企画・編集に携わり、同年8月末、自宅でくも膜下出血のために倒れ、死亡した。

タイムカードでは、死の直前の数ヶ月間は、毎月の総労働時間が約210~約270時間だった。

原告は、男性が実質的に一人でホームページの更新を担当しており、タイムカード上の労働時間に加え深夜労働や持ち帰り仕事で疲労が蓄積し死亡したとして、99年6月に提訴。

リクルート側は、腎臓の持病の合併症が原因で「業務と死亡との間に因果関係はない」と主張していた。

和解後、原告の母親は「息子と同様に一人暮らしで労働時間を証明できず、泣き寝入りした遺族は多い。リクルートが安全配慮策をとることを期待したい」と話した。

原告側の代理人は「編集など不規則な裁量労働でも裁判所が和解勧告した点で、警鐘を鳴らしたといえる」と評価する。

リクルート広報室の話 従業員の一人が亡くなられたことは、大変悲しく残念な出来事でございました。今後とも、従業員の健康管理には十分配慮していきたいと思います。

(asahi.com 2004.1.23)

過労死で9,000万円賠償提訴 ~労基法違反 略式起訴の会社相手~

連日の深夜残業をさせながら労務管理を怠ったとして、東京都内の会社と社長(48)が労働基準法違反などで略式起訴された事件で、過労死認定された三浦伸夫さん(当時47歳)=東京都新宿区=の遺族が22日、会社側に約9,000万円の損害賠償を求め東京地裁に提訴した。

この会社は、渋谷区の設計・施工会社「ジュンプロダクツ」。

訴えによると、同社は恒常的に時間外労働をさせたのに、タイムカードなどで労働時間を把握せず、法で義務づけられた年1回の定期健康診断も実施しなかった。三浦さんは99年4月、帰宅後にくも膜下出血で倒れ、1週間後に死亡した。

東京地検公安部は、過労死という結果の重大性を踏まえ、行政に過労死認定されたケースでは初めて、労基法と労働安全衛生法違反での刑事責任追求に踏み切った。

三浦さんは91年秋、働いていた建設会社をリストラされた。再就職先が見つからない中で92年、同僚だった「ジュンプロダクツ」社長の誘いに飛びついた。社長の下の「統括」という肩書きだった。

しかし、本業の内装工事に加え、副業のレンタルビデオ店などの店番までさせられた。「帰宅は午前3時や4時になり、小学生だった娘の顔も見られなくなりました」と妻(50)は語る。

元々無口だった三浦さんは、さらに口数が減った。「仕事辞めたら」と言うと「自分がいないと(仕事が)動かない」。病院に連れていこうとすると「少しでも寝ていたい」と言うだけだった。

99年4月8日。妻が自営の喫茶店から帰宅すると、夫は吐いたまま倒れていた。

(毎日新聞 2002.2.22)

社員過労死で設計・施工会社と社長に罰金 東京簡裁

99年4月に社員が過労死したことをめぐって略式起訴された東京都渋谷区の設計・施工会社とその社長に対し、東京簡裁は5日までにそれぞれ罰金30万円の略式命令を出した。

連日深夜まで働かせながら、労働時間などを把握していなかったとして、労働基準監督署から「過労死」認定されたケースで初めて刑事責任が問われ、労働基準法と労働安全衛生法違反の罪で略式起訴されていた。

(asahi.com 2002.3.5 )

ぜんそく死は過労が原因と労災認定…東京地裁

三井建設(東京)の子会社社員がぜんそくで死亡したのは過労が原因だとして、妻(43)が中央労働基準監督署などに対し、遺族補償年金などを不支給とした処分の取り消しを求めた訴訟の判決が12日、東京地裁であった。

三代川三千代裁判長は「単身赴任生活でぜんそくが急速に悪化した」と、社員の死を労災と認定し、同監督署に不支給処分の取り消しを命じた。

同裁判長は、三井建設側がこの社員の勤務状況を同監督署に申告する際、勤務時間を実際より短く偽って記入した、とも指摘した。

原告側弁護団によると、単身赴任を過労死の要因とする司法判断は異例。

ぜんそくによる死亡が労災認定されたのも2件目という。

判決によると、この社員は1986年以降、建設現場の責任者として、北海道内や東京に単身赴任し、症状が悪化。

87年にぜんそくの発作で30歳で死亡した。

判決は、東京に単身赴任した際、午前6時半に寮を出なければならず、1ヶ月の残業が150時間を超えていたと指摘。「ぜんそくの重篤な発作を起こした」と述べた。

(Yomiuri on line 2002.12.12)

