事業場外労働のみなし労働時間制


労働者が労働時間の全部または一部を事業場外で従事し、使用者の指揮監督が及ばないために、その労働時間の算定が困難な場合についてのみ、みなし労働時間が認められています。


みなし労働時間の3つのタイプ

みなし労働時間(「特定の時間」)には、次の3タイプがあります。

(1) 所定労働時間を労働したとみなされるもの。
この場合には、時間外労働は発生しません。
実際の労働時間が所定労働時間に満たない場合でも、所定労働時間労働したとみなされます。
(2) その業務を遂行するために通常必要とされる時間(所定労働時間を超える場合)を労働したとみなされるもの。
時間外手当の支給が必要です。
(3) 上記(2)の場合で、労使協定が締結されている場合、その協定の時間を労働したとみなされるもの。
協定で9時間と定められている場合は、1時間分の割増賃金が必要となります。

(2)の場合、「通常必要とされる時間」は、平均的にみてどうか、ということで判断されます。

しかし、現実には、事業場外での業務遂行にどの程度の時間がかかっているかを判断することは容易ではありません。

そこで、労使協定で決めた時間を労働時間とみなそうというのが(3)の趣旨になります。


事業場外労働の範囲

事業場外労働のみなし労働時間制の対象となるのは、事業場外で従事し、使用者の具体的な指揮監督が及ばず労働時間を算定することが困難な業務です。

みなし労働時間制の対象とならない業務

次のような業務は、労働時間の算定が可能であるため、みなし労働時間制の対象とはなりません。

  1. 何人かのグループで働くとき、そのメンバーの中に労働時間を管理する者がいる場合
  2. 無線やポケットベル等によって、随時使用者の指示を受けながら労働する場合
  3. 事業場で、訪問先・帰社時刻等当日の具体的指示を受けた後、指示どおりに勤務し、その後、事業場に戻る場合

コミネコミュニケーションズ事件 東京地裁 平成17.9.30

事業場外みなし労働時間制を適用の是非が問われた。

労働者は、出勤時刻・退勤時刻をIDカードに記録され、それを集計した就業状況月報が存在し、直行・直帰する場合は上司の許可が必要であり、携帯電話と営業日報によって外勤中の行動把握がされていた。また、遅刻・早退の場合は1時間単位で欠勤扱いとされていた。

裁判所は、賃金未払約495万円を認容した。同額の附加金請求については、会社が民事再生中であることなどから、300万円が相当であるとした。

なお、会社は、営業社員について支給されていた「営業報奨金」が、時間外手当に代わるものであると主張したが、この報奨金は、実際の労働時間とは関係なく、売上高等から算定されており、売掛金の回収が不能となった場合はペナルティとして基本額から一定額が控除される仕組みとなっていたことから、会社側の主張は否定された。

阪急トラベルサポート事件 最高裁 平成26.1.24

海外ツアー期間中の添乗員の時間外労働に対する残業代の支払を「みなし労働時間制である」という理由で拒否した事件。

  1. 会社が決めた業務スケジュールに従って仕事をするように指示されていたこと
  2. 会社から携帯電話を渡されていて、常に指示を受けられる状態を保つよう指示されていたこと
  3. 業務スケジュールをどのように行ったかについて、詳しい報告を求められていること

以上より仕事の具体的内容を把握できず、事前スケジュールと報告を照らし合わせれば労働時間の算定が難しいとは言えないとして、みなし労働時間制を認めなかった。


就業規則の定め

事業場外労働のみなし労働時間制は、就業規則の絶対的必要記載事項のひとつである始業・就業の定めの例外措置として労働時間を算定するものですので、この制度を利用する場合には、就業規則に定める必要があります。


労使協定

所定労働時間を超えて働くことが必要となる場合には、「通常必要とされる時間」について労使協定を締結し、労働基準監督署へ届け出ることが必要です。

ただし、協定で定める時間が法定労働時間以下である場合には、この限りではありません。(昭和63.1.1 基発1号)


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