改正労働基準法解説レポート

令和5年4月1日から、月60時間超の割増賃金率の引き上げが中小企業にも適用となります。
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休憩時間の原則

休憩時間の長さ

休憩については、使用者は労働時間が以下のとき、休憩時間を労働時間の途中に与えなければなりません。(労働基準法34条

  • 6時間を超える場合: 少なくとも45分
  • 8時間を超える場合: 少なくとも1時間

※6時間ちょうどなら付与しなくてもよく、8時間ちょうどなら45分でよいとされています。

「昼休みを取れなかったからその分早退していい」という取り扱いは法律違反になります。

また、分割については規定がありませんから、1時間の休憩時間を、45分と15分に分割することも、30分×2回に分割することもできます。

ただし、あまりにも小刻みな分割は、休憩時間付与の主旨を損なうものだと見なされるでしょう。

法律で保障されているのは最大1時間の休憩です。

したがって、労働時間がどんなに長くても、1時間の休憩さえ与えていれば、法律違反にならないことになります。


一斉付与の原則

休憩は、原則として一斉に付与されなければなりません。

しかし、この一斉付与の原則には2つの例外が認められています。

労使協定による例外的取扱い(平成11年4月施行)

労使協定によって適用の除外ができます。この労使協定では、次の2項目について定める必要があります。

  1. 一斉に休憩を与えない労働者の範囲
  2. 1.の労働者に対する休憩の与え方

労使協定の届出は不要です。

一斉に休憩を与えなくてよい事業

一斉付与の原則の第二の例外は、性質上一斉に与えなくてもよいとされているもので、以下の事業・労働者がそれにあたります。

  1. 運輸交通業
  2. 商業
  3. 金融広告業
  4. 映画・演劇業
  5. 通信業
  6. 保健衛生業
  7. 接客娯楽業
  8. 官公署
  9. 農・水産業
  10. 監督・管理者
  11. 機密の事務を取扱う者
  12. 所轄労働基準監督署長の許可を得て行う監視・継続労働

10.の「監督・管理者」とは、部長、工場長等労働条件の決定その他労務管理について経営者と一体的な立場にある者で、名称にとらわれず、実態に即して判断されます。

企業が人事管理上あるいは営業政策上の必要等から任命する職制上の役付者であってもすべてが管理監督者として例外的取扱いが認められるものではありません。

11.の「機密の事務を取扱う者」とは、秘書その他職務が経営者又は監督・管理者の活動と一体不可分であって、厳格な労働時間管理になじまない者です。

12.については「監視・断続的労働に従事する者」を参照→

上記の他、労働基準法40条労働基準法施行規則32条により、休憩時間を与えなくてもよい労働者もいます。


途中付与の原則

休憩は労働時間の途中に与えなければいけません。(労働基準法34条

「途中」について法は具体的な位置を明記していないので、労働時間の途中でさえあればよいことになっています。

この「途中付与」を、就労時間の最初あるいは最後にずらすことの是非については諸説あります。目下のところ、本来の法的趣旨に反するものとして違法の判断を下される可能性が否定できません。


自由利用の原則

休憩というのは休息のために労働から完全に解放されることを保障されている時間です。

労働基準法は、休憩時間を労働者の自由に利用させなければならないとしています。(昭和22.9.13 発基17号)

昼休みの電話当番や手待ち時間は使用者の指揮監督下に入って労務を提供する時間ですから休憩時間でなく、賃金支払いの必要な労働時間となります。

電話当番等にあたった場合は労働者が完全に労働から解放されるだけの時間を別の時間帯に休憩時間として設けなければなりませんし、一斉休憩の原則にも違反します。

休憩時間中の外出も原則として自由で、規制している合理的な理由が必要です。

自由利用の適用除外

ただし、以下に該当する者は、休憩時間の自由利用が適用されません。

  1. 警察官
  2. 消防吏員、常勤の消防団員
  3. 児童自立支援施設に勤務する職員で児童と起居をともにする者
  4. 居宅訪問型保育事業に使用される労働者のうち、家庭的保育を行うもの

また、下記施設へ勤務する職員で児童と起居をともにする者は労働基準監督署長の許可を受けた場合、休憩時間の自由利用が適用されません。

  1. 乳児院
  2. 児童養護施設
  3. 知的障害児施設
  4. 盲ろうあ施設
  5. 肢体不自由児施設

自由利用の制限

ただし、行政解釈は事業場内で自由に休息できれば許可制自体を違法とすることはできないとしています。

休憩時間の利用について、事業場の規律保持上必要な制約を加えることは、休憩の目的を害さないかぎり差し支えない。

(昭和22.9.13 基発第17号)

休憩時間もいわゆる拘束時間の一部であって、さらに、使用者の施設内で過ごす以上、施設管理の制約を受けることになります。

また、休憩時間の外出について所属長の許可を受けさせるのは、「事業場内において自由に休憩し得る場合には、必ずしも違法にならない」(昭和23.10.30 基発第1575号)とされます。

労基法が保障する休憩時間の利用が「労働からの解放」だとしても、それ以上に外出する権利までも認めたとは解せないからです。

しかし、許可するかしないかの運用においては制限の合理的理由に十分留意すべきであり、近所への外食や買物まで規制すべきものではありません。

日本ナショナル金銭登録事件 東京地裁 昭和42.10.25

休憩時間の政治宣伝活動などは、他の労働者の休憩の妨げとなるので、就業規則等であらかじめこれを一般的に禁止することも許されるとされた。


一昼夜交代勤務の休憩

一昼夜交代勤務であっても、法律上は最低1時間の休憩を与えれば違反とはされません。(昭和23.5.10 基収第1582号)

しかし、実際に一昼夜も働かせて途中に1時間1回しか休憩を与えないのでは、現実に仕事が効率的に進むとは思えません。

適宜、法律を上回る取り扱いを行うことをお薦めします。


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