退職後の健康保険の選択
退職の際に注意すべきこと
退職等のため被保険者資格を失うと、5日以内に健康保険証を返納することになっています。
これにより事業主は、管轄の日本年金機構へ「被保険者資格喪失届」を提出します(資格喪失日は退職日の翌日となります)。
国民健康保険に加入するためには、保険者の資格喪失証明が必要ですが、この手続きには健康保険証を返納する必要があります。
資格喪失後の保険給付(継続給付)
健康保険の保険給付は、被保険者に対して行われるのを原則としていますが、退職などにより被保険者でなくなった(資格喪失)後においても、一定の条件の下に保険給付が行われます。
傷病手当金
病気やけがにより、療養のため働くことができず給料の支払いを受けられないとき、労務不能の日から起算して4日目から通算して1年6ヶ月を限度に、【支給開始日以前の継続した12ヶ月間の各月の標準報酬月額を平均した額】÷30日×2/3が、傷病手当金として支給されます。
資格喪失前に引き続き1年以上被保険者期間があり、傷病手当金を受けている間に資格を喪失したときなどにおいて、残りの期間保険給付を受けることができます。
なお、本人が資格を有している場合(=在職中)は、被保険者期間1年以上の制限は適用されません。
出産手当金
出産手当金は出産前後あわせて原則98日間の範囲内で、支給を受ける権利があります。
被保険者であったときに、すでに支給を開始している場合、被保険者資格を失っても残りの期間については、支給を受けることができます。
資格喪失後に改めて給付事由が発生する場合
死亡に関する給付
以下の場合に、適用されます。
- 継続給付中の人が死亡した場合
- 上記の人が、継続給付を受けなくなってから3ヶ月以内に死亡した場合
- 被保険者が資格を喪失してから、3ヶ月以内に死亡した場合
出産に関する給付
資格を喪失する前日まで継続して1年以上被保険者であった人が資格喪失後、6ヶ月以内に出産した場合には、被保険者として受けられる出産育児一時金が受けられます。
関連事項
母性保護→
選択肢の例
退職した後は、本人も家族も今まで通りの保険診療やその他の給付を受けられず、次のうちから一つを選択しなければなりませんので、年金事務所等とよく相談してください。
- 再就職し、他の健康保険の被保険者となる。
- 家族の健康保険の被扶養者に入る。
- 退職前の健康保険の任意継続被保険者の資格を得る。
- 国民健康保険に加入する。
保険種類ごとの違い
項目 | 健康保険 | 健康保険の 任意継続被保険者 |
国民健康保険 | 家族の被扶養者 |
---|---|---|---|---|
状況 | 再就職した場合 | 退職した場合 | 退職した場合 | 年収130万円未満の場合 ※1 |
加入条件 | 常用雇用者として健康保険のある職場に勤めること | 退職した日までに継続して2ヶ月以上健康保険の被保険者であったこと | 健康保険に加入していないこと | 年収や家族との同居等の条件が満たされていること |
加入期間 | 職場での在職期間中 | 最長2年 | 制限なし | 制限なし |
本人負担 | 通院3割 入院3割 |
通院3割 入院3割 |
通院3割 入院3割 |
通院3割 入院3割 |
家族負担 | 通院3割 入院3割 |
通院3割 入院3割 |
通院3割 入院3割 |
- |
保険料 | 労使折半(原則) | 全額自己負担 | 市区町村で異なる | 扶養者が負担 |
手続期限 | 再就職後 | 退職の翌日から 20日以内 |
退職の翌日から原則14日以内 | 退職の翌日以降 |
窓口 | 再就職先 | 日本年金機構又は健康保険組合 | 市区町村 | 日本年金機構又は扶養者の健康保険組合 |
※1 60歳以上又は障害者厚生年金、障害者基礎年金受給者は年収180万円未満