解雇を争う場合の資格

解雇の効力を争う場合の被保険者資格

解雇の効力について係争中の場合、被保険者資格喪失の取り扱いについては、仮給付の通達があります。(昭和25.10.9 保発第68号、下記参照)

事業主がこれに基づいて被保険者資格喪失届を提出し、保険者が受理してしまった場合は、資格を喪失したものとして扱われるので、保険証の返還を拒み、それを使用しても、後日病院等から直接請求を受ける恐れがあります。

なお、厚生年金保険の被保険者資格の取り扱いについても同様です。

資格喪失届の扱い

解雇の効力について係争中の場合でも事業主から被保険者資格喪失届の提出があったときは、資格を喪失したものとして処理されます。

ただし、解雇が労働法規または労働協約に明らかに違反しているときは受理されないことになっています。

資格喪失の処理の取消

従業員としての地位を仮に定めるとの仮処分決定が出された場合、従業員としての地位を確認する判決が確定した場合、不当労働行為の救済命令が確定した場合は、当該判定に従い遡及して資格喪失の処理が取り消されることになります。

この間、自費で診療を受けた者に対しては、療養の給付を受けることが困難であったものと認めて、療養費を支給することになります。

逆に、解雇無効が決定されていたものが本訴で覆され、解雇行為が遡及して成立した場合は、その間の保険料を返還しなければならなくなります。

事業主にも、徴収した保険料が返還されます。

解雇の効力につき係争中の場合における健康保険の取扱について

最近企業合理化を行う事業や新聞報道関係等において解雇が行われているが、これに関して労資双方の意見が対立し被保険者資格の喪失について疑義を生じた場合においては、左記により取り扱うこととなったので通知する。

1 解雇行為が労働法規又は労働協約に違反することが明らかな場合を除いて、事業主より健康保険法施行規則第10条第2項の規定による被保険者資格喪失届の提出があったときは、当該事件につき労働委員会に対して、不当労働行為に関する申立(条文省略)、斡旋(条文省略)、調停(条文省略)、若しくは仲裁(条文省略)の手続がなされ、又は裁判所に対する訴の提起若しくは仮処分の申請中であっても、一応資格を喪失したものとして、これを受理し、被保険者証の回収(回収不能の場合は被保険者証無効の公示をなすこと。)等所定の手続きをなすこと。

右労働法規又は協約違反の有無について、各保険者が一方的にこれを認定することは困難且つ不適当であるから、当該保険者ににおいては、労働関係主管当局の意見を聞く等により、事件結着の見通しを慎重検討の上処理すること。

なお、本年7月18日付マッカーサー書簡の趣旨に基き、新聞等報道関係において行われた解雇は、労働法規又は協約に違反しないものとしてこれを取り扱うこと。

なお、解雇された被保険者で、被保険者証を事業主に返還しないものに対しては、不当使用の際には詐欺罪として処罰される旨の警告をなさしめること。

2 右の場合において労働委員会又は裁判所が解雇無効の判定をなし、且つ、その効力が発生したときは、当該判定に従い遡及して資格喪失の処理を取り消し、被保険者証を事業主に返付すること。

3 右の場合において解雇無効の効力が発生するまでの間、資格喪失の取扱のため自費で診療を受けていた者に対しては、療養の給付をなすことが困難であったものとして、その診療に要した費用は療養費として支給し、その他現金給付についても遡って支給すると共に保険料もこれを徴収すること。

4 第一項の申立又は仮処分の申請に対する暫定的決定が本裁判において無効になり、解雇が遡って成立した場合には、すでになされた保険給付は被保険者から返還されることとし、又徴収済保険料は事業主から還付請求に基いて還付手続をなすこと。

5 厚生年金保険における取扱についても、右に準じて適切な措置を取ること。

(昭和25.10.9 保発第68号)


健康保険から抜けると

退職すると、その翌日から国民健康保険に加入することになります。

たとえ1年後に、今日から国民健康保険に加入したい、と手続きしても、1年前からの保険料を払わされることになります。

国民健康保険では、その人が、いつ社会保険から抜けたのかが確かめられれば用は足ります。

社会保険の資格を無くした、つまり、資格喪失証明書を会社で書いてもらう、あるいは、退職証明書でも、社会保険を抜けた日さえ分かれば、それで十分です。

離職票が必要だといわれる場合があるようですが、会社にその場で書いてもらえる、資格喪失証明か退職証明で十分でしょう。

退職後しばらくしてから、あなたが国民健康保険の手続きに行くと、過去に社会保険を抜けた月分からの保険料を請求されます(ただし、2年を過ぎた分は時効となります)。

無保険のまま放置すると、事故などで身体障害者になった場合、生涯、障害年金がもらえなくなる可能性があります。


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