改正労働基準法解説レポート

令和5年4月1日から、月60時間超の割増賃金率の引き上げが中小企業にも適用となります。
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有給休暇の分割

法定部分と法律を上回る付与部分で扱いが異なる

法定部分は原則として分割できない(平成22年4月より取得可能)

労働基準法で定められた年休については、日単位(労働日)で与えられるもので、「24時間の労働義務を免除」ということが原則ですから、分割するのは、原則として許されませんでしたが、平成22年4月1日より、労使協定を締結すれば時間単位での有給休暇取得が可能となります。

労働基準法第39条に規定する年次有給休暇は、1労働日を単位とするものであるから、使用者は労働者に半日単位で付与する義務はない。

(昭和24.7.7 基収1428号、昭和63.3.14 基発150号)

年次有給休暇、時間単位で取得可能に

厚生労働省は最低取得単位が原則1日とされている年次有給休暇制度について、労使協定を締結した場合、年次有給休暇のうち5日を限度とし、時間単位で取得できる制度を平成22年4月1日より施行する。

通院や子供の幼稚園への送迎など、数時間だけ職場を離れなければならないケースも「有給休暇」に組み入れることが可能になる。

雇用形態の多様化にも対応しやすいほか、女性の就労を促す効果もあるとしている。

【労使協定で定める事項】

  1. 対象労働者の範囲
  2. 時間単位の年休の日数
    所定労働時間8時間の場合、時間単位年休は
    8時間×5日分=40回 取得可能となる
  3. 時間を単位として与えることができることとされる有給休暇1日の時間数
    付与される時間は1日の所定労働時間を下回ってはならない
    (例1)所定労働時間が 7時間 →7時間付与
    (例2)所定労働時間が 7時間半→8時間付与
  4. 1時間以外の時間を単位として時間単位年休を与えることとする場合には、その時間数
    (例)2時間を1単位→2時間が有給付与の最小単位として扱う

例外的に午前・午後の分割が許される

「使用者は労働者に半日単位で付与する義務はない。」という上記通達を逆読みするなら、年休を半日単位で取得することも使用者が認めるなら許されることになります。(高宮学園事件 東京高裁 平成7.6.19)

ただし、半日取得を認めた場合、「半日」の意味(1労働日を正午で区切るのか、または所定労働時間の半ばで区切るのか)、あるいは、半日の年休を取った後に残業した場合に残業手当を支払うか否かについて、問題が生じる可能性があります。

このため、半日年休を認める場合には、こういった取扱いについて就業規則に明示しておく必要があるといえるでしょう。


法定の有給休暇中に緊急出勤させると

有給休暇(法定部分)で休んでいる日に、緊急の用事で会社に呼び出されるということは、あり得ることです。

この場合、会社は丸1日の休暇を付与しなかったわけですから、休暇を与えたことにはなりません。その分の休暇は、別の日に与えることになります。

法定の有給休暇中に緊急出勤の取り扱い

賃金の扱いですが、実際に会社で仕事をしていた時間帯は当然のことながら賃金支払いが必要です。

「始業時刻~業務開始」までの時間については、「使用者の責に帰すべき休業(労働基準法26条)」と考えられますから、少なくとも6割の休業補償を支払わなければ法律的には問題となります。

緊急の応援が終わってから後は、有給休暇が出勤日となったことから、働く義務のある時間です。これを本人が早退した場合、会社として補償する義務があるかどうかは微妙な判断となります。


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