専門業務型裁量労働制の健康・福祉確保措置

必要な休日・休暇の付与と健康管理など

健康・福祉確保措置としては、次のものが考えられます。

(1) 把握した対象労働者の勤務状況及びその健康状態に応じて、代償休日又は特別な休暇を付与すること
(2) 把握した対象労働者の勤務状況及びその健康状態に応じて、健康診断を実施すること
(3) 働き過ぎの防止の観点から、年次有給休暇についてまとまった日数連続して取得することを含めてその取得を促進すること
(4) 心とからだの健康問題についての相談窓口を設置すること
(5) 把握した対象労働者の勤務状況及びその健康状態に配慮し、必要な場合には適切な部署に配置転換をすること
(6) 働き過ぎによる健康障害防止の観点から、必要に応じて、産業医等による助言、指導を受け、または対象労働者に産業医等による保健指導を受けさせること

また、使用者は、把握した対象労働者の勤務状況及びその健康状態に応じて、対象労働者への専門業務型裁量労働制の適用について必要な見直しを行うことを協定に含めることが望ましいことに留意が必要です。

仕事とストレス(2)

■負荷や人間関係に目配りを/産業医大 中村純教授

警察庁の統計によると、自殺の原因の第1位は常に「健康問題」で、自殺者の半数を占めています。うつ病は、そのなかでも半数を占めており、治療に携わっている精神科医として責任の大きさを感じています。

うつ病の早期発見、治療、復職への対応は、現代の産業界で大きな課題となっています。そして、うつ病は、あらゆる世代で増加していると言われています。しかし、本当にうつ病が増加しているのかには、最近さまざまな議論があります。「うつ状態」の人たちは増加していても、これらの人がすべて「うつ病」ではないのではないか――という考え方があるのです。

うつ病の治療は、一般的には精神科や心療内科で、主に抗うつ薬などの薬物療法に加えて、患者さんの話を聞き、それを受け止めるような支持的精神療法、うつ病によって生じた偏った考え方や物の見方を是正する認知療法などの精神療法、さらに十分な休養ができる環境を準備することなどを行います。

しかし、十分な治療をしても症状が改善しない事例が増えています。特に薬物療法はほとんど効果を示しません。

そして、精神医学的にはうつ病といえない人がいます。それは、仕事量の急激な増加や人間関係上のトラブルなどのストレスが直接的な誘因となり、うつ状態になった人たちです。例えば、若い優秀な新入社員が仕事上のミスを上司から強く指摘され、数日後に急に不眠、不安、憂うつな気分を訴えて精神科を受診することがあります。会社以外では割合元気な人もいます。このような事例を「ストレス性適応障害」といいます。

通常はストレスの多い出来事、例えば仕事量の増加、昇進、引っ越しや離婚など生活が大きく変化してから1ヶ月以内に発症するもので、症状も6ヶ月を超えないと定義されています。ただ、原因が解決されないと、軽い抑うつ状態が数年間も続くことがあります。うつ状態を示す人が多いと考えられますが、不安や緊張、苦悩などの情緒が不安定になる人、うつ状態と反対によくしゃべったり、浪費したりと躁(そう)状態の人もいます。

最近の企業には、成果によって給料を支払う裁量労働、裁量賃金制が導入され、個人の責任が増加してミスを許さない風潮があり、個人へのストレス負荷は増大していると推定されています。上司は仕事量が適切か、目標が高過ぎないか、人間関係が円滑か、などにも目配りをする必要があります。仕事を一人でするか、チームで行うかによってもストレスのかかり具合は違うものです。職業意識も世代間で異なり、仕事を押しつけることもできません。ストレスの少ない職場環境づくりが必要です。

一方、ストレス負荷に弱い人が増えているようにも思います。自分がどれだけストレスを抱えているか、自ら気付くことも予防の第一歩です。

Asahi.com(2009.10.16)


ページの先頭へ