過労死不認定から認定に見直す決定 長野・伊那労基署長

長野県内の精密部品製造会社に勤めていた男性が急死したことを巡る労災認定で、同県の伊那労働基準監督署長は28日までに、労災を認めなかった決定を取り消し、過労死を認定することを決めた。

厚生労働省が公表した過労死に関する新しい認定基準に沿って決定を見直した。

同省によると、見直しは全国2例目。

労災が認定されることになったのは、長野県箕輪町にある精密部品製造会社で働いていた男性(当時26)。同社に勤務していた96年5月、山梨県櫛形町の実家で突然倒れ、急性心不全で亡くなった。

男性は深夜の呼び出しがたびたびあり、直前6ヶ月の月平均の時間外労働は134時間に上っていたという。

父親は97年7月、伊那労基署に労災認定を申請したが、99年3月に「業務外」として不認定を決定。労働保険審査会に再審査を請求するとともに、伊那労基署長を相手取り、決定の取り消しを求めて長野地裁に提訴していた。

(asahi.com 2001.12.28)

上司のパワハラ、脳梗塞の原因に 東京高裁が労災認定

過重な業務と上司のパワーハラスメントのストレスで脳梗塞(こうそく)を発症したとして、ヤマト運輸子会社の元社員(故人)の妻が国に労災認定を求めた訴訟の控訴審判決で、東京高裁は12日、原告側の請求を棄却した1審判決を取り消し、労災と認めて休業補償給付を命じた。

判決理由で南敏文裁判長は「元社員を起立させたまま2時間にわたって叱責(しっせき)した」などとして上司のパワハラを批判。叱責が月に2回以上あり、発症1ヶ月前の残業が約80時間に及んだことと併せ、「肉体的疲労だけでなく心理的負担も重なり脳梗塞を発症した。会社の業務が原因といえる」と労災と認めた。

判決によると、元社員は1994年4月、業務後の新入社員歓迎会で脳梗塞を発症。96年に労災申請し、認められないまま再審査中の2006年に死亡した。妻が労災認定を求め提訴したが、1審・東京地裁判決は「説教は上司の指導としての通常の範囲内」として請求を棄却した。

(NIKKEI NET 2008.11.12)

横浜南労基署長(東京海上横浜支店)事件
最高裁 平成12.7.17 東京高裁 平成7.5.30 横浜地裁 平成5.3.23

支店長付きの自動車運転手(54歳)。出迎え途中で突然目の前に対向車が現れ、急ブレーキをかけて衝突を免れたが、その後間もなく気分が悪くなり、家に帰った後、意識を失った。くも膜下出血と診断された。

休業することとなり労災申請したが、労基署は不支給の決定をした。これを不服として提訴。

一審の判断

一審は、過重な業務が自然的な経過を超えて病巣を増悪させたとして、労働者側が勝訴した。

二審の判断

二審は、業務起因性が認められないとして、第一審を取り消した。

加齢とともに自然増悪した脳動脈瘤が、たまたま発症しただけだとした。

最高裁の判断

労働者側勝訴

発症前に従事した業務による過重な精神的・身体的負荷が、基礎疾患を自然の経過を超えて増悪させ、発症に至ったものであり、相当因果関係の存在を認められるとした。

なお、業務の状況は発症の半年前から1日平均の所定外労働が7時間を上回り、発症の前月からは走行距離も長く(前月192キロ、当月260キロ)、当日は早朝の4時50分出庫であり、睡眠時間は3時間半だった。

