改正労働基準法解説レポート
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企画業務型裁量労働制の対象業務
統括部門に適用
企画業務型裁量労働制は、企画、立案、調査及び分析の業務を行う労働者であって、業務の遂行手段や時間配分を自らの裁量で決定し、使用者から具体的な指示を受けない者を対象とする裁量労働制です。
対象事業場
これまでは、本社、本店などに限定されていましたが、その限定がはずれました。
しかし、どの事業場でも企画業務型裁量労働制を実施することができるということではなく、対象業務が存在する事業場においてのみ実施することができます。
対象業務
対象となる業務は、一人ひとりの労働者について判断されます。次の要件をすべて満たした業務が対象業務となります。
したがって、いわゆるホワイトカラーの業務すべてがこれに該当することとなるものでは、ありません。(平成11.1.29 基発第45号)
(1) | 業務が所属する事業場の事業の運営に関するものであること(例えば、対象事業場の属する企業等に係る事業の運営に影響を及ぼすもの、事業場独自の事業戦略に関するものなど) |
(2) | 企画、立案、調査及び分析の業務であること |
(3) | 業務遂行の方法を大幅に労働者の裁量にゆだねる必要があること、「業務の性質に照らして客観的に判断される」業務であること |
(4) | 企画・立案・調査・分析という相互に関連しあう作業を、いつ、どのように行うか等についての広範な裁量が労働者に認められている業務であること |
具体的には少なくとも大卒後3年ないし5年程度の職務経歴者とされています。
職務経験がない労働者は、対象労働者として決議しても、企画業務型裁量労働制の効果は生じません。
同じ担当であっても、定型業務をあわせて行っており、ときどき対象業務を担当するという者は該当しません。
「裁量」といっても、本人の裁量性が失われない程度の最低限の業務指示、期日管理、業務量や期日の調整のための指示を必要に応じてすることは可能と考えられます。
該当する業務の例
(1) 対象事業場の属する企業等に係る事業の運営に影響を及ぼすものである場合
ア.本社・本店
組織 | 業務内容 | 対象業務の該当性 |
---|---|---|
本社 | 企業全体の事業戦略の策定 | ○ |
イ.事業本部
組織 | 業務内容 | 対象業務の該当性 |
---|---|---|
本社 | 企業全体の事業戦略の策定 | ○ |
事業本部 | 特定の製品についての企業全体の事業戦略の策定 | ○ |
ウ.地域本社、地域を統轄する支社・支店
組織 | 業務内容 | 対象業務の該当性 |
---|---|---|
本社 | 企業全体の事業戦略の策定 | ○ |
東北本社 | 東北本社及び東北地域の各支社を統轄した事業戦略の策定 | ○ |
青森支社・ 岩手支社 等 |
個別の営業活動 | × |
エ.工場
組織 | 業務内容 | 対象業務の該当性 |
---|---|---|
本社 | 企業全体の事業戦略の策定 | ○ |
多摩工場 | 特定の製品についての海外における事業戦略の策定 | ○ |
(2) 事業場独自の事業戦略に関するものである場合
ア.支社・支店1
組織 | 業務内容 | 対象業務の該当性 |
---|---|---|
本社 | 企業全体の事業戦略の策定 | ○ |
横浜支店 | 横浜支店及び各支社を統轄した事業戦略の策定 | ○ |
港北支社・ 港南支社 等 |
個別の営業活動 | × |
イ.支社・支店2
組織 | 業務内容 | 対象業務の該当性 |
---|---|---|
本社 | 企業全体の事業戦略の策定 | ○ |
横浜支店 | 横浜支店のみの事業戦略の策定 | ○ |
該当しない業務の例
(1) 対象事業場の属する企業等に係る事業の運営に影響を及ぼすものでない場合
ア.本社・本店
組織 | 業務内容 | 対象業務の該当性 |
---|---|---|
本社 | 個別の営業活動 | × |
イ.工場
組織 | 業務内容 | 対象業務の該当性 |
---|---|---|
本社 | 企業全体の事業戦略の策定 | ○ |
多摩工場 | 個別の製造作業やその工程管理 | × |
(2) 事業場独自の事業戦略に関するものでない場合
ア.支店・支社
組織 | 業務内容 | 対象業務の該当性 |
---|---|---|
本社 | 企業全体の事業戦略の策定 | ○ |
横浜支店 | 横浜支店及び各支社を統轄した事業戦略の策定 | ○ |
港北支社・ 港南支社 等 |
個別の営業活動 | × |
対象業務となり得る業務の例
- 経営企画を担当する部署における業務のうち、経営状態・経営環境等について調査及び分析を行い、経営に関する計画を策定する業務
- 経営企画を担当する部署における業務のうち、現行の社内組織の問題点やその在り方等について調査及び分析を行い、新たな社内組織を編成する業務
- 人事・労務を担当する部署における業務のうち、現行の人事制度の問題点やその在り方等について調査及び分析を行い、新たな人事制度を策定する業務
- 人事・労務を担当する部署における業務のうち、業務の内容やその遂行のために必要とされる能力等について調査及び分析を行い、社員の教育・研修計画を策定する業務
- 財務・経理を担当する部署における業務のうち、財務状態等について調査及び分析を行い、財務に関する計画を策定する業務
- 広報を担当する部署における業務のうち、効果的な広報手法等について調査及び分析を行い、広報を企画・立案する業務
- 営業に関する企画を担当する部署における業務のうち、営業成績や営業活動上の問題点等について調査及び分析を行い、企業全体の営業方針や取扱う商品ごとの全社的な営業に関する計画を策定する業務
- 生産に関する企画を担当する部署における業務のうち、生産効率や原材料等に係る市場の動向等について調査及び分析を行い、原材料等の調達計画も含め全社的な生産計画を策定する業務
対象業務となり得ない業務の例
- 経営に関する会議の庶務等の業務
- 人事記録の作成及び保管、給与の計算及び支払、各種保険の加入及び脱退、採用・研修の実施等の業務
- 金銭の出納、財務諸表・会計帳簿の作成及び保管、租税の申告及び納付、予算・決算に係る計算等の業務
- 広報誌の原稿の校正等の業務
- 個別の営業活動の業務
- 個別の製造業等の作業、物品の買い付け等の業務