労働災害の判断要因

精神障害が業務災害か否かの基準

次の要件のいずれをも満たす精神障害は、業務上の疾病として取り扱われます。

(1) 対象疾病に該当する精神障害を発病していること
(2) 対象疾病の発病前おおむね6ヶ月の間に、客観的に当該精神障害を発病させるおそれのある業務による強い心理的負荷が認められること
(3) 業務以外の心理的負荷及び個体側要因により当該精神障害を発病したとは認められないこと

業務による心理的負荷の強度については、「本人がその出来事及び出来事に伴う変化等を主観的にどう受け止めたかではなく、同種の労働者が、一般的にどう受け止めるかという観点から検討されなければならない」(厚生労働省 労働基準局の認定基準 平成11.9.14 基発第544号)とされています。

例えば、成績の上がらない営業社員に対して、営業課長が「お前のようなヤツは辞めてしまえ」と怒ったところ、その一言にショックを受けて従業員が自殺したとします。

そうした場合に、この自殺を仕事が原因かどうかの判断が求められますが、営業社員の誰でもが自殺に追い込まれやすいほどの一喝であり、職場の状況であったなら、業務と自殺の間に相当因果関係があったと認められることになるでしょう。

病気の原因となるストレスや過酷な残業を放置していて、労働者がうつ病に罹患した場合は、会社側の「安全配慮義務」が問われることになりかねません。


主治医は診断書に本当の病名を書かないことがある

主治医の診断書には、精神病科的診断名が曖昧に表現されることが少なくありません。

正確な病名を標記した場合、往々にして患者の身分が危険にさらされることを主治医が危惧しているためです。

「ノイローゼ」「心因反応」「自律神経失調症」「神経衰弱」「不眠症」などの症状名が便宜的に使用されます。

こうしたことからも、復職の判断にあたっては、直接の上司以外の職場関係者(産業医、非常勤精神科医、保健師、カウンセラー、人事労務担当者)などの関与が重要となってきます。

研修医教える指導医も2割うつ状態 仕事量がストレスに

病院で研修医を教える指導医の2割が「うつ状態」に陥っていることが、臨床研修での研修医のストレスを調べている文部科学省の研究班(研究責任者=前野哲博・筑波大助教授)の調査でわかった。

同研究班の調査では、研修医の4人に1人がうつ状態に陥っていることがすでに明らかになっている。

指導医が研修医に与える影響は大きく、研究班は「病院は指導医が余裕を持って気持ちよく指導できる態勢を整えるべきだ」としている。

調査は04年度に各地で開かれた指導医養成講習会などの参加者に実施。

「週3日以上直接研修医を指導している」実質的な指導者175人をみると、うつ病になる可能性が高い「うつ状態」と判断された人が37人(21%)にのぼった。

要因では、対人関係や仕事の質よりも「仕事量が多い」ことをストレスに感じている人が多かった。

実際、1週間の平均勤務時間は75.7時間と多く、前野助教授は「通常の診療だけでも忙しい中、さらに指導もしなければならず、負担感が強い」と分析。一方で指導医の仕事の達成感は高く、「疲れてはいるがやりがいは感じており、熱意に頼っているのが現状」とみる。

同研究班が03、04年度に研修医を対象に行った調査では、初期研修開始後にうつ状態になった人が、1~2ヶ月後の時点で約25%いたことから、今回は指導医を対象に調べた。

研究班では「研修医のストレスを緩和するには指導医の役割が非常に大きい。病院側は指導を業務としてカウントし、その分診療の負担を減らすなどすべきだ。指導医のストレスが減れば研修医も精神面が安定し、ひいては良い医療の提供につながる」としている。

(asahi.com 2005.6.21)


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