研修医自殺、遺族が労災申請 最大で週120時間勤務

2年前に自殺した横浜市大病院の研修医だった男性(当時30)の遺族が27日、自殺は過労によるうつ病が原因だとして、横浜南労働基準監督署に労災申請した。

遺族の代理人によると、男性は99年4月、外科の研修医になったが、同年9月に過労で倒れ、直後に自殺を図ってうつ病と診断された。

00年3月に精神科に移って復帰したが、7月に睡眠薬を大量に飲んで意識不明になり、2ヶ月後に死亡した。

外科での勤務は毎日深夜まで続き、倒れるまで休日もなく、月数回ある当直日は翌日夜まで40時間も勤務が続いたという。

勤務時間は週100時間を超え、最も多い週で120時間に達し、精神科でも長時間労働が続いたと主張している。

死亡した関西医科大の研修医の遺族が起こした民事訴訟で、昨年8月、大阪地裁堺支部が「研修医は労働者である」との判断を示したことから、申請することにしたという。

厚労省によると、研修医の過労死にかかわる労災申請は現在1件が審理中で、認定された例はないという。

横浜市大病院は「不幸な結果を生じ、誠に残念に思う。労基署の調査には誠意をもって対応したい」とコメントしている。

(asahi.com 2002.8.27)

入社50日後に死亡、21歳男性「過労死」認定

中古車情報誌の制作会社にアルバイトとして入社、50日後の1996年6月に心疾患で急死した広瀬勝さん(当時21歳)(大阪府枚方市)について、大阪労働者災害補償保険審査官は29日までに、「過労死」を認定した。

広瀬さんについては2000年1月、天満労働基準監督署が労災不認定を決定していたが、昨年12月、過労死につながる勤務実態の評価期間がこれまでの発症前1週間から6ヶ月前にさかのぼるよう変更されたのに伴い、改めて死亡前50日間の実態を審査、労災不認定の決定が取り消された。

広瀬さんは「カーセンサー関西版」の編集を担当。多い日には16時間勤務をこなし、死亡前1ヶ月間の時間外労働は93時間余りだった。新基準が定める1ヶ月100時間には満たないが、深夜残業など勤務が不規則、労働密度が高い――などの事情が考慮された。

遺族は近く、制作会社を相手に約1億円の損害賠償を求める民事訴訟も起こすという。

(Yomiuri on line 2002.5.29)

裁量労働制職場の過労死初認定で遺族と和解 光文社

週刊誌「女性自身」の編集者だった脇山達さん(当時24)が97年に急死したのは過労が原因だったとして両親が発行元の光文社を相手に約1億6,800万円の損害賠償を求めた訴訟の和解が7日、東京地裁(松本利幸裁判長)で成立した。両親に7,500万円を支払うことなどが和解条項になっている。

両親は98年、月80時間を超える残業があったとして労災申請をしたが、中央労働基準監督署(東京都千代田区)は、脇山さんの職場が勤務時間を社員が決められる「裁量労働制」を採っていたことなどを理由に労災と認めなかった。しかし厚生労働省が過労死の労災認定基準を見直したことから、同監督署は昨年1月、裁量労働制の職場で初めて過労死と認定した。光文社は今回の和解金とは別に、すでに約1,750万円の遺族補償を支払っている。

光文社広報室の話 早期に解決することが望ましいと考えて裁判所の和解勧告に応じた。

(asahi.com 2003.3.7)

過労死認定者の遺族年金、異例の算定し直し 品川労基署

96年秋に心臓疾患で死亡し、過労死と認定された埼玉県の男性(当時42)について、残業手当がない管理職でなく実態は一般職だったとして、東京都の品川労働基準監督署が遺族年金の算定をやり直し、残業分を含め年額約71万円を増額していたことが23日分かった。

管理職を肩書でなく実態で判断し、算定をやり直すのは異例という。

労基署などによると、男性は東京都目黒区の電気通信工事会社に勤務。96年11月に職場で虚血性心疾患で死亡、00年10月に過労死と認定された。

課長待遇の「技術長」だったため、労基署は当初、管理職と判断。給与規程に基づいて残業を考慮せず、遺族年金を年額約347万円と決定した。

しかし、遺族がこの決定を不服として東京労働局に審査請求。

同労働局は昨年9月、男性の賃金が昇格後も上がっておらず、部下がいなかったことなどを理由に管理職と認めず、一般職として残業代を含め算定をやり直すよう命令。これを受けて同労基署は昨年11月、遺族年金を年額約418万円に増額した。

(asahi.com 2002.1.23)


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