不利益取扱いの禁止


労基法は年休取得を理由として不利益取扱い(精皆勤手当や賞与の減額、欠勤扱いとすることによる不利な人事考課など)を禁止しています。(労働基準法136条

また、年休の取得理由、取得目的については使用者の干渉を許さない労働者の自由であるとしています。


法的に違法な不利益取扱い

年休取得日を欠勤扱いとするような不利益扱いは無効

賞与の計算に際して年休取得日を欠勤として扱い賞与を減額することは、許されないとされています。

エス・ウント・エー事件 最高裁 平成4.2.18

会社は、就業規則の改正により、週休日以外の祝日・土曜日・年末年始の休日を欠勤として扱い、年休権成立の全労働日に含ませた。

そして年休権を行使した労働者の出勤率を8割以下として、年休請求権は成立しないと主張した。

最高裁は、年次休暇の取得日の属する期間に対応する賞与の計算上、この日を欠勤として扱うことはできない、と判断し、この取り扱いを違法・無効とした。

年休権の行使を抑制する場合

例えば、1ヶ月間遅刻・欠勤がゼロの者に対して支払われる皆勤手当を、年休取得者に支給しないような場合です。

法の趣旨及び行政指導においては、年休取得を抑制するような行為は認められていません。

労働基準法第136条

使用者は、第39条第1項から第3項までの規定による有給休暇を取得した労働者に対して、賃金の減額その他不利益な取扱いをしないようにしなければならない。

精皆勤手当及び賞与の額の算定等に際して、年次有給休暇を取得した日を欠勤として、又は欠勤に準じて取り扱うことその他労働基準法上労働者の権利として認められている年次有給休暇の取得を抑制するすべての不利益な取扱いはしないようにしなければならない。

(昭和63.1.1 基発第1号)

不利益取扱いの趣旨、目的、労働者が失う経済的利益の程度などを総合的に判断されます。

しかし、現実にそうであるかどうかの判断は容易ではありません。

実際に年休を取得したタクシー運転手に精皆勤手当等が支給されなかった案件について、裁判所は以下の通り手当の減額を認める判断をしています。

練馬交通事件 東京地裁 平成16.12.27

タクシー乗務員が年休を取得した場合、皆勤手当・安全服務手当が不支給となる。この額は1ヶ月最大1万4500円であり、月例賃金総支給額の1.99~7.25%に及んだ。年休買取の制度はなかった。

会社は、交番表作成後の代替要員確保が困難であり、運転手の出番完全常務を奨励するためのもので、年休行使を抑制するものではなく、事実、年休も取らせていたと反論した。

裁判所は、労働基準法136条は努力義務規定であり、会社の取扱いは法の趣旨に沿わないが、無効とまではいえず、手当ての不支給は有効である、とした。

沼津交通事件 最高裁 平成5.6.26

約4,000円の皆勤手当を1日欠勤(年次有給休暇取得)で半額支給、2日欠勤(年次有給休暇取得)で不支給という取扱いをしていた。

「勤務予定表作成後に年休を取得した場合には、手当の全部または一部を支給しない」という取り決めとなっていた。

最高裁は労働基準法136条の規定は、それ自体としては、使用者の努力義務を定めたものであって、労働者の年次有給休暇の取得を理由とする不利益取扱いの私法上の効果を否定するまでの効果を否定するまでの効力を有するものとは解されない、としたうえで、

タクシー会社の乗務員が月ごとの勤務予定表作成後に年次休暇を取得した場合に皆勤手当を支給しない旨の右措置は、法39条、134条(※現、136条)の趣旨からして望ましいものではないとしても、労働者の同法上の年次有給休暇取得の権利の行使を抑制し、ひいては同法が労働者に右権利を保障した趣旨を実質的に失わせるものとまでは認められないから、公序に反する無効なものとまでいえない。

その根拠として、年休取得による皆勤手当の額が相対的に大きいものでなく(月額給与の最大1.85%) 乗務員への「報償」として設けられていること、労働者は43ヶ月のうちに42日の年休を取得していること、それ以外の年休9日分についてはタクシー会社が金銭補償(年休の買い取り)をしていることをあげている。

月算歩合制だと年休を取ると水揚げが減少し、結果、賃金額が減少しますが、これについては抗弁できません。

モデル・ハイヤー事件 高松高裁 平成1.9.26

歩合給の下での賃金の減少は、月算歩合制という賃金の算定方法に由来するものであって、この点では労基法39条、136条に反するものではない。


取得しない者を優遇した場合

逆に年休を取得しない従業員に対し、使用者が賞与等で優遇することは、次の2点から好ましくないといえます。

  1. 裏返せば、有給休暇を残さない者に対して不利益扱いとのそしりを免れません。
  2. 賞与で優遇することは、年休の買い上げと見なされるおそれがあります。

使用目的を聞けるか

使用者は労働者に年休の使用目的を尋ねられるか否かについては、原則として尋ねることができないと解されています。

林野庁白石営林署事件 最高裁 昭和48.3.2

年次休暇の利用目的は労働基準法の関知しないところであり、かつ本条三項但書の「事業の正常な運営を妨げる」か否かの判断は、当該労働者の所属する事業場を基準として決すべきであるから、他の事業場における争議行為等に休暇中の労働者が参加することによって、当該年休の成否に何ら影響を及ぼすものではない。

ただし、例外的に尋ねることができる場合として、以下のケースが考えられます。(此花電報電話局事件 最高裁 昭和57.3.18)

  • 時季変更権の行使を差し控えるかどうかを判断するために使用目的を尋ねる場合。
  • 同一の日に複数の労働者から時季指定が集中したために、そのうち一部の者に対して時季変更権を行使せざるを得ない場合。

したがって、こういったケースで労働者が使用者に虚偽の申告をしたとき、それが懲戒事由に該当する可能性も生じてくることになります。(古河鉱業足尾製作所事件 東京高裁 昭和55.2.18)

一斉休暇闘争のようにストライキのために年休を利用する場合は例外であって、これは「年休に名を借りた同盟罷業にほかならない」(昭和48.3.2 最高裁第二小法廷判決)とされています。

この場合でも、所属事業場の場合のみに該当するのであり、他の事業場の争議行為等に休暇中の労働者が参加したか否かは、なんら年休の成否に影響するところではありません。


書面による申請を義務付けられるか

就業規則等で、年休の時季指定は書面によるものと規定し、これに違反した時季指定権の行使を否定することは、許されると解されています。(東京中央郵便局事件 東京地裁 平成5.1.27)


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