改正労働基準法解説レポート

令和5年4月1日から、月60時間超の割増賃金率の引き上げが中小企業にも適用となります。
法改正による新制度の導入方法について、詳しく解説したマニュアルを無料提供しています。
サンプル条文や改訂例を参考に、就業規則の改訂を行ってください。

1週間単位変形労働時間制とは

対象業種

小売業、旅館、料理店および飲食店の30人未満の事業所


1日の就業時間は10時間以下とする。

ただし、1週は40時間以下に収めなければなりません。

各日の就業時間は、あらかじめ就業規則に定めなくてよいのですが、前の週末に決め、従業員に書面で通知しなくてはなりません。

例えば、日曜日から土曜日までの暦週単位で適用する場合には、前週末の土曜日までに、翌週の各日の労働時間を労働者に書面で通知することになります。

※緊急でやむを得ない場合は、前日までに書面で通知することにより、あらかじめ通知した労働時間を変更することも可能ですが、この緊急の理由とは、台風の接近とか豪雨など、当初予想した業務の繁閑に大幅な変更が生じた場合をいいます。

※10人未満の事業場で週労働時間が特例によって40時間以上となっている場合、この変形労働時間の適用を受ける場合は特例が認めらなくなります。

よって、週40時間以内におさめなければなりません。

(例1)

1週間の労働時間(例1)

この勤務割の範囲内で労働させる限り、36協定の届出および割増賃金の支払いは不要です。


労使協定を締結し、労働基準監督署長に届出ることが必要

労働時間の決定に際しては、労働者の意向を聞き、これを尊重するよう努力します。

緊急やむを得ず、すでに通知した労働時間を変更しようとする場合は、その日の前日までに、書面で労働者に通知します。


時間外労働となる時間

事前通知により8時間以上の時間が定められた日についてはその通知された時間を超えて労働した時間、それ以外の日には8時間を超えて労働した時間が、時間外労働となります。

(例2)

1週間の労働時間(例2)

上記例2では、1週間の労働時間は40時間以内となっていますが、8時間勤務の日に時間外労働を行っているので、1時間分の割増賃金が必要です。

また、週40時間を超える場合は、その部分も時間外となります(ただし、上記により時間外カウントされた部分の重複は除く)。

つまり、「7時間」の労働時間を割り当てられた日については、1時間の残業には割増賃金の必要はありませんが、その週全体で見て、40時間を超える場合は、割増の対象となります。

(例3)

1週間の労働時間(例3)

上記例3では、残業日の勤務時間は8時間に収まっているものの、週あたりの労働時間が40時間を超えるので、1時間分の割増賃金が必要です。

なお、これらに該当する場合には、36協定の締結届出と労働基準法37条に基づく割増賃金の支払いが必要です。

(例4)

1週間の労働時間(例4)

上記例4では、1日8時間、週40時間の範囲に収まっているので、割増賃金の必要はありません。

ただし、何も払わなくてもいいというわけではなく、所定の労働時間(週39時間)を超えて働かせた以上、2割5分増しではなくとも、通常の1時間あたりの賃金は支払う必要があります。


就業規則の定め

労使協定だけでは、変形労働時間制を労働基準法上適法化させる効果(いわゆる免罰的効果)しかありませんので、労働者にこの変形労働時間制の下で就労させる義務を生じさせるためにも、労使協定とは別に、就業規則等で労使協定の内容による就労義務を定める必要があります。


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