改正労働基準法解説レポート

令和5年4月1日から、月60時間超の割増賃金率の引き上げが中小企業にも適用となります。
法改正による新制度の導入方法について、詳しく解説したマニュアルを無料提供しています。
サンプル条文や改訂例を参考に、就業規則の改訂を行ってください。

延長できる時間

延長時間について

時間外労働に関する協定は、以下の3種類の期間についての延長時間を協定しなければなりません。

  1. 1日、
  2. 1日を超え3ヶ月以内の期間、
  3. 1年間、

1日についてのみ、または一定期間についてのみの協定は要件を満たさないので、双方を協定しなければなりません(1日のみの協定、フレックスタイム制の協定はこの限りではありません)。

1日の延長時間の限度

危険有害業務以外について、1日の延長時間の限度についての規制は原則としてありません。

危険有害業務で、法令で定める業務に従事する者の時間外労働の上限は1日2時間とされていますが、この具体的な業務は以下の通りです。

  • 坑内での労働
  • 多量の高熱物体取扱・著しく暑熱な場所の業務
  • 多量の低温物体取扱・著しく寒冷な場所の業務
  • エックス線などの有害放射線に曝される業務
  • 土石などのじんあい・粉末を著しく飛散する場所の業務
  • 異常気圧下業務
  • さく岩機などの使用による著しい震動業務
  • 重量物取扱などの重激業務
  • ボイラー製造などの強烈な騒音発生場所の業務
  • 鉛・水銀などの有害物発散場所の業務

1日を超える期間の延長時間の限度

「1日を超え3ヶ月以内の期間」と「1年間」についての延長時間は、その期間ごとに限度時間が決められています。

時間外労働の上限

限度時間の適用除外

ただし、次の事業又は業務には限度時間は適用されません。

  1. 工作物建設等の事業
  2. 自動車の運転の業務
  3. 新技術・新商品等の研究開発の業務
  4. その他労働厚生省労働基準局長が指定する事業又は業務(郵政事業の年末年始における業務、船舶の改造・修繕に関する業務など。ただし、1年間の限度時間は適用されます。)

法定内の時間外労働について

36協定の延長時間は本来、法的外の労働時間について協定すべきものですが、トラブルを防止するために、延長時間を協定する際、所定労働時間を超える「法定内」の時間外労働の取り扱いについても、労使で取り決めておく必要があります。


休日の労働

「労働させることができる休日」に関する協定事項は、通常、一定期間に労働させることのできる休日の日数(回数)を協定すればよいとされています(例:「法定休日の内、月2回まで」「所定休日の内、月3回まで」等)。

なお、協定が必要なのは法定の週1回の休日であって、この基準を上回って与えることにしている国民の祝日、会社創立記念日等は含まれません。したがって、これらの休日に出勤させるときは、それによって1週間の労働時間が40時間を超えることとなる場合等を除き、36協定は不要です。

週休2日制を採用している事業場が週2日の休日のうち1日のみ出勤させる場合にも、1週間の労働時間が40時間以内となるのであれば、36協定を結ぶ必要はありません。


変形労働時間の場合

週の労働時間が必ず40時間以内で収まり、1日の労働時間が必ず8時間を超えないなら、36協定の必要はありません。

たとえば、週4日、36時間の勤務態勢で、1日10時間の日と6時間の日があらかじめ決まっており、必要な手続きをした上で変形労働時間制を取っていれば、6時間の日に2時間以内の残業をさせるための36協定は必要ないことになります。

しかし、そのような企業は滅多にありません。「ウチは変形労働時間制だから残業代は出ない」というケースでは、単なる賃金不払残業の可能性が大だといえます。


「健康上特に有害な業務」は1日2時間までの残業制限

「坑内労働その他命令で定める健康上特に有害な業務の労働時間の延長は、1日について2時間を超えてはならない。」(労働基準法36条但書、業務の指定は労働基準法施行規則18条)と決められています。

なお、1日2時間までとは「指定の有害業務を主たる内容とする業務(関連する作業を含めた一体の一連の業務)に従事した時間数が法定労働時間に2時間を加えた時間まで」と解されています。

これは、休日労働の場合にも適用され、休日労働は、最長10時間までに制限されます。


有効期間

36協定には、それが労働協約である場合を除いて、有効期間の定めが必要です(労働基準法施行規則16条2項)が、現在は、有効期間の長さについて制限条項は置かれていません。

しかし、労基署の窓口では「36協定の有効期間は最長でも1年間とすることが望ましい」とする指導方針をとっているので、協定は、基本的に1年以内の有効期間で締結すべきと考えられます。


自動更新

労働基準法施行規則17条は、36協定の更新手続を規定していますが、この取り扱いに関して次の解釈例規があります。

「36協定の有効期間について自動更新の定めがなされている場合には、更新の届出は、当該協定の更新について労使双方から異議の申出がなかった事実を証明する書類を届け出ればよい」。(昭和29.6.29 基発第355号)

実務的には、「○年○月○日に締結し届出済の時間外、休日労働に関する協定は、同協定第○条に定めるところにより労使異議なく、これを自動更新したのでお届けする。(労使連署捺印)」ということになります。

なお、有効期間が短期(1~3ヶ月等)の場合の自動更新は別として、有効期間が1年間のような協定の繰返しの自動更新は制度の趣旨からみて望ましいことではないといえます。


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