非器質性精神障害の後遺症
厚生労働省の基準
障害等級認定の時期
うつ病やPTSD(外傷後ストレス障害)等、非器質性の精神障害については十分な治療の結果、完治には至らないものの、日常生活動作ができるようになり、症状がかなり軽快している場合には治ゆの状態にあるものとして障害等級の認定を行います。
ただし、治療を行っても重い症状がつづく場合には、さらに症状の改善が見込まれるので、原則として治療を継続します。
障害等級認定の方法
非器質性の精神障害の後遺障害として、
- 「抑うつ状態」「不安の状態」「意欲低下の状態」「慢性化した幻覚・妄想性の状態」「記憶または知的能力の障害」「その他の障害(衝動性の障害、不定愁訴など)」といった「精神症状」が残った場合には、
- 「身辺日常生活」「仕事・生活に積極性・関心をもつこと」「通勤・勤務時間の遵守」「普通に作業を持続すること」「他人との意思伝達」「対人関係・協調性」「身辺の安全保持、危機の回避」「困難・失敗への対応」といった「能力に関する判断項目」について、
- 「できない」「しばしば助言・援助が必要」「時に助言・援助が必要」「適切またはおおむねできる」の4段階についての判定結果を踏まえて、障害等級(第9・12・14級)を認定します。
障害等級の例(一部)
第9級 | 出勤することはできるが、家族等が促さなければ始業時刻に遅れることが常態的である場合 |
第14級 | 通常は始業時刻に遅れることなく自発的に出勤することができるが、時には遅れることがある場合 |
8つの能力を評価する際の要点
非器質性精神障害については、8つの能力について、能力の有無および必要となる助言・援助の程度に着目し、評価を行います。評価を行う際の要点は、以下の通りです。
(1) 身辺日常生活
入浴をすることや更衣をすることなど清潔保持を適切にすることができるか、規則的に十分な食事をすることができるかについて判定してください。
なお、食事・入浴・更衣以外の動作については、特筆すべき事項がある場合には加味して判定を行って下さい。
(2) 仕事・生活に積極性・関心を持つこと
仕事の内容、職場での生活や働くことそのもの、世の中の出来事、テレビ、娯楽等の日常生活等に対する意欲や関心があるか否かについて判定して下さい。
(3) 通勤・勤務時間の遵守
規則的な通勤や出勤時間等、拘束時間の遵守が可能かどうかについて判断して下さい。
(4) 普通に作業を持続すること
終業規則に則った就労が可能かどうか、普通の集中力・持続力をもって業務を遂行できるかどうかについて判定して下さい。
(5) 他人との意思伝達
職場において上司・同僚等に対して発言を自主的にできるか等、他人とのコミュニケーションが適切にできるかを判定して下さい。
(6) 対人関係・協調性
職場において上司・同僚と円滑な共同作業、社会的行動ができるかどうか等について判定して下さい。
(7) 身辺の安全保持、危機の回避
職場における危険から適切に身を守れるかどうかを判定して下さい。
(8) 困難・失敗への対応
職場において新たな業務上のストレスを受けたとき、ひどく緊張したり、混乱することなく対処できるか等、どの程度適切に対応できるかということを判定して下さい。
※主治医等に対して意見を照会する場合の様式に記載された各能力の判定の要点
非器質性精神障害の傷害等級
「神経系統の機能又は精神の障害に関する障害等級認定基準について」(平成15.8.8 基発0808002号)によると、非器質性精神障害の傷害等級は次の3段階とされています(平成17現在)。
9級の7の2(391日分+50万円)
神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、通常の労務には服することができるが、非器質性精神障害のため就労可能な労務が相当な程度に制限されるもの。具体的には、対人業務につけない者等が該当します。
12級の12(156日分+20万円)
局部に頑固な神経症状を残し、通常の労務に服する事はできるが、非器質性精神障害のため多少の障害を残すもの。職種制限は認められないが、就労にあたりかなりの配慮が必要である者等が該当します。
14級の9(56日分+8万円)
局部に神経症状を残し、通常の労務に服する事はできるが、非器質性精神障害のため軽微な障害を残すもの。職種制限は認められないが、就労にあたり多少の配慮が必要である者が該当します。
メンタルヘルスの悪化した事業所でもセクハラやパワハラなどが増えてくる。
また各種の依存症(アルコールや薬物、ギャンブル)などモラールの低下が発生しやすくなる。
ストレスの多すぎる職場で働いている社員の中には、歪んだストレス解消法に走る人も少なくないのだ。
以上の点から、メンタルヘルス対策とは、単独でなされるものではない。
安全衛生対策や過重労働対策、リスク管理などと一体化してなされるべきもの、すなわち人的資源管理の根幹である。
鈴木安名((財)労働科学研究所主任研究員 労政時報No.3652 2005.4.22)
職場の「心の病」30代で増加(メンタル・ヘルス研究所)
社会経済生産性本部メンタル・ヘルス研究所(経済界などでつくる財団法人)では2008年4月、上場企業を対象にしたアンケート調査を行った。
対象:全国の上場企業2,368社を対象に調査、269社から有効回答を得た(回収率11.4%)。
半数以上の企業で、最近3年間の「心の病」は「増加傾向」
最近3年間における「心の病」は56.1%の企業が「増加傾向」と回答。前回調査の61.5%より低下したものの、依然として半数を超える高い水準に留まっている。
年齢別に見ると、約6割(59.9%)の企業が30代に心の病が最も多いと回答した。
メンタルヘルス施策を重視する企業がほぼ倍増
従業員の健康づくり施策全体の中で、メンタルヘルスに関する施策に力を入れる企業は63.9%となっている。この比率は2002年の2倍近い値となっている。
- 2002年・・・33.3%
- 2004年・・・46.3%
- 2006年・・・59.2%
- 2008年・・・63.9%
メンタルヘルスの今後の取り組みについて、9割近く(86.9%)の企業で更に充実させる方向で考えている。
メンタルヘルス施策を通じて企業が期待している主な内容は、不調者の早期発見、不調者に適切な対応ができることなどである。
現在取り組んでいるメンタルヘルス施策について、約4割(38.7%)の企業で「まずまず効果が出ている」と回答している。「あまり効果が出ていない」という回答は16.0%で、「どちらともいえない」(40.1%)という回答も多い。
職場の状況で「心の病」の増加傾向に差
「心の病」が増加する傾向は、職場の状況に関わる次の3つの変化と統計的に有意な関係がみられた。
職場の状況 | 増加した | そうでない |
---|---|---|
(1)人を育てる余裕が職場になくなってきている | 60.2% | 35.3% |
(2)組織・職場とのつながりを感じにくくなってきている | 63.5% | 43.8% |
(3)仕事の全体像や意味を考える余裕が職場になくなってきている | 61.6% | 42.9% |