現職復帰の原則
「まずは現職へ復帰」が原則
復帰にあたって、職場上司は次の原則を知っておくべきです。
(1) | 特別な理由がない限り、元の職場に復帰させる。 |
(2) | 他の部下と同様に処遇し、特別扱いしない。 |
(3) | 作業内容は元の仕事に比較して単純なものを労働時間に見合った量だけ与える。 |
(4) | 復職者の心理状態には波があるので、良好な状態、低下した状態、平均的な状態に区分し、それぞれのレベルと持続時間を総合して回復状況を把握する。 |
(5) | 順調に回復しているようにみえる場合でも、3~6ヶ月後に再発することがある。 |
(6) | 長期間にわたる定期的な通院が必要な者が多いが、「通院することはよいことだ」と支持する。 |
(7) | 医師から処方されている薬を飲むことに対する否定的な発言をしない。 |
(8) | うまくいかないことも多い。自分だけで背負い込まないこと。産業医との連携が重要である。 |
職場復帰に関しては、好ましい勤務先への配置転換や異動の可能性があったとしても、「現職復帰」が原則となります。
新しい環境に適用するためには、心理的な負担を要し、疾病の再発・再燃に結びつく可能性が指摘されています。
まずは現職に復帰させ、ある程度のペースがつかめるまで業務負担を軽減しながら経過を観察し、その上で配置転換や異動を考慮した方が良い場合が多いと考えられます。
ただし、異動等を誘因として発症したケースにおいては、適応できていた以前の職場に戻すか、または他の適用可能と思われる職場への異動を積極的に考慮した方が良い場合もあります。
本人の了解がないまま、業務負荷軽減に配慮して閑職に回すと、左遷されたと感じ、症状が悪化の要因となることもあります。
うつ病の場合
職場復帰に当たっては、単純にできる仕事から、だんだんに元の業務に戻していくようにします。再発しないように配慮することが「安全配慮義務」の一つであると心得てください。
大まかな目安として、症状が改善してからおおむね1ヶ月間安定した状態が続いたことを確認してから復職するくらいのタイミングがいいと思います。
休職中、本人が心配するだろうと思って、仕事の資料等を自宅に送るのはマイナスとなります。
気分転換だと言って、スポーツや旅行に引きずり出すのも、本人にはありがた迷惑になります。
少なくとも復職前2週間程度は就業中と同じ時間に起きて、昼間一定の活動(散歩でも、ジムや図書館通いでもかまいませんが)がなされていることを確認するようにします。
つまり、復職をシミュレートしていくわけです。この過程は、本人に自信を持たせる意味もあります。
リハビリ出勤中に、「今日は調子がいいので1日働きたい」と本人が希望したとしても、指示された時間を守る必要があります。
再発防止のためには徐々に仕事に慣れさせていった方がベターです。
超過勤務は最初の1~3ヶ月の間なしにして、様子を見ながら主治医の判断を仰ぐことが望ましいでしょう。
営業職なら、最初は営業サポートのような仕事をしてもらいながら、様子を見るようにします。当初は定型的な業務で、納期のきつくない仕事から始めてもらいます。
また、週に1回程度、定期的に上司や健康管理スタッフと面談を行って、業務が過剰な負担になっていないか、職場の人間関係はどうか、体調はどうかなどに関してモニタリングするようにします。
復職を円滑に行って成功させるためには、適切な助言の得られる専門医(主治医とは別に)の関与があった方がよいと思います。