ストレス-脆弱性理論

環境要因×本人要因で、精神疾患が発症する

国は平成11年に「心理的負荷による精神障害等に係る業務上外の判断指針について」(平成11.9.14 基発第544号)を示し、労災認定の判断基準としています。

その後、平成21年4月に一部改正を経て、平成23年に「心理的負荷による精神障害等の認定基準」(平成23.12.26 基発第1226第1号)を示し、より明確な労災認定の判断基準を示しています。

この適用により業務上災害の認定が否定された判断をめぐる訴訟で、裁判所は個人的要素の加味が必要だと指摘しました。(玉野労基署長・三井造船玉野事業所事件 岡山地裁 平成17.7.12)

この際用いられたのが「ストレス-脆弱性」理論です。

この理論は、環境由来のストレス(業務上又は業務外の要因による心理的負荷)と個体の反応性、脆弱性(個体側要因)との関係で精神的破綻が生じるかどうかが決まるという考え方で、ストレスが非常に強ければ個体側の脆弱性が小さくても精神障害が起こるし、逆に個体側の脆弱性が大きければストレスが弱くても破綻が生じるとするものです。

業務起因性を判断するに当たっては、それらどの要因が発病に有力な原因になったかを総合判断することが必要とされます。

その上で、心理的負荷の強度は「多くの人が一般的にはどう受け止めるか」という客観的な基準によって評価されることになります。

裁判所は、判断指針を適用するにあたっては、労働者が置かれた具体的な立場や状況などを十分斟酌して、幅のある判断をなすべきだ、としています。

また、令和5年には、近年の社会情勢の変化や労災請求件数の増加等に鑑み、最新の医学的知見を踏まえて、評価表の明確化等により、より適切な認定、審査の迅速化、請求の容易化を図るため、「心理的負荷による精神障害の認定基準」(令和5年9月1日 基発0901第2号)の改正を行っています。

改正のポイントは以下の通りとなります。


業務による心理的負荷評価表の見直し

◆新たに評価対象に追加された出来事
・具体的出来事「顧客や取引先、施設利用者等から著しい迷惑行為を受けた」(いわゆるカスタマーハラスメントの項目)を追加
・具体的出来事「感染症等の病気や事故の危険性が高い業務に従事した」を追加

◆心理的負荷の強度が「強」「中」「弱」となる具体例を拡充(パワーハラスメントの6類型すべての具体例の明記等)し、より詳細に評価できるようにした。

   

※実際に発生した業務による出来事を、同表に示す「具体的出来事」に当てはめ負荷(ストレス)の強さを評価する。

精神障害の悪化の業務起因性が認められる範囲を見直し

◆悪化前の約6か月間に「特別な出来事」がなくても、「業務による強い心理的負荷」が原因で精神障害が悪化した場合には、その部分について業務起因性を認めることにした。

医学意見の収集方法を効率化

◆これまで専門医3名の合議で判断していた事案も、1名の意見で決定できるように変更され、迅速な対応が可能となりました(特に困難な事案を除く)。

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