ケーススタディ

傷病か労災か

労働災害による病気やけがに対しては、健康保険は使えません。

したがって、最初に健康保険を利用し、後日労災へ切り替えるとなると、いったん支給された給付額を返納して・・・といった手続きが生じ、事務的に煩わしくなります。

したがって、明らかに労災であると認められる場合は、できるだけ早く労災申請することをお勧めします。

けがが交通事故による場合などは、相手に過失があると、労災を給付した国が被害者に代わって事故の相手方に求償する手続きもあります(第三者行為災害)。

しかしその反面、労災は認定されるかどうかの判断に時間がかかる場合があります。

また、最終的に労災認定されない場合も少なくありません。

こうしたケースでは、まずは健康保険の傷病手当金受給の手続きを進める方が無難です。


傷病手当受給中のアルバイト

傷病手当金は、仕事ができない場合の所得保障が趣旨ですから、給与の支払いがあった場合には原則支給停止されます。

ですが、アルバイトによる報酬が傷病手当金より少ない場合は、傷病手当金との差額が支給されることとなっています。

支給停止になるかどうかは、アルバイトで収入の多寡によって変わってきます。

なお、傷病手当金は、いったん回復しても同じ病気が悪化して欠勤になった場合は、再度支給されます。

この場合は待期期間もありません。


傷病手当金と障害年金

傷病手当金の受給期間中に障害年金または障害手当金を受けるようになった場合は、以下のように取り扱われます。

  • 傷病手当金>障害年金/障害手当金・・・差額を支給
  • 傷病手当金<障害年金/障害手当金・・・支給打ち切り

※労災補償の休業補償金を受けている場合は、支給されません。


病気見舞金などの取り扱い

事業主から支払われる見舞金は、それが全く恩恵的に支給されるものであれば報酬とは認められませんが、見舞金名目で一定額(あるいは通常の給料の何割か)を支給される場合は、報酬と考えられます。

このような事実があれば、たとえ見舞金という名目であっても、傷病手当金の支給額から控除されることになります。


メンタルな病気でも傷病手当はもらえる

精神的な病気でも、傷病手当はもらえますが、いくつか条件があります。

  1. 労務が不能であること。労務に耐えないという医師の「意見書」が必要です。
  2. その病気による休みが、連続して3日以上あること。
  3. 健康保険の被保険者であること

上記を満たしていたら、申請した方がいいでしょう。

注意した方がよいのは、退職後の療養にも傷病手当金が出されますが、退職後に申請をしても認められないということです。

手続きは、健康保険組合であれば健康保険組合、政府管掌健康保険であれば管轄日本年金機構です。手続きについては、そちらで聞いてみた方がよいでしょう。

症状が出たら、まずは、病院で診断を受けてください。

そして、現在の自分の精神状態を医師に訴えて、就労不可の診断書を書いてもらいます。

診断書が出たら、直ちに休職に入ると同時に、傷病手続きを取ります。

また、毎月、医師に「傷病手当請求書」に診断項目を書いてもらわなくてはなりません。

医師には精神面での窮状について正直に報告し、適切な診断結果を求めるようにします。

第一回の申請には、健康保険傷病手当金請求書、出勤簿、賃金台帳等が必要です。


ケースによっては労災適用も

会社での精神的ストレスで病気になった場合は、労災保険が適用となる可能性もあります。

例えば、職場での同僚のいじめなどが原因で精神疾患に陥り就労が不可能になったような場合、これが証明できれば、労災の適用を受けうる可能性があるのです。

労災の場合は、健康保険などとは比べ物にならないほど労働者の保護がされています。

ただし、慢性的な疾患は、仕事中に転んでしまったというような場合と違って証明が難しく、また、会社側が労災に前向きでない場合はこじれる可能性がありますので、認定は簡単ではないともいえます。

労災適用の可能性がありましたら、労働基準監督署に照会してみるとよいかもしれません。


傷病手当金と見舞金の税務

事業主が従業員の傷病に対して支給する見舞金は、恩恵的に支給するものは報酬ではありませんが、労働協約で労務不能のとき、傷病手当金との差額を事業主が見舞金で支給する場合は、名目は見舞金であっても、雇用関係に基づいて従業員の生活保障として支給させるので、報酬となり課税されます。


傷病手当金受給中に退職する場合

傷病手当金を受けている者が退職等により資格を喪失した場合、資格を喪失した前日までの資格期間が継続して1年以上あるものは引き続いて1年6ヶ月間の期間が満了するまで傷病手当金が支給されます。

退職後も引続き健康保険の被保険者資格を希望する場合は、健康保険任意継続被保険者資格取得申請を資格喪失から20日以内に住所地の日本年金機構に提出することにより引き続き最長2年間の健康保険の被保険者資格を取得することができます。

関連事項:健康保険の任意継続・継続給付等→

なお、退職後も傷病手当金を受けている間は失業扱いは受けず雇用保険の適応は就労可能となった後からとなりますが、雇用保険の保険期間が、退職日から1年間ですので場合により雇用保険の給付を受けられなくなる場合もあり退職後住所地のハローワーク(職業安定所)の給付窓口にて受給期間延長手続を行ってください。

関連事項:雇用保険の受給期間の延長


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