改正労働基準法解説レポート

令和5年4月1日から、月60時間超の割増賃金率の引き上げが中小企業にも適用となります。
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サンプル条文や改訂例を参考に、就業規則の改訂を行ってください。

手続き上に不備がある場合

労使協定を結んでも、就業規則等の変更は別途必要

変形労働時間制導入の要件は、1ヶ月単位で就業規則または就業規則に準ずるものにより採用しようとする場合を除いては労使協定の締結が必要です。

しかし労使協定は変形制度を適法に導入する上での労基法上の要件であるにすぎません。

労使協定を締結したからといってその内容が、企業と労働者の間を拘束する労働契約上の義務とはなりません。

したがって、労使協定の内容が労働者を拘束するには労働契約、就業規則あるいは労働協約で同じ内容を定めることが必要となります。


就業規則の届出が行われていなくても有効

就業規則は労基署に届出ることを義務づけられていますが、事業主がそれを作成し従業員に周知していれば、その時点で一般的な拘束力を有すると解されています。

したがって、届出が行われていないとしても、変形労働時間の効力には影響がありません。


慣行で行われてきた変形労働時間は

変形労働時間が事実上長期に渡って行われており、労働者の側でも、格別異議を述べずに勤務している場合があります。

この場合、慣行によって当初の労働契約の内容が修正されたと解釈する余地が生じます。

しかしながら、就業規則で定めるということは変形労働時間の重要な要件に他ならず、それを欠くとしても単なる就業規則の作成変更義務違反に過ぎない、と言い切ってしまうには無理があります。

したがって、就業規則によらない変形労働時間の導入は、労働基準法32条に抵触しないとは言えません。

ただし、労働者もそれを許容し、異議なく変形制を認めてきた事実があるとすれば、民事上は、1日8時間、週40時間を超える部分がすべて時間外労働として割増賃金の支給対象となるとも言い切れません。

なぜなら、労働者は慣行による変形労働時間制の結果として、労働時間短縮などの利益を受けているわけであり、公平の観点から、民事上では慣行上の変形労働時間の有効性を認めるべきだと考えられるからです。

(出典:労働時間・休日休暇の法律実務 安西 愈 著)


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