改正労働基準法解説レポート

令和5年4月1日から、月60時間超の割増賃金率の引き上げが中小企業にも適用となります。
法改正による新制度の導入方法について、詳しく解説したマニュアルを無料提供しています。
サンプル条文や改訂例を参考に、就業規則の改訂を行ってください。

週平均40時間における1ヶ月の総労働時間

31日の月は177.1時間が限度(週40時間の場合)

週平均40時間における1ヶ月の総労働時間

1月の日数 週40時間の場合 週44時間の場合
1ヶ月31日の月 177.14時間 194.85時間
1ヶ月30日の月 171.42時間 188.57時間
1ヶ月29日の月 165.71時間 182.28時間
1ヶ月28日の月 160.00時間 176.00時間

この限度時間を超えた部分は、超過勤務となります。

たとえば、2016年6月は、1ヶ月30日で、土日は8日、祝祭日はありません。

仮に1日8時間勤務、完全週休2日制だとすると月間勤務時間は、8時間×22日=176時間となります。同じ条件で1ヶ月単位の変形労働時間を導入する場合は、約4時間30分の勤務時間を短縮しなければならないことになります。


1ヶ月単位の変形労働時間制と必要とされる休日日数

逆に、月間の勤務日(週40時間の場合)を算定すると、以下のようになります。

1月の日数 月間の勤務日(週40時間の場合)
月31日 177.14時間÷8時間=22.14日
月30日 171.42時間÷8時間=21.42日
月29日 165.71時間÷8時間=20.71日
月28日 160時間÷8時間=20日

これから逆算して、月の最低必要な休日数をまとめると次の表になります。

1日の所定労働時間数 31日 30日 29日 28日
8時間 9 9 9 8
7時間30分 8 8 7 7
7時間15分 7 7 7 6
7時間 6 6 6 6

※6月のように国民の祝日がないような月が、月間労働時間の総枠から超えないように、休日の規定には留意しましょう。

※さらに細かく計算すれば、例えば1日7時間30分だと30日の月は、2月以外はすべて8日休日が原則ですが、実際は半日の余裕があるので、8日の休日のうち1日を半日勤務にしても週40時間に納まることになります。


適用期間の特定

制度を導入するにあたって、労働時間が週法定労働時間を超える「特定の週」または「1日8時間を超える特定の日」を定める必要があります。

単に「会社は1ヶ月を平均し、1週間の労働時間が40時間を超えない範囲において1日8時間、1週40時間を超えて労働させることがある」といった抽象的な定めでは適切ではありません。

各日の所定労働時間が何時間になるのかについて、具体的な特定が必要です。


育児を行う者等に対する配慮等

1ヶ月単位の変形労働時間を導入する場合には、育児を行う者、老人等の介護を行う者、職業訓練または教育を受ける者その他特別の配慮を必要とする者については、これらの時間を確保できるよう、配慮しなければならないとされています。(労働基準法施行規則12条の6)

また、妊産婦(妊娠中の女性および産後1年間を経過しない女性)が請求した場合には、1日8時間、1週40時間を超えて労働させてはいけません。(労働基準法66条


変形労働時間設定後に、事業主が設定時間を変えられるか

これには、変更否定説と、変更肯定説があります。

判断基準は、以下の通りです。

  • 使用者側の変更の必要性
  • 労働者側の生活への影響

判例では、「労働者側から見て予測することが可能な程度の変更事由が具体的に定めること」が必要であり、労働者の生活に与える不利益が最小限であれば、労働基準法32条の2に違反しないとしています。(JR東日本・横浜土木技術センター事件 東京地裁 平成12.4.24、JR西日本・広島支社事件 広島高裁 平成14.6.25)

他方、「会社の業務上の必要がある場合は、指定した勤務を変更することがある」といった包括的変更条項があったとしても、これでは労働者側の予測が困難であるとされ、労働基準法32条の2の「特定」だとする要件に欠けるので、無効だとされました。

なお、変更後の単位期間の労働時間が法定労働時間の総枠を超えれば、その労働時間は時間外労働となります。(昭和63.1.1 基発1号)


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